A Solitary Battle第14話


「あの木箱の上に落ちた後、お前は俺に聞いただろ。他に仲間が居るんじゃないかって」

「ああ、確かに俺はそう聞いたよ」

その返事を聞いて、ラディは目を細めて笑った。

「その予想だけどな、確かにそれは当たりだ。俺達にはまだ仲間が居る。いや……

居た、と言う方が正しいかな」

「過去形か。つまり昔の仲間だな」

「そうだ。お前も俺達に仲間が居る事には感づいていたんじゃないのか? ただ、それが

もう俺達の仲間では無かったと言うだけの話だ」


この時、セバクターの中でこれまでの疑問が確信に変わった。

「やはり仲間が……」

「ああそうだ。俺達は盗賊と言う身軽な立場を利用してこのヴァーンイレス王国での

略奪活動を行っていた。そこである時1人の男が接触して来てな。多額の金を出すから

やって欲しい事があると俺達に交渉を持ち掛けて来た。その金が余りにも破格だったからよ、

俺等は2つ返事でそれを引き受けた」

「で、その内容は何だったんだ?」

そうセバクターが問いかけると、ラディはふっと半笑いで話し出す。


「お前が言った通り、諜報活動だよ。つまりスパイになれって事さ。ヴァーンイレスを隣の

エスヴァリーク帝国が滅ぼした原因はズバリそこにあるんだ」

「…………」

その答えにセバクターはアゴに手を当ててしばし考え込む。そしてまた1つの結論に辿り着いた。

「まさか、その諜報活動によって……」

そのセバクターの予想に、ラディは大きくうなずいた。

「そうだ。そもそも、お前が配達をしていたあの男が話していたんだろう? エスヴァリークからの

スパイが居たからこそ、戦争があんなにあっけなく終わってしまったって事を」

「ああ、確かにそれは聞いた。エスヴァリークから送り込まれたスパイの情報でヴァーンイレスの

戦略や勢力も筒抜け状態で、まるで水を得た魚の様に素早く色々な所をエスヴァリークが

制圧出来たらしいな」


そのまま更にセバクターは続ける。

「で、詰まる所あんた等盗賊団はそのスパイ活動の実働部隊として誰かに雇われた。あんたが

言いたいのはそう言う事だろう?」

「そう言う事だ。お前は結構頭の回転が速い様だな。だったら俺達を雇った奴の目星も

大体ついている筈だぞ?」

「え……?」

唐突にラディにそう問いかけられたセバクターだったが、すぐにはその目星は思い浮かんで来なかった。

しかし今までのラディの話や、この町に来てからの出来事を思い返してみながら腕を組んで考える。

(この町に来てから俺が巻き込まれたこの事件……王国に送り込まれたスパイ……盗賊団を雇う事が

出来る程の財力の持ち主……となれば、ある程度の目星はついて来るし絞り込める。この盗賊団を

雇ったのは恐らく、エスヴァリークでは無い……かもしれない。もっと別の所に居る筈だ)


約3分位そう考えて、セバクターは1人の人物の元に辿り着く。

そしてすっと目を開いて、ラディに自分の予想を打ち明けた。

「俺が考えた限りで、俺が知っている人物であんた等を雇う事が出来る程の

財力を持っている人物は今の所1人だけだ。俺の予想を聞いてくれるか?」

「ああ良いぜ。どんな予想でも聞いてやるよ」

セバクターは自分のその予想を全てラディに打ち明けた後、その予想した人物に会う為に

衛兵の詰め所を出て馬を走らせ始めるのであった。


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