A Solitary Battle第2部第5話


3件目の配達を終える頃には結構歩き回ったので、体力には

相当の自信があるセバクターでも結構な疲れが来ていた。

「ふー……」

息を吐きつつ、とりあえず気力を振り絞って冒険者ギルドまで戻った彼は

依頼達成の紙を出して報酬を受け取った。

(これで少しの生活は何とかなりそうだぜ)

一先ずは疲れた身体を休める為、そして腹ごしらえの為に酒場へと向かう。

このユディソスの冒険者ギルドはそれぞれ酒場とは別になっているので、

酒場に行くのであれば普通に店に入らなければいけないのだ。


ギルドの受付から近くの酒場を教えて貰って、そこに入ったセバクターは

肉料理とビールを注文する。

(一仕事終えた後の酒は格別だぜ)

ぷはっと息を吐いて、次に運ばれて来た肉料理に手をつけ始めながらも

酒場内の様子を観察する事もセバクターは忘れない。帝都と言うだけ

あって街中も冒険者ギルドも、そして酒場もやはり人が多い事に変わりは無い様だ。

(本当に帝都に来たんだなー、俺……)

心の底から湧き上がって来るこの不思議なドキドキした気持ちに胸を高鳴らせる

セバクターだったが、そんな彼の気持ちをぶち壊す出来事がこの後に襲い掛かって来る。


食事を終えて腹ごしらえを済ませたセバクターは、今夜の宿を探すために色々な

場所を回ってみる。帝都は真上から見てみると円形状になっているらしく、外側から

貧民街やスラム街、そして中央に行くに従って平民達が暮らしている区画、貴族達が

暮らしている区画となって行き、最終的に円の中心に城があると言う造りになっているらしい。

セバクターは元貴族なのだが今の立場は平民と貧民の間を行き来している為、身の丈に

あった生活をしようと考えて平民街と貧民街の間辺りにある宿でこの日は過ごす事に決めた。

(元貴族……か)

どこか自嘲した様に顔の表情を変えながらもその宿へと向かうセバクターだったが、日もそろそろ

暮れ始めて来たので近道をしようと暗い路地裏に入った。


腕に覚えのあるセバクターは路地裏で争い事になったとしても切り抜けられる自信があった。

……のだが、そんな争い事にどうやら巻き込まれてしまった様である。

(何だありゃ……?)

前方に目を向けてみると、そこでは数人の男女が集まって何やら取り引きの様な事をしていた。

遠目で見ても何かが大量に入っている箱と大金を交換しているらしいのが見て取れる。

(近道は失敗だったかな)

自分の存在に気が付かれない内にさっさと引き返そうとセバクターは足を止めたが、どうやら

その前に気が付かれてしまった様で取り引きらしい事をしていたメンバー達が一斉に武器を

抜いてセバクターの方へと向かって来た!!


(ああ、やはりこうなるのか……)

自分の迂闊さと油断から来る慢心を心底後悔と反省しながら、セバクターも腰の

ロングソードを抜いて向かって来るその複数人の男女に対して応戦する覚悟を決めた。

「しょうがない……」

そう呟いて息を吐き、セバクターはロングソードを構えて自分からそのメンバー達の方へと

地面を蹴って走り出した!!


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