A Solitary Battle第12話
2人の思考が巡り合う中で、攻勢に転じて来たセバクターを今度は
ラディが防御すると言う展開になっている。
だがそのラディも自分の立っている今の位置を上手く見極めて防御しているのだ。
一方で次第に自分のロングソードがラディを追い詰めて行くのがセバクターには分かっている。
(このまま行けば!!)
そんなセバクターの心の中には優勢になった事で少しの油断が現れていた。
人間は自分が優勢である時程油断をしやすい生き物なのである。
その優勢による油断がセバクターに現れているのをラディは確信し、彼は自分の今の
立ち位置をもう1度確認。
(かかったな、剣が少し使えようが所詮お前はその程度なんだよ!!)
そう心の中で一喝すると同時に何とラディは大斧を捨て、斬りかかって来たセバクターを
両腕でがっしりと抱え上げて全力で窓の方へと走って行く。
「なななっ!?」
まさかそんな手段に出て来るとはセバクターも予想だにしておらず、ラディの肩に
担ぎ上げられたまま窓の外へと投げ捨てられる。
……筈だったが、咄嗟に投げ捨てられて落ちる瞬間にラディの襟首を掴むセバクター。
窓を突き破った事で分かったのだが、どうやらここは2階部分らしい。
「ぐぅぅ!?」
完璧に逆転勝利を信じていたラディの中にも油断が生じていたと言う事である。
「ぐぅ、あ、お、お前だけ落ちろ……!!」
「そう言う訳には行かない!!」
ラディは大きくて長い斧を振り回すだけあって着やせして見えるタイプではあるがかなりの
パワーを持つ。なのでセバクターをそのパワー活かして担ぎ上げ、窓から投げ落として彼を
殺そうと思っていたのだがその目論見が外れてしまったのであった。
一方のセバクターはラディの襟首を掴んで堪えたまま下を見てみる。すると無造作に詰まれた
木箱の山があった。
「悪いな、最後に勝つのは俺の様だぞ!!」
そう言ってセバクターは自由な足で外の壁を蹴り、その反動でラディごと真っ逆さまに2階から
木箱の山へとダイブ。その間に空中で素早くラディが下敷きになる様に身体を動かして
彼と木箱の山をクッション代わりに派手に木箱を破壊しながら着地する事に成功したのであった。
「ぶぐぁ!!」
クッションになったラディは死んでこそ居なかったが、すでに武器も無ければ戦う体力も気力も残って
おらず、着地の衝撃で左足も骨折してしまった。
「さて、色々と俺はあんたに聞きたい事があるんだ。素直に答えれば命だけは助けてやる」
足の痛みを堪えつつ、顔だけをセバクターの方へ向けるラディにセバクターは幾つかの質問をぶつける。
「な、何だ……」
「これは俺の直感なんだけどな、あんたは恐らく……まだ他に仲間が居るだろう? 王国のスパイには
あんたは雰囲気的にそれっぽく無いと言う感じがする」
そこで一旦言葉を切ったセバクターは顔をラディの顔へと近づける。
「となれば、だ。あんたの他にまだ仲間が居る。そいつは誰だ?」
「し、しらねぇ……俺等はただ王国の秘宝を持ち出しただけだ!! 他には何もうぐぉぉあ!?」
ラディの骨折している方の足を容赦無くセバクターはグリグリと踏みつける。
「秘宝? と言う事は盗賊の立場を利用して諜報活動とかもやってそうだな……」
「な、何でそれを……あっ!?」
やばい事を口走ってしまったとばかりにラディは口を押さえるがもう後の祭りである。
(あれ、本当だったのか? 俺はカマをかけただけだったんだが……)
まさかの発言に内心驚きながらもセバクターは口には出さない。
「成る程な。だったら諜報活動していたとなればスパイとして王国に潜入とかしてそうだ。
その線で行けば、王国の中に内通者が居ると言う事にもなりそうだ」
そう考えて、セバクターはある1つの結論に辿り着くのであった。