協力者

藤之木 文太(ふじのき ぶんた)


アメリカ・バーチャシティ。


ここでは毎日犯罪も起きている。それを解決するため日々活動しているバーチャシティ警察。

その中でもバーチャシティ警察第2分署に課がある特別捜査課、略して特捜課。

ここは特に難しい事件や大きな事件が起きた時に活動、協力する普通の人なら2日で

音を上げてしまうような厳しい課だ。

そこに属しているのが、署内のトラブルメーカーと呼ばれているマイク・ハーディ、通称レイジと

その相棒でプレイボーイなジミー・クールス、通称スマーティ。

更に犯罪心理学を得意とする女刑事でオペレーターのジャネット・マーシャル、

その3人をまとめるフランク・カランザ特捜課主任の4人で構成されている。


そして、今日も事件は起きる。



藤之木 文太(ふじのき ぶんた)はここ、バーチャシティにて久々の休暇を楽しんでいた。

愛車のGRB・スバルインプレッサとともに。

(やっぱりアメリカのでかい車より、インプレッサのほうがいいな)

…とか思っていた矢先、いきなり違法改造があったらしく切符を切られてしまう。

インプレッサを止めたのはカマロのパトカーだった。

「アルミホイールに…エンジンもかなり改造してあるな。それにこの派手な

カラーリング…いったいこんな車でどこを走るつもりだったんだ?」

文太はその問いには答えられなかった。

「まぁ、いい。期日までに直して帰ってくれ。いいな」

「一応旅行者でも、俺等は厳しいからな。…よし、パトロールに戻ろうぜスマーティ」


(ついてないな…)

がっくりとタバコをふかしつつそんなことを考えながら走っていると、目の前で渋滞が起こっているではないか。

(げっ、渋滞かよ…)

とどめにこれかとうんざりしつつ、とりあえず列の後ろに並んでサイドブレーキを引く文太。

そのまま何気なく前方を見続けていたときだった。

(…ん?)

前方に止まっている1台のバン。そのバンの運転席から1人の妊婦が降りてきた。

しかもやけに苦しそうだ。

(おいおい…あれ、やばいんじゃないか?)

このままだと危ないと感じた文太は、とっさにインプレッサから降りて妊婦へ駆け寄った。

「あの…大丈夫ですか?」

「うぅ…苦しい…。さっきから陣痛がきちゃって…だから…」

「えぇ!?」

取りあえず救急車を呼ぼうとも思ったが、時間がなさそうだ。かといってここで産ませるわけにも…。


考えた文太は、ひとつの決断を下す。

「わかった。俺の車に!」

妊婦を支えてインプレッサの助手席へ座らせ、シートベルトはさせない。

もし急ブレーキをかけたりでもしたら、赤ん坊が大惨事になるからだ。

「しっかりつかまってて…といいたいけど、病院の場所ってどこだい?」

「えーと…このハイウェイを下りて、市街地を抜けて港のほうに向かうの!」

「わかった!」


文太はベルトを締め、インプレッサをすぐそこにあるハイウェイの出口に向けて逆走させる。

違反なんて細かいことは言ってられない。今はこの2人の安全が最優先だ。

自分の腕を信じてインプレッサを出口に向けてターンさせ、加速させていく。

「つ、次は右…」

「ああ!」

赤信号なんて無視。妊婦に負担をかけないよう、グリップ走行を心がけてインプレッサを走らせる。

だがその瞬間、近くでサイレンの音が響いた。

(何!?)

ミラーを見ると、そこにはさっインプレッサを停車させてきたカマロの姿が。

文太はまたかよ…と思いつつ、スピードダウンして窓を開ける。

「おい、おまわりさん!助けてくれ!この人赤ん坊が生まれそうなんだよ!」



その声を聞いたレイジとスマーティ、仰天。

「本当か!?」

「なら俺らが病院まで先導する!ついてこい!」



「わかった!」

カマロがサイレンを鳴らして先導し、それについて文太は市街地を駆け抜けて行く。

「おいあんた、警察が先導してくれてる! あまりしゃべらないほうがいい!」

「え…ええ」

妊婦を落ち着かせ、再びカマロの後を追いかけていく文太。しかし前のほうででかいトラックが2台並走し、道をふさごうとしていた。

カマロはその前にすっと抜け出る。しかし文太は詰まってしまう。

(む…!)

このままではやばい。そう思った文太はとっさにドアミラーをたたみ、ぎりぎりトラックを切り抜けることに成功。

妊婦は意識朦朧としながらも、文太のドラテクのよさに驚愕していた。

(こんな運転うまい人で、よかった…!)


何とか港近くの病院に到着し、急いで病院前に待機していたタンカに女性を運ぶ。

(はぁ、よかった…)

だが、タンカに載せられた妊婦は医師たちを引きとめる。そして文太に向かって一言。

「ヒーローさん、ありがとう…」

文太はその言葉に親指を立て、ふっと笑みを返した。


しかし文太が帰ろうと振り向くと、そこには腕を組むスマーティと

腰に両手を当てているレイジの姿が。

「…あ」

「また…やってくれたな、オッサン」


だがその次にスマーティが発した言葉は、文太の予想とは違ったものだった。

「さっきの切符、出してもらおう」

文太はその言葉にきょとん、となる。

「え? あ、ああ…はい」


文太が切符をスマーティに渡すと、スマーティはそれをグシャッと握り潰した。

「…え?」

「…今回だけだ。行くぞ、レイジ」

「あ…ああ」

ポカーンとしている文太をよそに、2人はカマロに乗り込もうとした。

そこではっと気がついた文太は声をあわててかける。

「あ…ちょっと待ってくれ!」

自分の呼びかけに2人が振り向いたのを確認した文太が、2人に向かって一言。

「…ありがとな」

その言葉に、レイジもスマーティも照れくさそうに笑ってカマロに乗り込むのであった。




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