A Solitary Battle第13話
だがその結論に達したは良い物のまだその証拠が出て来た訳では無い。
一先ずはうめき声を上げるラディの顔面を蹴り付けて気絶させ、自分が
気絶させられて連れて来られた彼の盗賊のアジトになっているこの建物の
中へと逆戻りする。その中には自分が斬ったり刺したりして殺したラディの
部下達の亡骸が至る所に転がっていたが、セバクターの目的はその亡骸では
無く、ラディに勝つ為に誘い込みをかけたあの木箱の区画であった。
(俺の予想が正しければ……)
その木箱の山を蹴り崩し、その中の1つの木箱を踏み潰して中身を露出させる。
そこから出て来たのはやはり沢山の財宝や高級そうな装飾品だった。
(これだけあれば証拠品としてまずはあのリーダーの奴を捕まえて貰えるぜ)
そう確信したセバクターはまた外へと出て、盗賊団のメンバーが使っていたであろう
1匹の繋がれている馬を貰って衛兵の詰め所へと向かう。
(さて、俺もやるべき事をやらないとな)
衛兵達をラディ盗賊団のアジトへと見送った後に、セバクターはセバクターで自ら
聞き込み調査を始めた。ここまで首を突っ込んでしまった以上は最後までこの事件に
関わりたい気持ちが強くなったのだ。
聞き込み調査に関しては、ある程度ラディに仲間が居ると仮定した上の話での
さっきの確信をより100パーセントにする為の物である。
(情報が欲しかったら地道に聞き込み。これも傭兵の鉄則の1つだ)
その鉄則に則って自分でも傭兵として聞き込みを続ける。冒険者ギルドから民家、
商店、路地裏の怪しい奴等まで色々だ。
冒険者ギルドでは依頼達成の紙を出して報酬を受け取った後に聞き込みをしたのだが
全く成果が得られず、その後に民家や商店等を回っている感じだ。
だが、その地道な聞き込みを続けても大した成果が上がらない。
ラディの盗賊団の目撃情報は色々な所で出ているのだが、それ以外にこれと言った
新しい情報が出て来ないのだ。
(まいったな、結構時間が掛かりそうだぜ……)
バリバリと頭を掻きながら眉をひそめるセバクターだったが、そんな彼に衛兵の1人が声を掛けて来た。
その衛兵が言うには、何でも衛兵の詰め所でセバクターに話したい事があると言う人物が居るそうなのだ。
(俺に話……?)
セバクターが聞き込み調査を行っていたのはこの町の衛兵もそうだったので、恐らくは衛兵の方から
聞き込みに関する話が詰め所にも漏れ出したのであろう。
何か文句を言われるのかな? とセバクターは内心不安になりながらも衛兵に連れられて詰め所へと
向かったのだったが、そこで彼は意外な人物から話を聞く事になる。
その人物と言うのは……。
「よう」
「あれ、話があると言うのは……あんたか?」
詰め所の取調室の様な場所で向かい合わせに座らされ、再び対面する事になったのは衛兵達に
捕まえて貰ったラディだった。
「ラディ盗賊団もどうやらここまでの様だな。全く、お前のその腕には恐れ入ったぜ」
感心した様にラディはそうセバクターに話し始めるが、セバクターとしてはさっさと本題に入って欲しい。
「御託は良い。俺に話があるんだろう?」
「ああ、そうだったな。俺の盗賊団は見ての通り壊滅した。だったら1人道連れで捕まえて欲しい奴が
居るんだよ。このまま俺達だけが捕まるのも、寝覚めが悪くてしょうがねぇ」
「道連れ……?」
きょとんとするセバクターに、ラディは驚愕の事実を話し始めた。