A New Fighting Adventurers第1話
僕達は、あての無い旅をしている。
特に目的がある訳でも無く、このハーエリソンの地で何かをする訳でも無いのだが、
それでも一箇所に留まるのは性に合わない。
だったら旅をして、魔物を倒して生活していた方が良いだろうと思って旅に出た位だ。
しかし僕達はこの旅が思いも寄らぬ方向に流れて行く事等を、この時点では知るよしも無かった。
帝都近くの平原で旅人の剣士であるマルニス・クルセイダーと、幼馴染で
相棒でもあるブライン・ガルクレスはギルドから依頼されたモンスターを討伐していた。
「ふう、僕の方はあらかた倒したよ」
「俺の方も大丈夫だ。……マルニス、そろそろ違う所へ行かないか?」
「そうだね」
ギルドの依頼はこれ位にして、そろそろ違う所へと旅をしに向かいたいのが
今の2人の気持ちだ。
温厚で礼儀正しい。物腰が穏やか。周囲からはそんな評価を受けているマルニス・クルセイダー。
帝国騎士団でもそんな性格なので周りの人間から好かれやすいタイプであったが、それと今回の騎士団
リストラと言う事は何の関係も無かった様だった。確かに騎士団に所属していたマルニスは情熱的な
部分も持ち合わせていたので鍛錬にもその情熱を傾けていたし、成績も決して悪い方では無かった。
だがそんな彼も御年28歳。そろそろ身を固めないとまずいと言うのにここに来て突然のリストラはきつい。
もともと帝都から遠く離れた田舎の村で生まれ育ったマルニスだったが、15歳のある日侵攻して来た魔物の群れに
その村が襲われていた所を騎士団に助けられてから騎士団員を目指す様になった。
村が壊滅してしまい、家族も自分を除いて居なくなってしまったマルニスはそのまま旅人として
帝都を目指してその時に助けて貰った騎士団員に武器術や体術、馬術を教わりながら帝都までやって来て
そのまま騎士学校に入学。それから13年の月日が流れ、現在は再び旅人になる予定になってしまった。
帝国のギルドで依頼終了の報告をし、報奨金を貰う。
「さて、どこへ行こうか」
「西の方を目指そうと思う。何となくだがな」
「わかった。ブラインがそう言うなら」
マルニスはブラインの意見に同意をし、西を目指す事にした。
そもそもこの2人には帝都に余り良い思い出が無い。2人はアーエリヴァ帝国の
騎士団に所属していた団員同士であったのだが、人員削減との事で1ヶ月前に
リストラの対象になってしまった。いくらか退職金代わりのお金は貰えはしたが、それでも
食い扶持を稼がなければいけないのでこうして旅人として帝都周辺でモンスターを
退治し始めたのだ。
この1ヶ月は帝都周辺をポイントに活動して来たが、流石にそれも飽きて来たので
別の方面へと歩みを進める事にする。
アーエリヴァ帝国はハーエリソンと呼ばれる、この大きな大陸の右上に位置している国だ。
この大陸は幾つもの神が共同で創ったとされているが、このハーエリソンと言う地域は
はるか昔、水の神であるハーエリソンが創ったとされる地域で、太く長い川が特徴的な
地域になっている。これは子供でも知っている神話だ。
現在はアーエリヴァ帝国がこの地域の実権を握っており、隣国とのトラブルは
今の所皆無なのでそれはまだ良いとする。
しかしながら水の神が創ったとされるので、この地域は雨の日が多いのが難点だ。
1年を通して気温の変化が余り無いのが救いと言う意見もあるが、雨が強くなると
問題も色々と発生して来る。
その1つが移動手段である船だ。ハーエリソンでは大体中央の川を使って移動する。
移動手段としては船を用いるが、雨で増水すると危険を回避する為出港停止になる事も良くある。
今日は晴れているものの、もう夕方なので明日から移動を始める事にした2人。
マルニスは帝都にある自宅にブラインと2人で住んでいる。
ちなみに2人の親は居ない。元々2人は孤児だった過去を持っているからだ。
「ふう、明日からは西へ向かうから必要な物を買出しに行こう」
「朝起きてからだな。良いぜ」
そう約束し夕食を摂った後、明日からの西への旅に備えて早めに寝床へと入る2人であった。
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