バーチャコップ小説 Third Stageシンプルミッション


2014年11月下旬。バーチャシティに再び「あの」5人が降り立った。

ヨーロッパ各国からやって来たEuropean Union Fightersのイギリス人で

アイトエル・ガエリセン、スペイン人バラリー・ヴェンルティ、フランスからやって来た

ジェイノリー・セイジール、イタリア軍のサエリクス・サウントゥル、そしてリーダーの

ドイツ人刑事ハリド・エンリスだ。今回はイークヴェスの声に呼ばれたとかそう言う

訳でも無く、純粋に旅行でこのバーチャシティへとやって来たのである。

何故またバーチャシティを選んだのかと言えば、ただ単にシーズンで空いている

飛行機がここ行き位しか無かったと言うだけの話だからであった。


せっかくまた5人で5日位のバカンスが出来るチャンスが与えられたのだからもっと

違う所に行こうと思っていたのだが、そうした事情もあって結局はこのバーチャシティ

旅行になったヨーロッパの5人。

大西洋を渡ってアメリカまでやって来たのだが、前回と違って今回はのんびりと観光を

楽しみたいと5人全員が思っていた。

「前回はほんと、大変だったからな」

「ああ。はるばるここまで来てドラゴンと戦って事情聴取と言う建前の尋問されたし」

「とんぼ返りだったし?」

「そーそー。でも今回は違う。声に呼ばれた訳じゃ無いんだからな。それにここは

近未来都市って事で色々なテクノロジーが他の都市に先立って導入されているって話だ」


前回の事を思い出すアイトエル、バラリー、ジェイノリーに続いて、でも今回ばかりは……との

予想をサエリクスが続ける。

「あんな事もう起こる訳が無いだろ。まぁ……この前のモナコの時も酷かったが、今回はそうじゃ

無い旅行になると信じたいもんだ。せっかくEUから来たんだからな」

リーダーのハリドがそうして話を纏め、まず5人はバーチャシティで予約したホテルへと向かう。

今回も自由気ままに見回ってみたいが、前回のモナコの時とはまた違って3グループで行動する事に。

朝早くに辿り着いて3泊の予定で分けたグループは、まずアイトエルとバラリーで変わらず。それから

イタリアとフランスの性格が正反対コンビでサエリクスとジェイノリー、そしてリーダーのハリドは

1人で行動する事になった。


「何かあったらまたモナコと同じ様に携帯で連絡。良いな?」

「ああ分かった」

「余り目立つ事はしたくないな」

「別に目立ち様も無いだろう」

「それもそうか。じゃあ夕方にこのホテルの前で一旦集合な!!」

そうして3グループに分かれて行動する事になったのだが、初日のこの日はアイトエルとバラリーの

コンビに災難が降りかかって来る事になってしまうのであった……。



「で、何処行く?」

「腹ごしらえ。機内食は出たけど足りない」

「確かにな。それじゃユーロをドルに換金してからだ」

そう言い出したアイトエルにバラリーが唖然とした表情になる。

「え? 事前に換金して来なかったのか?」

「前の日の客がややこしい奴でな。それ以外にもスケジュールが立て込んで色々手間取って

換金する暇が無かった。仕方無いだろう」

そうした理由もあり、まずはアイトエルと共にバラリーはホテル近くの換金所へと向かう。


そうして換金をしたのだが、ここで重要な事にバラリーが気がついた。

「あ、やば……」

「どうした?」

「パンフレット部屋に置きっぱなしだった。ホテルまで一旦戻って良いか?」

「おいおい……」

全くしょうが無いなとアイトエルは思いつつも、時間はたっぷりあるのでホテルへと戻る2人。

しかしこのホテルに戻った事が、2人が事件に巻き込まれる切っ掛けになる。


「あったあった。良し、行こう」

パンフレットを部屋で見つけて再び外へと出ようとしたのだが、その瞬間バタバタと騒がしい音が

聞こえて来た。

「何だ?」

「10人位か? ……いや、もっと居るかな」

アイトエルがそう漏らした次の瞬間、今度は電気ミシンの様な音の細かい銃声が聞こえて来た!

