A New Fighting Adventurers第15話


そのマルニスの直感を信じて、北へと向かう前にまずはシークエルとエンデスに

今迄の出来事を報告しに行く事に。

「……と言う訳で、陛下……僕達は北へと向かおうと思っています」

バイラス達が北へと向かったのかもしれないと思い、マルニス達も

北へ向かいたいと言う事を2人に告げる。

「ふうむ……わかった。追うと良い。ただしそれには私から条件がある」

「条件ですか?」

「ああ。何としてでも奴の秘密を暴いて連れて帰って来るのだ。生死は問わん」

「わかりました!」


シークエルから許しも貰ったので、6人は北へ向かう準備をしようとした。

だがそこで、エンデスから更に嬉しい事を告げられる。

「皆さんの為に6頭、馬を用意しておきます」

「ほ、本当ですか!?」

まさかのプレゼントに、ブラインが驚愕の声を上げた。

「ありがとうございます、エンデス様。必ずやこの任を勤め上げて見せましょう」

ヘルツも胸の中央に右手を当て、直立のまま頭を垂れた。

「期待していますよ。では、宜しく御願いします」


騎士団の中には内通者が居ないとも限らないので、その騎士団を動かす訳には行かない。

現に帝都でもカリスドやヴァラスの事があっただけに、内密に動かないといけないので

この6人のパーティはまさにうってつけだったのである。

そうして、その日は旅の準備で武器の簡単な修理をヴァラスにしてもらったり、

食料の準備をしてマルニスとブラインの家にて6人は就寝した。



そして翌日。天気は澄み渡る様な青空になった。

この雨の日が多いと言われているハーエリソンでは珍しい天気だ。

「良い天気だな」

「ああ。僕等のこれから先の旅が、良い物になる様な気がするよ」

「そうだと良いんだけどな」

天気を見てそう呟いたブラインに同調したマルニスの言葉に、ヘルツはそうなる事を願って呟いた。

「僕達も決着を着けに行こう」

「ああ。俺達の邪魔をする奴等は何人たりともぶち壊す迄だ!!」

「気負い過ぎは禁物だぞ」

意気込むレディクとカリスドに、クールに諭すヴァラス。

6人の決着の時は近い。


帝都を出発して、ウェローソス遺跡へと向かって北へと6人は馬を走らせる。

元々騎士団員のマルニスとブライン、そして王城の兵士であるヘルツが馬に乗れるのは

当たり前だが、その他の3人が何故馬に乗れるのかと言う事を

彼等は不思議に思っていた。

「なぁあんた等! 馬に乗った事があるのか?」


ブラインのその言葉に、3人はそれぞれこう答えた。

「僕は元々貴族だぞ。乗馬位嗜まなくてどうする」

「俺、傭兵として活動していた時期があったから馬に乗って遠出する事も多かったんだよ」

「お客さんが帝都だけとは限らないから、馬位乗れなければ私は困るさ」

その理由にブラインは納得し、更に馬のスピードを上げて走り出す。

それに残りの5人も続くのであった。


馬を使えば帝都からそのウェローソス遺跡までは、半日とちょっとで辿り着く事が出来る。

帝都からジュエリブール迄、馬を使って辿り着ける時間より少し長い位だ。

だが、途中で何回かの休憩を挟んで馬を休ませなければ行けない。

その度に武器のチェックや、ラストバトルに向けての気合を入れておく。

勿論気合だけでは勝てないので、勝つ為のシミュレーションも大事なのだが。



そうして休憩を3回程挟み、ようやくウェローソス遺跡へと辿り着いた6人。

遺跡の前には、恐らく騎士団長達が乗って来た物であろう馬が6頭

しっかりと繋がれているではないか。

「どうやら僕の直感は当たりの様だ」

「ああ。だけどこの遺跡は宰相から聞いた話じゃあ広いらしいぜ。どうする?」

「勿論、最後まで調べよう」

そのヴァラスの提案で、このウェローソス遺跡を隅々まで調べる事になった。


6人は1階から始まり、地下2階迄を探索漏れが無い様に見回る。

「確かに、割と広い遺跡だな」

「だが良く考えてみれば、構造自体はシンプルだからよっぽどの事が無い限り、私達が迷う事は無いだろう」

そう話しながら歩いて行くと、最深部の大きな扉の向こうから人の話し声が聞こえるではないか。

「ん?」

「誰か居るんじゃないか?」


話し声が聞こえて来る部屋の扉に突っ込もうとするカリスドだったが、それをヴァラスが手で制した。

「待て待て。何があるかもわからないのに突っ込もうとするな。死ぬ事も有り得るぞ」

「……ご、ごめん」

「わかればよろしい。どれどれ……」

少しだけ扉を開けて、中の様子を見る6人。そこには広い石造りの部屋に6つの人影があった。

「誰か居るな」

「ああ。……って、あいつはさっきの休憩の時にレディクが話していた、アサートって奴じゃないのか?」

馬を休ませる為の休憩で、それぞれの旅の事情を話してもらった6人。

その中でレディクの因縁の相手であるアサートと、その部下と思わしきピンク色の髪の男が

テーブルに向かい合って何かを話している様子がまず目に飛び込んだ。

「本当だ。ここに来ていたんだな……!!」

因縁の相手の姿を視界に捉え、ギリッと歯軋りをするレディク。


そしてその声が聞こえて来たのだが、それは6人を凍り付かせる物であった。

「……と言う訳で、その計画は順調だな」

「勿論です。このビジネスが成功すればこの地域は私達の物になるでしょう。

帝都も消滅させる事が出来ますよ」

「ほう、それは凄い物だな。リストラした甲斐があったってものだ」

騎士団長バイラスの発したリストラと言う単語を聞き、マルニス、ブライン、ヘルツの3人の表情が変わる。

「おい、今リストラって……」

「ああ、確かに聞いたぜ俺も」

「僕達を含めて騎士達が大量解雇されたのは、それで浮いた分の経費をこっちに回す為だったのか……!」

まさかの事実に、一瞬頭がくらりとなるマルニス。


そしてビジネスとは一体何なのだろうかと思っていると、その疑問を解消させるカインの声が聞こえて来た。

「バイラス様も大胆な事をなさるものです。向こうのクレイジール遺跡と

こちらの遺跡で見つかった古代技術の中から、帝都を軽く壊滅させる事が出来るだけの

古代兵器に関する物を見つけたんですから」

「まさか帝国も、私達が裏切るとは思いもよらないだろうな。……さてと、後は……」

そう言いつつこっちを向いたバイラスと、マルニスの目がばっちりその瞬間合ってしまった。

「……ん!? おい、何者だ!!」

「まず……!」

マルニス以外の5人も、気付かれた事に気付いた。

「やべぇ、気付かれた!」

「この事を陛下に報告しに行くぞ!」

「わかった!」


6人は瞬時に来た道を戻るが、後ろからは扉が勢い良く開け放たれる音が聞こえて来た。

「侵入者だと!? ……おい、捕まえろ!! 絶対に逃がすな!!」

6人はとりあえず分散するのを避け、出口まで固まって逃げようとしたがスピードの速い者と

遅い者の差がどうしても出てしまう。

「おいカリスド! 遅れてるぞ!!」

「し、仕方ないだろ!!」

「こうなったらしょうがない。分散して撒くぞ!!」

ヴァラスのその提案で、6人はそれぞれ出口で上手く落ち合う事を約束して散り散りになって逃げ始めた。


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