Dragoon which came from the different world第5話(最終話)


「よーし来い来い、もっとこっちに来てみろ!」

アイトエルが大きく手を振ってドラゴンを挑発する。

それと同時に陽介も満身創痍の筈なのに全力で地面に

落ちている小石をドラゴンに投げつける。

またウェズリーとロバート、そしてスマーティも的確な射撃で

ドラゴンを狙い続け、上手くその保管場所まで誘導して行く事に

成功していた。


そうする事でようやくその保管場所となっている広場の区画まで

追い詰める事に成功し、後は何とかしてビンをドラゴンの口目掛けて

投げ入れるだけ……かと思いきや!?

「って、お、おいあれって……」

「あそこに居るの、令次とハリドじゃないか!?」

保管されている区画は出入り口が2つある大きな人工のゲートをくぐり、

その奥に広場があり、その広場の地下に格納庫があってそこから

地上に戦車が上がって来ると言うシステムとなっていた。


しかし軍事基地が移転した今、その格納庫は使われる事も無いので

下に誤って落ちてしまうと言う事は無い。

更に広場の奥には別の格納庫があり、その格納庫の両サイドには

緩やかで斜めで幅も4トントラック1台分位はあるスロープがついていて

格納庫の上に登る事が出来る様になっている。

そのスロープを上がった所に、何とハリドとレイジが横たわっているのを

目の良い周二と大塚が見つけてしまったのである。


しかもそこに見計らったかの様に、スロープの目の前を塞ぐ形で

ドラゴンがばっさばっさと翼をはためかせて超低空飛行で一行を牽制する。

「くそ、これじゃあ近づけねぇぜ!!」

「何とかしてあいつをやっぱり倒さないと駄目みたいね」

「でも、高い所に上れないんじゃ勝ち目なんて無いわよ!」

真由美も恵も由佳もドラゴンを見てギリッと歯軋りをする。

だが、そんな時に和美がこんな事を言い出した。

「だったら、あいつをしゃがませてやれば良いだけよ」


その言葉をそばで聞いていた明がはっとした顔つきになる。

「あ、そうか……奴の口元を上手く誘導させて上手く投げ入れれば良いのか」

「成る程な。でも、それだったら誰かがおとりにならなければな」

そんなウェズリーの作戦に真っ先に手を上げたのは大塚だった。

「なら俺がやる。さっき良い物を見つけたんだ」

「良い物?」

「ああ、ちょっと待ってろ!」

しかし1人で行かせると何をするかが分からないので、とりあえず大塚に

アランが着いて行く事に。


大塚とアランがやって来たのは、今他のメンバーが戦っている広場から

そんなに離れていない倉庫だった。

「ここに何があるんだ?」

「あれだよ、あれ。キーもついてる」

「え?」

「まさかこんなバイクがここにあるとはな」


大塚が指を差したのは、倉庫の中に置いてあった古いバイクだった。

「お、おいこのバイクで何をするつもりだ?」

「俺がおとりになってあいつの注意を引くんだよ。

このスーパーカブ110でな! さ、ちょっと狭いけど乗った乗った!」

「お、おいおい!」

強引にアランをスーパーカブに2人乗りさせて走り出す。

2人ともノーヘルであるがそんな事は今気にしてなんかいられない。


そうして一行の元に向かった大塚とアランは、まずアランが後ろから

グレネードランチャーをドラゴンに向けてぶっ放して気を引く。

そして次に元プロライダーの大塚がそのテクニックを駆使して、

スーパーカブの機動力を活かしてちょこまかと動き回ってドラゴンの

気を更に引き付ける。

「おらおら、こっちだぜ!」

「余り興奮して振り落とされるなよ!」


思ったとおり、ドラゴンは目の前でちょこまかと動き回る

スーパーカブに露骨に反応を見せて何とか追い払おうと爪で攻撃したり、

ボディプレスで踏み潰そうとする。

その間に岸と岩村と和人とアイトエルとジェイノリーと浩夜とハールと藤尾で

ハリドと令次を助け出して安全な場所へと避難。

それを見ていた博人がビンを懐から出して、スロープを伝って高い場所へと移る。

大塚もそれに気がつき、まずはスロープを上って博人の所へ。

ドラゴンもズシンズシンと足音を響かせて追いかける。


そうして博人の目の前まで来た所で大塚とアランはドラゴンと向き直る。

(まだだ……まだまだ……我慢……)

