A Solitary Battle第1話


(今日はそろそろ休むか……)

セバクター・ソディー・ジレイディールは傭兵の旅人として活動を始め、

エンヴィルーク・アンフェレイアのヴァーンイレス王国がこの前まで

存在していたベリジール地方へと傭兵としての活躍場所を求めて

やって来た。彼は元々貴族の出身であったのだが、生家が没落

してしまいそれをきっかけに16歳から旅人の傭兵として活動する道を選んだ。

傭兵家業は今年で5年になるものの、この地方の活動はスタートしたばかりの

ペーペーだ。しかし自分はそうした道を選んでしまった為に、自分の力だけを

頼みにして生き抜いて行くしか無い。


とりあえず目指すは地図上のヴァーンイレスの隣の国、エスヴァリーク

帝国にある帝都のユディソスである。

ユディソスは厳しい入国審査が行われる事で世界的に有名な街であり、

勿論セバクターの様な傭兵も例外では無い。

だがそこに辿り着くまでにはまだまだ時間が掛かるのは目に見えているので

今の時点で心配は無用だろうとセバクターは考えていた。

一先ずは山を越えた先にあるイクバルトの町に向かって2日前から山道を歩き、

途中で山賊や魔物を倒してようやくそのイクバルトの町に辿り着いたところで

疲れも溜まってきたのでそろそろ休む事にした。


イクバルトの町で簡単な持ち物検査等を受け、異常無しとの事でまずは

腹ごしらえの為に酒場へと向かう。当然情報収集もかねてだ。

情報収集に関してなのだが、酒場は色々な人間が集まってくるし冒険者ギルドと

言う組合もあるのでそこに登録して置けば色々な依頼が受けられると言うシステムに

なっている。当然セバクターも登録済みで、このギルドの情報は全世界で統一する

システムにもなっているので他の国に行ったらまたいちいち登録し直す、と言う事を

しなくても良いのである。


なのでそこの酒場に入り、料理と酒を注文して待っていると唐突に

1人の男が自分のテーブルの向かいの椅子に座って来た。

「1人かい?」

「……?」

いきなり断りも無しに勝手に一緒のテーブルに座って来ただけでは無く、

馴れ馴れしそうに話し掛けて来た男に警戒心を隠せないセバクター。

男は緑色の髪の毛をしており、柔らかそうな表情が特徴的だ。腰には2本の

短剣がぶら下がっており、旅人の格好をしている。いかにも同業者、と言う出で立ちだ。


しかしそんな彼の柔らかそうな顔つきを見てもセバクターはまだまだ警戒を解かない。

「俺に何か?」

セバクターに問いかけられ、男はハッとした表情になってまずは謝罪。

「ああ失敬、僕はイレインって言う者だけど、君は見た所冒険者っぽいからさ。

でもこの酒場では初めて見る顔だから……新入りの人?」

「この地方に来たのが初めてだ」

新入り、と言う単語に若干ムッとしながらもセバクターが答える。

「ああそうなんだ。だったらさ、僕が色々教えるよ」

「え?」


世話好きなのかお節介なのか、はたまた情報料目的なのか? そんな疑問が

セバクターの頭をグルグルとこの男に対して駆け巡る。

しかしそんな彼の心情を見透かしたかの様に、また男はふわりととろける様な笑みを浮かべる。

「あー心配しないで、何もお金とかの見返りが目的って訳じゃないから。ここに来る新入りの

冒険者とか見慣れない顔の人には僕がこうして案内するのがもう習慣になってるんだ」

「……そうか」

そう言う地域性なのかな、と思うセバクターを見ながらイレインと名乗った男は

この地方の事について話し出した。


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