バーチャコップ小説 Third Stageノーマルミッション


観光の傍らで腹ごしらえもピザ屋で済ませ、バーチャシティでの観光を

その後も楽しむサエリクスとジェイノリー。

そうして気がついてみれば時刻はもう昼の2時になろうとしていた。

「ああー、今回はトラブルに巻き込まれて無いから楽しいな」

「全くだ。きちんと観光が出来たのは久々だ」

楽しさ全開の表情を見せるサエリクスと、クールにそれに答えるジェイノリー。

せっかくアメリカまでやって来たのだから楽しんでおきたい。

アメリカの名物である自由の女神とかも本当は見に行きたい気持ちも山々で

あったが、今日はこのバーチャシティで精一杯楽しもうと言う事にした。


そうして市街地を色々と見回ってそのまま地下鉄に乗り込む。

「この地下鉄はバーチャシティの交通の要らしいな」

「この前のモナコと一緒じゃねーか」

「その話はするな」

同じく鉄道が交通の要になっているモナコの話を出そうとしたサエリクスに、

思い出したく無いジェイノリーがバシッとNGを叩き付ける。

「お、おう。……それにしてもここまでリラックス出来たのって久々だな」

「軍では規律、規律か?」

「ああそうだ」

腕組みをしてうんうんとうなずくサエリクスにジェイノリーが心の中で納得する。


そうして地下鉄から降りて、今度は地上へと出る為にそこまでの通路を改札を出て歩く。

「次は何処行く?」

「そうだな……」

パンフレットを見ながら歩いていたサエリクスとジェイノリーだったが、その瞬間誰かに物凄い

勢いでぶつかられてしまい2人一緒に地面に倒れこんでしまう。

「うお!?」

「おわ!?」


倒れ込んだ2人が体勢を立て直して立ち上がると、そこには赤いスポーツバッグからはみ出た

大量の現金をガサガサとかき集めている帽子の男が1人。

そして現金以外にも気になる物が1つ……。

(何だあれ……?)

サエリクスが見た物、それは赤いバッグの中から現金と同じ様にはみ出た1枚の絵であった。

それを慌ててバッグに戻し、男はあたふたと走り去って行く。

「何だったんだ、もう……」

「やけに慌てていたけど、すげぇ何だか怪しい……」

パンパンとズボンの汚れを払うジェイノリーと、走り去る男を見て訝しげな視線を向けるサエリクス。


その時、ふと地下鉄の通路に備え付けられているテレビから流れるニュースに目が行く2人。

『次のニュースです。つい先程、19番アベニューのコンベンションセンターで発砲事件がありました。

現場からは大量の現金と1枚の小さいサイズの絵画が盗まれ、犯人は現在も逃走中との事です……』

そのニュースを見た瞬間、サエリクスはさっきのバッグの男の後を追いかけていた。

「お、おいどうしたんだサエリクス!?」

「あいつだ……さっきの男だ!」

「え?」

「今のニュースだよ!!」


走りながらも、先程のバッグの中身の事をジェイノリーに話すと彼も納得した表情になった。

「分かった。それじゃあ俺は警察に電話する」

スマートフォンを取り出してバーチャシティ警察に電話をしながら、サエリクスと共にさっきのバッグの男が

走り去って行った方向にジェイノリーも走って行く。

幸い昼時でまだまだ人の往来が多く、バッグの男の姿をすぐに視界に捉える事が出来た。

「居た、あいつだ!!」

「待てサエリクス、ここは尾行をしてみよう」

男を捕らえようとするサエリクスを引き止め、ここは勝負に出ない方が良いと冷静な判断を下すジェイノリー。


だがそんな2人の尾行を、周りをキョロキョロト警戒していた男はどうやら気がついてしまった様で

2人を引き離す為に一気にスピードを上げる。

「……気づかれた!」

「くっそ、逃がすかよ!」

当然2人のヨーロッパ人もその男を追いかける。男は改札を飛び越えてヨーロッパ人コンビが出て来た

ホームに向かって降りて行くので、2人もその後を追いかけて行く。

「警察は!?」

「今こっちに来る!!」

電話をしたままのジェイノリーがそのまま走って行き、ホームに男を追い詰めた。


「さぁて、もう袋のネズミだぜ?」

「観念するんだ、諦めろ」

だがホームに追い詰められた男はバッグを放り投げたかと思えば、いきなりMP7マシンガンを背中から

取り出して2人に向かってぶっ放して来る。

「っ!?」

「うお!」

咄嗟に2人も緊急回避の横っ飛びで避け、サエリクスよりもアクロバティックな動きを得意とするジェイノリーが

そのまま走り回って男の狙いを自分に向ける。その間にサエリクスは男が放り投げたバッグを男に放り投げる。


すると一瞬男の攻撃が止んだ。

そこを狙って思いっ切りスライディングをかまして男の足を払うジェイノリーと、そこに飛び掛かるサエリクス。

が、飛び掛かって来るサエリクスを転がってかわして素早く立ち上がった男は再びマシンガンを構えようとした。

「ふっ!」

しかしそんな事はとうに予測済みだったジェイノリーは、長年の経験で培った正確無比のコントロールのキックで

男のMP7マシンガンを弾き飛ばし、そこからテコンドーの要領で派手な動きながらもきっちり男を追い詰める。

その間にサエリクスはバッグを回収し、ホームの階段下に向かって放り投げる。


盗難品の安全を確保し、ジェイノリーに加勢に向かうサエリクスはそのジェイノリーのキックの隙を補うかの様に

膝から滑り込んで行き、彼のキックを交わし続ける男の膝にシラット特有の膝の裏を目掛けるパンチ。

「ぐっ!?」

それにより膝をついた男の顔面に、今度はボクシングと空手で培った正確なストレートパンチを叩き込む。

クリーンヒットしたそのパンチによって背中から倒れ込んだその男に再び飛び掛かり、今度は素早く男を拘束

する事にサエリクスが成功した。

「ふぅ……どうやら警察も来たみたいだぞ」

ホームに続く階段の上を見て、繋がりっ放しだった電話を切ったジェイノリーが独り言の様に呟いた。


「……どうやら、御前達とも因縁があるみたいだな」

やって来たのはローカルポリスだけで無く、あのドラゴンの時の事件で世話になったこの

バーチャシティの2人の刑事であるレイジとスマーティも一緒だった。

「俺達も?」

レイジの言葉に違和感を覚えたサエリクスが質問する。

「ああ、実はだな……」

スマーティが、今日の朝にバラリーとアイトエルと出会った事、それから以前にも同じく

ドラゴンの事件で関係を持っていた日本人達や北アメリカ大陸人達と出会った事も全て

特捜課のオフィスでサエリクスとジェイノリーに話したのである。


「ああ、あいつ等もここに来たのか……」

「あるんだなー、こんな偶然が」

事情聴取の為に第2分署の特捜課のオフィスまでやって来たヨーロッパの2人は何とも言えない

表情を浮かべる。そんな2人を見て、レイジが尋ねたい事を思い出して口に出した。

「そう言えば、そっちのリーダーは今日は居ないのか? ほら……ドイツ人の」

「え? ああそう言えばすっかり忘れてた。今日は一緒に来てるよ」

そう答えたサエリクスがスマートフォンで連絡を取ろうとしたが、ハリドのケータイに繋がったかと

思えば、それは新たな事件の幕開けとなるのであった……。


Third Stageノーマルミッション 


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