ドラゴンが口を開け、その中心にエネルギーが集まって行く。

ファイアブレス発射の前兆だ。

「よーし、今だ!!」

大塚が叫び、博人がそれを合図にビンをドラゴンの口の中へ投げ込み、

そしてすぐに横っ飛びをして受け身を取りながら立ち上がる。

アランと大塚はそのままドラゴンの様子を見守る。


ビンを飲み込んだドラゴンはブレスを吐く用意を中断したかと思えば、突然

大声を上げてもだえ苦しみ始めた。

「な、何だ!?」

「様子が変だぜ……」

ウェズリーもレイジも呆然として攻撃の手を止めてしまう。

そしてドラゴンがもだえ苦しみ、眩しい光を放ち始める。

「あ、危ない!」

「倒れるぞ!」


そのまま倒れこんで行くドラゴンの身体が突然、眩い光を放ち始める。

「うおお!?」

「ぐ、な、何だぁ!?」

『何、何が起こっているの!?』

エヴァンもスマーティもジャネットもその光景に驚きを隠す事が出来ない。

そしてその光が収まった時、ドラゴンの身体は跡形も無くその場から

光に包まれて消えていた。

「や、やった、のか……!?」

「生物の気配は感じられないけど、まだ何処かに居るかもしれない可能性は高いわ」

孝司はドラゴンが消えた事で安堵の息を浮かべ、反対に恵は周りを冷静に見渡す。


しかしそんな2人に声をかけて来たのは思いもよらない人物だった。

「どうやら、あのドラゴンの脅威は去ったらしいぜ」

「ハリド?」

意識を取り戻したハリドが復活して来たのである。

「気づいたか。しかし……何故そんな事が分かる?」

スマーティが怪訝そうに問いかけるが、それに答えたのはハリドでは無く……。

「俺達の意識が戻る時、頭の中に声が聞こえて来ました。

こっちの世界に暴れん坊が帰って来た、ご苦労だったってね」


令次もどうやら意識を取り戻したらしく、その聞こえて来た声と言うのは

どうやらイークヴェスの物であろう。

「それってもしかして、イークヴェスか?」

「はい、それで間違いありませんよ」

連の問いかけに、令次は大きく首を縦に振った。

「そっか、それじゃ……帰るとするか」

「ああ、もーこりごりだぜ、ドラゴンは」

「ほんと、これっきりにして欲しいわね」

「はるばるアメリカまで来て、とんぼ返りは少し寂しいけどな」

「まーまー良いじゃん、バーチャシティはこれで救われたんだ」

「ヨーロッパに来てくれなくて良かった良かった」


そんな事を7チームのリーダー達が言いつつバーチャコップとVSSE以外の

35人は何事も無かったかの様にその場を立ち去ろうとする。

が、唖然としていたそのバーチャコップとVSSEが我に返った事により

35人の周りを8人で囲い込んで、それぞれが素早く銃口を向ける。

「……何勝手に帰ろうとしてるんだ? これだけの騒ぎを起こしておいて」

「そもそもこのままバーチャシティから帰れるとでも?」

「VSSEも撤収は後回しだな」

「ああ、このまま帰したら謎が俺達には残ったままだ」

「時間はたっぷりあるみたいだしなぁ……?」

「そうだな。それに病院へ行かなければいけない奴も居るだろう」

「手当てした後はたっぷり尋問だがな」

「てな訳で、逃げようとすればどうなるか……分かるよなぁ?」


その光景を通信で見ていたジャネットとフランクから止めの一言が。

『特捜課のオフィスに全員連れて来て。入れるだけのスペースはあるわよ』

『もし仮にその場を切り抜けても、港も空港も警察が待ち伏せる事に

なるだろうからな。それでも良いなら逃げてみろ』

そのフランクの一言が終わると同時に、遠くから大量のパトカーのサイレンが

聞こえて来た。

「応援が来たみたいだ。御前達の車も預からせて貰うぞ」

「当然、拒否権は無いが」

レイジとスマーティのその一言で、35人はホールドアップするしか無かった。


その後陽介と博人は病院で精密検査を受け、この35人は1人ずつ

尋問をバーチャコップとVSSEの計10人から受ける事になり、結局

バーチャシティから帰る飛行機に乗る事が出来たのはこの時から2日後の

夜であったと言う。



セガ&ナムコサイドに戻る