A New Fighting Adventurers第11話
船は中型船で、大勢の人員と物資を運ぶ事が出来る様に出来ている。
しかもこの川はとても横幅が広く、このサイズの船が2隻楽にすれ違える程なのだ。
「……本当なのかよ、ここにあの騎士団長達が居るって?」
「ああ。間違い無い。僕とブラインは確かにこの船に乗るのを見た」
船のデッキで訝しげにマルニスとブラインに問いかけるヘルツ。
「じゃあ、まずはそれを証明する為に確認しに行こうじゃないか。川は1本道だし、
今日の真夜中には帝都の近くに着く筈だから、時間はたっぷりある」
「わかった」
レディクもそれに同意し、船内へと足を運ぶ4人。
そしてお目当ての人物達を逆側のデッキで発見し、遠くからそっと確認。
「間違い無い……バイラス騎士団長だ。後は青髪の副騎士団長イワン様に
それからカイン様……っと、あれは元々神官のドラソン様だな」
金髪の男を小さく指差してヘルツが紹介をする。そしてその横ではレディクが
何やらとても複雑な表情をしていた。
「……どうした、レディク?」
「アサート家の奴じゃないか……」
「はっ? あ、アサートって御前を狙ってた家の?」
白髪の男を見据えて、そのヘルツの言葉に頷くレディク。
「間違い無い。アサート家の1人息子のティレジュだ。こんな所で出会えるとはな……」
その横に居るピンク色の髪の毛の奴は全員が知らない奴だが、これから先にどうするかを
部屋に戻って話し合う事に。
「とりあえず発見できた事だし、僕達は帝都に着いたら陛下にすぐに報告しよう」
「ああ。今ここで僕達が出て行ってもどうにも出来ないからな」
「それと……ティレジュって奴が何故レディクを付け狙っているのかも問いただす必要がありそうだ」
「後、騎士団長の謎の行動もしっかりと白状してもらわないといけないな」
そうして翌朝の早朝。船から降りて帝都へと向かう4人。
勿論騎士団長達を見失わない様にマーク……しておきたかったが、どうやらそれは無理そうだ。
彼等は予め手配しておいた馬を使って、帝都の方角へと向かって行ってしまったのだから。
「……良し、俺達も馬車で帝都に行くぞ。少しでも早く着ける様にしたい」
「そうだな」
「奴等の行き先はあの方角だと帝都しかないからな」
その後レディクが馬車の手配をして来て、4人は帝都へと向かった。
そうして馬車に揺られて帝都に着いた頃には、既に日は高く昇る所か落ち始めており、
時間は夕方になろうとしていた。
ジュエリブール迄は歩いて1日、馬車で半日ばかりかかったが、馬を使えば
馬車よりスピードが速いのでもっと早く着く。なので騎士団長のパーティが先にどうしても着いてしまうが、
徒歩でここ迄来たらもっと遅くなっていただろう。
「良し、時間も時間だしさっさと陛下に報告に向かおう」
「そうだな」
城に着いた4人は謁見の間では無く、陛下の執務室へと通された。
この任務は極秘の事項である為に、皇帝のシークエルと宰相のエンデス・ヘーラカーンのみが
その報告を聞く事になったのであった。
用意された椅子に座り、話し易い様に向かい合う状況を作るシークエル。
「良くぞ戻ったな。さて、それでは今までの経緯を全て話してもらおうか」
「はい、陛下」
マルニスを中心に、4人は今までの経緯を全て包み隠さず話した。
それと同時にレディクの屋敷から持って来た資料も、シークエルの側に控えるエンデスに渡す。
「……これは確かに、古代遺跡に関する書物ですね」
「はい。それからこの王城には騎士団長達が戻って来ているんですよね?」
マルニスがそう聞いたのは確認の為だったが、次の瞬間シークエルの口から驚愕の事実が語られる事になる。
「……いや、戻って来ていない」
6人の間に、何とも言えない空気が次の瞬間流れる。
「へっ? 戻って……無い?」
「そんな……。この帝都に行く為のルートを馬で駆け抜けていったのを俺達は確かに見たんです!」
だが、そんなブラインの言葉に宰相のエンデスは首を横に振る。
「本当に戻っていらっしゃいませんよ。そう言う事でしたら貴方達にまた依頼をします。
この帝都に騎士団長達が戻って来たと言うのであれば、今からでも探し出す様に」
「えぅ……?」
と言う訳で、エンデスの命令に従って4人は帝都中を探し回る破目になってしまった。
帝都はとにかく広いので、4人はバラバラに分かれて夕方迄探し回った後、
再び王城の近くで合流する事にして行動を開始する。
そんな中で、マルニスは帝都で1番人が集まりそうな闘技場へとやって来ていた。
(単純な考えだけど、人が集まると言えばここなんだよな)
そう考え、1人マルニスは闘技場のエントランスへと足を踏み入れるのであった。
闘技場では定期的に武術大会が開かれており、大会で優勝して騎士団に
入団する事も出来る。またその誘いを断る事も可能で、昔の闘技場のチャンピオンで
騎士団への入団はあえて断っていた者も珍しくは無かったのだ。
マルニスは騎士団長を探すべく情報収集を進めていると、数日前に
新たな闘技場のチャンピオンが誕生したとの情報を手に入れる事が出来た。
「闘技場のチャンピオンか……」
そんな事をぼやいていたマルニスは、この後自分の身に思いも寄らない事態が降りかかるとは思いもしていなかった。
A New Fighting Adventurers第12話へ