「うおう!?」

「な、銃声!?」


2人は咄嗟にドアをギリギリまで閉めて外の様子を窺う。

「どうだ……?」

「ここからじゃ良く分からないが、恐らくまたまずい事に巻き込まれた気がする」

「またかよ」

はぁーっと頭に手を当てて首を横に振るバラリーと、メンバー最年長らしく冷静に外の様子を

窺って状況判断に勤めるアイトエル。

「今外に出るのは危険そうだな」

「ああ、俺等……呪われてるのか?」

「神は俺達にむごい事ばかりするもんだな」


そのまま銃撃戦と思わしき音が終わるまで待ち、何も聞こえなくなった所で慎重に様子を

窺いながら廊下へと出る2人。

すると新たにまた人間の足音が聞こえて来たので慌てて通路の角から様子を窺う。

「また新手か?」

小さな声で尋ねるアイトエルに、バラリーは首を小さく横に振る。

「いや警察だ。しかもほら、あのイークヴェスの時の……」

「イークヴェスのってまさか……」


バラリーの言う通り、廊下に姿を現したのはあのイークヴェスの声が聞こえて来た時に

郊外の軍事基地跡まで先導して貰った刑事2人組であった。

最初に2人の存在に気がついたのは茶髪の大柄な刑事、レイジだ。

「あれ……あ、あんた等は……」

「今日は観光で来たんだが、この騒ぎは何なんだ?」

ヨーロッパの2人はこの町の刑事の彼等に何があったのかを聞いてみる事に。

「このホテルの中で観光客を装った奴等が武器取り引きをしているとの情報だ。

あんた達の部屋は何処だ?」

金髪の刑事スマーティに尋ねられ、アイトエルが後ろを親指で差す。


「この先なんだが、俺達は引っ込んでいた方が良いよな?」

当然の行動を提案した筈のアイトエルだったが、レイジから思わぬ一言が。

「いや、この先はまだまだ敵が潜んでいる筈だ。俺達が通って来たルートはもう全て

倒しているから、このままあんた達もエレベーターを使って下へと逃げてくれ」

「えっ!? 増援の心配は?」

「大丈夫だ。俺達が進路を切り開き、ローカルポリスがバックアップしているからな。下のフロアには

もうそのローカルポリスがわんさか居るから」

バラリーの驚きにスマーティが冷静に対処し、2人に脱出を促す。


そうして脱出を促された2人はレイジの指摘通りにエレベーターを使って下へと降りる。

だがその途中でエレベーターが止まった。

「ん? 誰か乗って来るのか?」

そんなアイトエルの声に反応するかの様にエレベーターの扉が開いたが、そこから現れたのは何と

196センチのアイトエルと170センチのバラリーの丁度中間くらいの背丈の武装した金髪ロン毛の

男であった。

そうしてその男が警察の類では無い、そして手にM4ショットガンを持っていると分かった瞬間真っ先に

アイトエルが男に向かって飛び掛かって行く。


飛び掛かったアイトエルはそのまま男を押さえつけようとしたが、男は巴投げを使ってアイトエルの

押さえつけから脱出。

次にバラリーにショットガンを撃とうとしたが、バラリーは銃口が自分の方に向いたと分かるや否や

通路の壁を2〜3歩走って素早く回避する。

そのまま男に飛び掛かろうとするが、これは壁から離れた所で蹴られて失敗。

「ぐえ!」

しかしその後ろからアイトエルのローキックが男のショットガンに炸裂して、そのショットガンはカラカラと

通路に転がって行った。

こうなったらもうやるしか無いと言う事で、そのまま今度はアイトエルが男の襟首を掴んで無理やり

立たせ、そこから男の両腕を取って羽交い絞めにする。


その間にバラリーがショットガンを手にとって男に向かってトリガーを引いたが、空しくカチッと音がしただけで

弾が発砲されない。

(弾切れ!?)

男はその間に激しくもがいて何とかアイトエルの拘束を解こうと頑張っているが、そうはさせる訳には

勿論この状況で行かなかった。だからこそバラリーはショットガンを両手でロングソードの様に銃口側を

両手でしっかりと持って男に向かって走り出して大きくジャンプ。

そのままアイトエルに当てない様に位置を空中から微調整しつつ、ショットガンを棍棒の要領で思いっ切り

男の頭目掛けて振り下ろした。


「ぐおっ!!」

それでもやっぱり上手くは行かなかった様で、アイトエルにもショットガンが直撃してしまったが男には

それ以上のクリーンヒットを与える事が出来た。

ガゴンと凄い音がしたかと思えば、次の瞬間には何とショットガンが男の頭に叩き付けられた衝撃で

バラバラに砕け散って分解されてしまったのである。

つまりそれ位の衝撃が男とアイトエルに襲い掛かったと言う訳で、男はそのまま力無く地面に倒れ込み、

アイトエルはショットガンを叩き付けられた胸を押さえつつもまだまだ元気に動き回れそうであった。

「お、終わった……」

「良し、早くここから出よう。そして観光だ!」

「ああ、勿論だ」

アイトエルに促されたバラリーは勿論それに同意し、まずはホテルの入り口を目指して駆け出して行くのであった。


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