A New Fighting Adventurers第6話
翌日。今日はまた曇り空だが、森の中であれば雨を凌いでくれる木陰も
あるにはあるので、3人は余り心配しないで進む事に。
しかしそれよりも心配なのが魔物である。このシャスドレイの森は魔物が多く、
道中で何度も戦わなければならない場面に遭遇。
しかも現在3人が進んでいるルートには、まだ切り口が真新しい魔物の死骸が沢山転がっていた為に、
騎士団長の連中がやったのでは無いかと言う推測も出来た。
「しかし、魔物が多すぎるな」
「ああ。これじゃあ中々先へ進めないぜ」
「ルート自体はそんなに長くは無いんだけれども」
シャスドレイの森からジュエリス山脈へと続く今のルートは、ベラルリック渓谷からシャスドレイの森の
ルートよりは2時間位早くたどり着けるのだが、いかんせん魔物との戦いが3人の身体に疲労を蓄積させて行く。
「ヘルツ! 危ない!」
「はっ!?」
間一髪、ヘルツの後ろに回り込んでいた魔物をマルニスが仕留める。
「はー、危ない危ない」
「すまない、助かったぜマルニス」
「いや良いさ。でもこの魔物の量はいつ来ても相変わらずだな」
事実、騎士団の任務の時にもこのルートを使う事はあったが、その時も
魔物は多いとマルニスとブラインは感じていたのでうんざり気味である。
「もう少しだし、昼過ぎ迄にはジュエリス山脈の登山道入口に辿り着けるだろ」
「そうだな。さぁ、行こう!」
「おう!」
3人は気力を振り絞り、魔物を討伐しつつ更にシャスドレイの森を進んで行った。
「はーっ、はーっ、はーっ……」
「くっそ……やけに多すぎねえか魔物が……」
「俺も流石に疲れたぞ……」
やっとの思いでシャスドレイの森を抜け、ジュエリス山脈の登山道入口へと辿り着いた3人。
しかし流石に疲れたので、ここで一休みする事にした。
「ここで今日は野宿かな」
「あー、出来ればそうしたいけど、まだ行けそうな気もする」
「俺も夕方くらいまで休めば何とか……。それからもう少し行ったら山小屋無かったっけ?」
「あ、そう言えば……」
そう、ジュエリス山脈の登山道では登山者の休憩場所として山小屋を用意してあるのだ。
「そこまでどれ位だっけ、マルニス」
「えーと確か、ここからだと30分位だったかな」
「だったらそこまで歩いて、そこで暖を取ろうか」
「そうすっか」
3人は少し休憩を挟んだ後、登山道へと入って行く。
登山道は傾斜自体が緩やかではあるものの、シャスドレイの森やベラルリック渓谷と比べると
道が荒れている分足に来るルートになっている。
「魔物はさっきより少ないけど、傾斜がある分足にはきついな」
「ああ。だけどもう少し行けば山小屋だ。そこまで頑張ろうぜ」
「そうだな」
身体を奮い立たせ、3人は歩き続ける。山小屋で休憩する事を目指して。
そしてやっとの思いで、3人は何とか山小屋へと辿り着く事が出来た。
「あー、しんどかった……!!」
「俺もだ。ヘルツは?」
「聞く迄も無いな。俺も足が限界だ。今日はここに泊まるか」
「ああ、そうしよう」
山小屋の中はとてもシンプル。中央には火を熾(おこ)す為の正方形の溝。
それから木で出来たテーブルに、簡素な吊りベッドが壁から6つかかっている。
「それっ」
ブラインが手から炎を出して、魔法で最初から置いてあった焚き木を溝にくべ、それに火をつける。
パチパチと火がはぜ、山小屋の室温が上昇する。
「さてと、飯を食いながらこの後の予定について相談しよう」
「ああ」
マルニスの提案で骨付き肉にかぶりつきつつ、予定を立て始める3人。
「奴等がこのルートを通って行ったのは間違い無い。僕達が帝都に戻った時には
もう既に騎士団長達が居なくなっていたから、結構先に進んでいると見ても良いだろう」
「俺が御前達に会いに行く前日の夜に、行方をくらました。で、その夜中にジュエリブールに向けて出発し、
朝にジュエリブールに着き、で、そこからほぼノンストップで帝都に戻った。
そして陛下から王命を受けて、再びジュエリブールへ……。でも、奴等には会わなかった」
「おかしいな」
ブラインがポツリと呟くのに対し、ヘルツは小さく頷く。
そう、騎士団長達が夜に出たのであれば、歩きの場合だと3人がジュエリブールに再び向かう時迄に出会う筈だ。
馬で出て行った場合でも、どこかでマルニスとブラインに目撃されている筈だ。
「でもさぁ、渓谷へ向かう街道は他に幾つもある訳だし、そっちのルート使ったんじゃないの?」
「そう考えるのが妥当かな。現にさっきの集落で目撃情報がある訳だから」
マルニスの疑問に、ヘルツは納得した様子で返す。
「すれ違いって奴か。だったら俺達と出会わないのも納得だ」
「ああ。だけど渓谷に入ってからは1本道しかないこのルートを通ったのは間違いないから、
明日は早めに出て少しでも追い付ける様にしたい」
「わかった」
早めに出発する事を約束し、1日が過ぎて行った。
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