A New Fighting Adventurers第5話


馬車でジュエリブールに戻ったは良いが、もう夜も遅い為に3人は宿屋で就寝。

そして翌日、晴れ渡った青空の下ベラルリック渓谷へと3人は足を進めた。

「渓谷にしてはまぁまぁ明るいけどな」

「ああ。ここは歩き易い所だ」

何回か任務で来ている3人はルートを覚えているので、このまま南に進んで

シャスドレイの森へと入った後、西へと進みジュエリス山脈の登山道へと入って行く

ルートを取るつもりだ。


「それにしても、何で突然騎士団の奴等が居なくなったのか……不思議だ」

渓谷を歩きながら、ヘルツがポツリと呟く。

「御前が何か調査してるって言ってたろ……騎士団の事。それと関係があるんじゃねーの?」

ブラインの言葉にヘルツはかぶりを振る。

「そうだけど……俺もそこまで詳しくは調べられていない。わかっているのは怪しい行動が

多かったと言う事だけだ」


「その怪しい行動って?」

マルニスにそう聞かれ、ヘルツは思い出しながら答える。

「調べた範囲では、騎士団の連中は良く書庫に出入りしているらしい。それ自体は珍しくない光景だけど

団長クラスの人達がここ最近、急に出入りする様になったんだ。

それで、魔術に関する文献を読み漁っていたのを書庫の管理者が目撃している」

「魔術?」

「ああ。普通だったら魔術アカデミーの連中とかしか読まない様な物を、ここ最近

騎士団の、それもトップの人達が読む様になったからそれが怪しい行動でさ……」


だが、それにマルニスは反論する。

「それって、ただの興味本位じゃないの? 魔術も進歩してるし興味持っても

僕はおかしくないと思うけどな」

「だったらそんな行動が目撃された数日後に無断で失踪するかな?

それも重要文献と一緒にさ。それにその重要文献の中には

魔術に関する物が幾つもあるって話もあった」

「……」

マルニスが黙って考え込んでしまったので、ブラインが代わりに言葉を発する。

「まぁとにかく、俺はそいつ等が怪しいと見るぜ。重要文献は取り戻さないといけないし

調査に関しては余り大人数で動くと目立つから、陛下もその辺りは考えてくれたんだろ」


それに頷き、ヘルツは次の話題に切り替える。

「そうらしい。それと、奴等のルートなんだけど……」

まだ憶測の域を出ないんだけど、と言って自分の予想している奴等の逃走ルートを語り始める。

「船を使うのはまず無理だ。余りにも目立ちすぎるからな。それに西へ逃げたと言う

情報があるから、それと照らし合わせると西へと陸で向かえるルートは今歩いている

ここと北の方しか無い。で、西へと抜けるのに早いルートはこっちだ。だからこのまま歩いて行けば

森の入り口にある集落で情報が手に入る筈だ」


そのまま歩く事約2時間。ここらで疲れて来たので一旦休憩を取る事に。

大体半分位まで歩いて来た筈だが、まだ中間地点の目印である川が見えない。

「ふー。少し早いけど昼飯にしようか」

「ああ。この前の疲れもあるし、足が上がらねぇよ……」

「それじゃ、俺サンドイッチ買ってきたから」

ヘルツがサンドイッチを買って来たと言うので、それを3人で頬張る。

「これ食って、少し休んだらまた出発だ」

「ああ。川の流れる音はするから、もう少しの我慢だな」

そうして休憩を挟み、更に3人は歩き続ける。歩き始めて約10分くらいで

川を渡ったので、これで半分過ぎた事になる。それからその後、幾度か魔物との

戦闘があったがこれは3人にとっては慣れた事であるので特に苦戦はしなかった。


騎士団とはまた違う組織であるが、国に雇用されている事に変わりは無いのが城の兵士。

その中の1人であるのがヘルツ・エンヴァスト。騎士団とは直接関係が無い部隊に居るので

今回のリストラ対象に彼は含まれていないが、その騎士団が一斉リストラを行った事に不信感を抱き

独自に調査を続けている。そんな彼は弓使いとして城の兵士の中ではそこそこ有名な存在であり、

努力家な面を持つ彼は毎日絶対に弓の鍛錬を欠かした事が無いと言う。その毎日の積み重ねがあるからこそ

弓使いとして有名な存在になれたのだろう。

城の兵士に志願してからも定期的に行われる試験の科目である剣術や馬術、それから筆記試験でも

毎日の努力の甲斐があって余裕で合格している。26歳になった今でも、彼は自分が育った帝都の

郊外にある実家で休暇の時は家事の手伝いをする等と言う気配りと心遣いも併せ持っている

平民出身の努力家なのだ。


3人は前衛、後衛、そして魔法が使えるメンバーとバランスが良い事も相まって

今の所は理想的なパーティになっている。

「これで全部か? マルニス」

「そうみたいだ。増援が来る前に行こう!」

「わかった」

魔物の群れを倒し、再び歩き続ける事2時間。シャスドレイの森の入り口にある

小さな集落に辿り着いたのであった。

「やっと着いたな!!」

「今日は進軍をここまでにして、ここで情報を集めておこう」

「ああ、疲れもあるしな」

マルニスの提案で3人はここに泊まる事にした。

だが、その騎士団の奴等がここに来たかどうかの情報をまずは集めなければいけない。


集落の中にある宿泊所にチェックインし、小さな集落ではあるが人は勿論居るので

情報を集めに回る3人。

すると、やはりここにあの騎士団の奴等が立ち寄ったらしいとの情報が手に入った。

「やっぱりここに立ち寄ったみたいだよ」

「そうか。俺の方もマルニスと同じで、騎士団長がここに来たって」

「あの人、目立つからなぁ……兵士部隊でも有名だ」

騎士団長は大剣の使い手で、水色の長髪が特徴的な男だ。例え変装していても

国内では有名なので、こう言った辺境の集落でも情報が得られるのは有り難い。


「目立たないように変装していても、バレるのか……」

「それってある意味一種の才能だな」

「同感。とりあえずこのルートは1本道だし、ここを通って行った事は間違い無さそうだから

明日からシャスドレイの森へと入ろう」

「わかった」


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