A New Fighting Adventurers第13話
そうしてすったもんだの末、騎士団の連中を撒いて自分の家へカリスドと到着したマルニス達。
「余り広くないし、散らかってるけど気にしないで」
「俺はそう言うのは気にしないタイプだから、心配するな」
まずは一息ついてから、さっきの事の説明をブライン、ヘルツ、レディクの3人は求める。
「大変な事になったみたいだな、マルニス」
「俺達、追われている2人の姿を見つけて後を追って来たんだ。で、路地に誘い込んだって訳」
「騎士団に追われていたみたいだが、勿論僕達に説明はしてくれるよな?」
と言う訳で、マルニスは闘技場に足を運んでからの今までの状況を話して、カリスドも自己紹介。
「僕は旅人のマルニス。マルニス・クルセイダー」
「カリスド・イーヴェリーだ。チャンピオンの座を奪われたのは悔しいが、いつかリベンジさせてもらうぜ!」
「ああ、またいつでも」
そして他の3人も自己紹介をした後、改めて本題のさっきの事件の事について話をし始める。
「どう考えても異常事態だぞ。俺は闘技場に関わって長いんだが、あんな事は今まで1度も無かった」
「確かに。僕とブラインが騎士団に居た時も、あんな任務は無かった」
違法な闘技場の摘発は任務でやった事があるが、あれは国が認めた合法の闘技場。
そこで参加者達を摘発するのは意味がわからない事である。
「騎士団が動いていたって事は、その騎士団長とやらが関わっていそうだな」
「何でわかるんだ?」
「直感だ。何となくだけど、戦士の勘って奴が冴え渡るぜ」
カリスド以外の全員がこの時、いい加減な奴だなぁと思ったのは言うまでも無い。
とりあえずほとぼりが冷めるまでは、マルニスとカリスドはこの家に留まる事に。
「それじゃあ、俺達は買出しに行って来る」
「ああ、行ってらっしゃい」
マルニスとカリスドに見送られ、ブライン、ヘルツ、レディクの3人は再び帝都の街へ。
「この帝都で異常な事態が発生したのは、やっぱりあの騎士団長の失踪と何か関わりがあるのかな?」
「まだそれはわからないけど、マルニスが騎士団に理由も無く追われる訳が無い」
「僕も変だと思う。何か巨大な陰謀がうごめいている様な気がするんだ」
だがこの後、この3人にも騒ぎが降り掛かる事になってしまう。
「ん? おい、鍛治屋が騒がしくないか?」
最初にその事態を発見したブラインの視線の先には、騎士団の騎士達が
武器屋に雪崩れ込む姿であった。
「おいおい何だぁ? やけに騒がしいな」
「何かあったのかな?」
物陰からしばらく様子を見守っていると、やがて静かになり、鍛冶屋から
騎士達が多くの武器を抱えて去って行く様子が見て取れた。
「何か嫌な予感がするな。僕は行ってみる」
「お、おいレディク!」
鍛冶屋に走り出したレディクに、ブラインとヘルツも続く。
そしてその鍛冶屋の中には、想像を絶する光景が広がっていたのだった。
「うお……!!」
「こ、これはひどいな……」
3人はその光景に思わず絶句してしまう。鍛冶屋の中はメチャクチャに荒らされ、
武器は跡形も無く根こそぎ消え去っていた。
これはさっきの騎士達による物だろうと容易に想像がつく。
武器を作り出す為に必要な設備も完膚なきまでに破壊されてしまっている。
そんな時、ブラインの耳が新たな情報をキャッチする。
「……あれ? 呻き声が聞こえるぞ!?」
ブラインがカウンターの影を見てみると、そこには茶髪の男が血を流して倒れこんでいた。
「お、おい大丈夫か!?」
「う……あ……」
「どけブライン! キュア!」
上級治癒魔法のキュアをレディクが男にかけると、少しだけ安らかな表情になるのが見て取れた。
「す、すまない……誰か知らないが助かった」
「気にするな、たまたま通りがかっただけさ」
男はカウンターの上へと座り、ゆっくりと店の中を見渡してため息を盛大に吐いた。
「……これじゃあ廃業じゃないか……」
「一体何があったんだ? 良かったら話してくれないか?」
「ちょっと待ってくれ。私の武器を取って来る」
ブラインがそう尋ねるが、男は先に自分の武器を裏へと取りに行った。
そして帰って来た男の手には槍が握られ、良く見ると腰には鍛治の道具が吊り下げられている。
ここの鍛冶屋のオーナーかな、と推測する3人に対し、次に男はこんな事を言い出した。
「待たせたな。話したいのは山々なんだが、ここじゃあまた奴等が来るかもしれない。
どこか良い場所を知らないか?」
その疑問に対して、ブラインはとっておきの場所を紹介する事にした。
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