Run to the Virtua City第5話(最終話)


「動くな、そこまでだ!!」

「……!?」

「そのアタッシュケースをこっちに渡して貰おうか?」

和人にとっては聞き覚えのある声。その声のする方を見てみると、予想通りと言うべきか

バーチャコップの2人がガーディアンKの銃口を向けながらR35GT−Rパトカーから

降りて来た所であった。

「やっぱり昨日の夜の奴等はあんた等だったか、レイジにスマーティ」

和人は若干呆れた様な口調でアタッシュケースを見せる。


「そのアタッシュケースの中身は何だ?」

「これか? 何かの書類だよ」

アタッシュケースを自分の目の前に掲げながら、和人はレイジとスマーティが

近付いて来るのを待つ。

だが、そんな緊迫した状況が次の瞬間思いもよらない展開に早変わりする。

「……伏せろ!!」

「え!?」

突然スマーティが大声を上げ、何が何だか分からずも日本人の3人は地面に伏せる。

その頭上でいきなり銃撃戦が開始。かなり危険な状況に突然なってしまった事は

否定出来なくなってしまった。


「こっちだ!」

和人は拓也と山本に指示を出し、素早く前屈みの体勢で近くの物陰に滑り込む。

しかし、そんな3人の前に1人の敵が近づいて来たので素早く和人が対処。

サブマシンガンをこちらに向けて構えようとした所で、得意とする合気道の

テクニックを使って相手の体勢を崩しながら投げ飛ばす。そこから

拓也と山本に敵の手が及ばない所へと逃げる様に指示したのだったが……。

「おい、危ねぇ!!」

「なっ!?」

咄嗟に拓也が和人を突き飛ばす。それもその筈、山本と拓也に指示を出していた

和人の視界の外から新たな敵が和人を狙って来ていたのを拓也が見つけたからだ。


「ぐあ!」

和人を突き飛ばした事により、何と拓也の肩に銃弾が命中。

「拓也!」

山本が咄嗟に駆け寄って止血する一方で、和人はその撃って来た敵に向かって

アタッシュケースを投げつけながら自分も突進。

そのアタッシュケースに敵が気を取られたのを見逃さず、スライディングで敵の足元に

滑り込んで足払い。合気道だけでは無く総合格闘技も習っている和人はそのまま

馬乗りになって2、3発殴りつけ、相手の胸倉を掴んでその身体を起こしてから突き飛ばして

最後に前蹴りで銃撃戦の中へと蹴り飛ばす。


これで敵が居なくなったので、和人は素早く拓也の様子を見に行く。

「拓也、大丈夫か!!」

「うぐぅ、痛ぇ……」

「くそ、このままじゃまずいな!!」

だけどまだ神は3人を見放していなかった様だ。ローカルポリスのバックアップが来た様で、

一気に事件は解決へと向かう。そしてバーチャコップの2人も拓也の状況に気がついた。

「う、撃たれたのか!?」

「この近くに病院があるからそこに運ぶぞ!! 俺達がGT−Rで先導するから、御前達はあの

シルエイティでついて来い!」

「分かった!!」


レイジの指示通りにGT−Rに先導して貰い、シルエイティで病院に辿り着いた拓也が

治療を受けてみた所、大事にはならなかったので不幸中の幸いだった。

そして何故あのアタッシュケースが狙われていたかと言うと、アタッシュケースの中に入っていた書類が

目的では無く、アタッシュケースの底の内張りを剥がした所に入っていた1枚のメモがあの

武装集団の本当の目的だったのだ。

そのメモに書かれていた内容は、このバーチャシティの工場地帯の一角でこっそりと武器を

製造する工場が建設されていた事を内部告発する為の物だった。

それに感づいた武装集団の組織が、アタッシュケースを投げ込んで来た組織の裏切り者と

銃撃戦をあそこで繰り広げていた事で偶然和人が通り掛かり、運悪く和人のシルエイティに

アタッシュケースが投げ込まれてしまったのだとその後の捜査で判明した。


「何か、俺もうどっと疲れたよー」

「俺も。なーんで旅行に来てまでこんな目に……」

「と言うか2ヶ月前のキャロラインシティでもそうだったろ。アメリカ自体に嫌われてんのか、俺等は……」

「え? キャロラインシティって?」

「ああ、それはな……」

拓也と山本は、隼人と共に2ヶ月前にパーツメーカーのアメリカ法人との開発打ち合わせに出かけた

キャロラインシティでの出来事を和人とバーチャコップに話した。

「何か、大変だったんだな」

「ほんとだよ。旅行で来るのはもう止めた方が良いのかな」


「御前達は色々とトラブルに巻き込まれやすい体質の様だな」

「でも、それでアメリカを嫌いにならないでくれ。俺達は何時でもウェルカムさ」

「ああ、そう言って貰えると助かるよ」

レイジとスマーティからそう言われ、3人は少しだけ救われた気がした。

そうして港にスターレットとレビンとシルエイティを預けて日本への輸送を手配し、3人はレイジとスマーティに

見送られながらバーチャシティ空港から日本へと帰って行ったのであった。




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