A New Fighting Adventurers第9話


「ああ、こりゃ確かに納得だ」

大きないかにも貴族が所有する様な屋敷を見上げ、ブラインがポツリとそう漏らした。

「入れ」

金髪の男は屋敷に驚く3人を中へと招き入れるが、それ以上に中は豪華な物だった。

家具や調度品は一目見ただけでも上物である事がわかるし、赤い絨毯もいかにも高級そうだ。

更に男の着ている服も仕立てが良さそうに見える。

だが、それにしてはどこか違和感を3人は感じずには居られなかった。

「……何か、妙じゃないか?」

「ああ、俺もそう思った。どっか変なんだよなぁ……」

「俺もそれは感じるぜ」


そんな3人の会話を聞き取った金髪の男が、長い廊下を歩きながら振り返りもせず答える。

「人が余りにも少ないだろう? と言うか、ここに居るのは今は僕だけだからな」

「え?」

「御前だけなのか?」

「通りで静かだと思ったよ」

「それは奥の部屋に着いたら話す」


そうして長い廊下を抜け、奥の部屋に辿り着いた3人。

ここはどうやら金髪の男のプライベートルームの様だ。

「紅茶位出せよ」

「まぁまぁブライン。……それで、僕達の紹介がまだだったね。僕は

旅人のマルニス。こいつは同じく旅人で、僕の相棒であり友達でもあるブライン」

「で、俺はアーエリヴァ帝国の王城勤務の兵士、ヘルツだ」


3人の自己紹介が終わり、金髪の男も自己紹介をする。

「僕はこの街の貴族、レディク・ルバールだ。現ルバール家の当主でもある」

「ほう、当主様か。それにしては随分と若いんだな。幾つだ?」

ブラインは年齢を尋ねるが、レディクはあからさまに嫌そうな顔をした。

「来て早々紅茶をねだる様な人間に、何故僕の年齢を教えなければならない?」

「……ムカつく奴だなっ!!」

レディクに飛び掛かろうとするブラインを止めるマルニスとヘルツ。

「だーっ!! お、落ち着いて!!」

「ブラインは下がってろ!! ……俺達には教えてくれるか?」

「……23だ」

「23か……大体俺、想像ついたぜ」

「はっ?」


何の? と首を傾げるマルニスとブラインに対し、ヘルツはレディクに向かって

その感づいた内容を話し始める。

「さっき君は、この屋敷には自分1人しか居ないと言っていた。

確かにこの状況だからな。だがさっきの追われていた状況とプラスしてみて、

君は何かのトラブルに巻き込まれていると見る。確か、アサート家の人間が

どうのこうのと言っていたな? それとこの屋敷の状況に俺は関係があると読むが」

そう推理するヘルツの言葉に、レディクは驚きの表情を隠さずにはいられなかった。

「……大体当たりだ。僕は貴族の争いが嫌になって、ああやって街をブラブラしていた。

そもそも僕の家族は全員皆殺しにされたんだ。貴族の争いに巻き込まれてな」

いきなりハードな話をしだすレディクに、3人はじっと黙って聞く姿勢に入る。


「それで、その争いが起こったのがつい最近。と言うか数日前だよ。あの騎士団長達が

裏で糸を引いていた。アサートと言う性を持つ奴がその中に居たんだが、そいつが僕の

この屋敷にある、古代兵器に関する資料を狙ってやって来た。そこで僕の家族は皆殺しに

された訳だ。丁度その時、僕は街をブラブラしていたから、殺されずに済んだんだがな。

それで、その資料は盗まれた。アサート家は僕のこのルバール家の下だと言う事に

劣等感を抱いていたからな。その子息が騎士団に入っていたのも僕は聞いた事がある。

……その騎士団長達は、北の方へと向かったよ」


「北の方だって?」

聞き返したマルニスに、レディクは大きく頷いた。

「ああ。それで提案なんだが、この屋敷にはまたさっきの奴等みたいのががやって来る筈だ。

それでこの屋敷を捨てて僕は逃げようと思うんだが、もし良ければ御前達のパーティに

同行させてはくれないだろうか?」

「はぁっ!?」

とんでもない提案に、1番最初に声を上げたのはブラインだった。

「やーなこった!! 俺はお断りだね。御前みたいな奴がパーティに居たら最悪だぞ!」


しかし、マルニスとヘルツはそうでも無い様で……。

「僕は……仲間が多い方が不安が少なくて助かる」

「俺も特に問題は無い」

「……それじゃあ、多数決で決定だな」

「ちょ、おい、ま……」

ブラインの願いはあっさりとスルーされてしまい、ここに4人目のメンバーが誕生したのであった。

その日はもう時間的に遅かったので、屋敷に泊まる事にして翌日に屋敷を燃やす事に。


貴族の跡取りとして何不自由なく育てられたレディク・ルバールだったが、その育て方が災いしてしまい23歳に

なった今でも非常に傲慢で偉そうな性格は変わっていない。しかしそんな彼でも魔術の威力と術の発動範囲に

関しては元々の能力が高かったのであろうか、その実力だけは本物であると周りから認められている。

貴族としての財力と人脈を活かして魔術の研究をしていた彼であったが、貴族ならではの悩みとして付きものなのが

権力争いであった。元々彼自身は貴族として育てられてはいるものの跡継ぎに関しては余り興味が無く、

そう言った醜い部分も見て来た為に嫌気が差していた事もあって魔術の研究に行き詰った時は屋敷を抜け出して

こうして街をブラブラする事が多くなって行ったのである。


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