A New Fighting Adventurers第12話


エントランスで情報収集をしたが成果は全然であり、今度は闘技場の観客席へと向かう。

するとその途中で係員からいきなり声がかかった。

「そこの君!」

「はっ? ぼ、僕ですか?」

「そうだよ君だよ! もし良かったら、チャンピオンに挑戦してみないか?」

「えっ……!?」

しかし今は大事な情報収集中である。時間を割く暇は無い。

だが係員の目は本気だ。

「すぐに終わるから!! さぁさぁ、入った入った!!」

「あ、ちょ、ちょっと!!」


観客席に向かう通路に行こうとしていたのに、半ば強引に闘技場のフィールドへと

足を踏み入れる事になったのである。

円筒形のコロシアム状の闘技場であり、フィールドは広くて大勢で動き回れる様な

まるで鍛練場を思い出す造りだ。地面は土で、身体になるべくダメージがかからない様にもなっている。

そしてその中央には、白い髪の大柄な男が両手斧を抱えて仁王立ちしているではないか。

その男はマルニスの姿を視界に捉えると、歩み寄って話しかけて来る。

「次の挑戦者ってのは御前か?」


が、マルニスは何とかこの状況を回避したい。

「いえ、手違いでここに入って来ちゃって……。僕、戦う気は無いんですよ」

「手違いだと? だったらその腰にぶら下げている物は何だ?」

「こ、これは……」

男の目つきが変わり、マルニスの服の襟を冷や汗が濡らす。

「まぁせっかくここまで来たんだ。一発、俺と勝負してもらおうじゃねえか!!」

「うわああああ……」

面倒くさい事になったなと思いながらも、渋々戦う事にしたマルニス。

「次の試合!! チャンピオンカリスド・イーヴェリー対、マルニス・クルセイダー!!」

実況が大きく声を張り上げると、闘技場に大きな歓声が沸きあがった。

勿論通常ではとても声が届かないので、風の魔法に声を乗せて実況しているのだ。

「では始め!!」

(こうなったらもう……やるしかないか!!)


何だかんだ言っても、元々は騎士団に所属していた為にこう言う状況は今まで幾らでもあった。

その頃を思い出しつつ、マルニスも腰から剣を抜いてカリスドと呼ばれたチャンピオンに立ち向かう。

「行くぞっ!!」

両手斧を構えて走って来るカリスドだが、動きはブラインよりも全然鈍い。

だがパワーはありそうなので、あっさり見切ってマルニスは横へと回りこむ。

そうして剣を横薙ぎに振るうが、それはカリスドも予測していた様でバックステップで回避された。


観客からの目線で見てみると、この戦いは典型的なパワーとスピードの真っ向勝負。

タイプが全く違う2人の戦いである。

一般的にはパワーがある方が有利とされているのはマルニスも知っているが、

懐に飛び込んで相手を切り裂いてしまえば良い。

(余り時間は掛けられないからな。一気に決めるぞ!!)

騎士団長の捜査の事もあり、さっさと終わらせたいのがマルニスの本音である。


「おらあっ!!」

両手斧をカリスドが振り下ろして来るが、それを斜め前方に転がってマルニスは回避。

そのまま下から突き上げる様に、素早く剣先をカリスドの喉元に突きつけた。

「うっ……!?」

「君の負けだ」

ここで勝負は決着が着き、この瞬間新たな闘技場のチャンピオンが誕生したのである。



そうして、後は新チャンピオンの誕生がアナウンスされるだけだったのだが

ここでまた新たな展開が。

動きを止めた2人の元に、さっきのマルニスを参加させた係員が走って来た。

「おい、騎士団がこの闘技場の参加者を摘発しに来たぞ!?」

「へえっ!?」

敗北の屈辱感に打ちひしがれていたカリスドと、それを冷ややかな目で見つめていた

マルニスはその係員の言葉に動きを取り戻した。


だが、その2人はその言葉に凄い疑惑の目を向ける。

「ど、どう言う事ですか……?」

「そうだよ! この闘技場は合法の筈だぞ?」

「そ、そう言われましても……ああっ、来た!! 裏から逃げろ!!」

確かに入り口の方からは、甲冑を着込んだ騎士達がどやどやと雪崩れ込んで来た。

その光景を見てただ事では無いと判断した2人は、係員の言う通り裏からとにかく逃げる事に。

「な、何があったんだ!?」

「俺に聞くな!! だけどおかしいぜ。この闘技場は国に認められている合法の施設だろう!」

「そうだよ! とにかく、僕の家迄逃げ切ろう!!」


裏口から脱出したは良いが、騎士団の連中は諦めずに追って来る。

甲冑をつけている分スピードはマルニスの方が速いが、カリスドはそれほど変わらないのだ。

少しずつ引き離してはいるが、両手斧がスピードを落とす原因になってしまっている。

「くそっ! 振り切れねぇ!」

「分かれるか!? それとも……」


戦うか!? と言い掛けたマルニスの目に次の瞬間飛び込んで来た人物が。

「マルニス! こっちだ!!」

何と目の前の路地の影からブライン、ヘルツ、レディクが現れ、声を掛けて来た。

「くっ!!」

なりふり構っては居られないので、3人と一緒に路地を駆け抜ける2人。

そして3人はマルニスとカリスドを先に行かせ、騎士団の連中を騙す事に。

「先に行け!!」

「え!?」

「良いから! ここは僕達に任せろ!」


先に行かせて、後から路地を通って追い付いて来た騎士団員達を

路地が分かれている所で待ち構える。

「おい、ここを2人の男が通らなかったか!?」

「え、あ、こっちの道に行きましたよ!」

「そうか。良し、向こうだ!!」

マルニスとカリスドが向かった方とは別の道を指差すヘルツ。

「ふ〜、良し、俺達はマルニス達を追いかけよう!」

「わかった!」

ブラインの言葉に、ヘルツとレディクも揃って頷きを返した。


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