Master'sの巻き込まれ事件編 第5話(最終話)


しかし自分達も逃げ切らない事にはどうしようもないので、どうにかしなければと

思考を巡らせる恵。

すると目の前に線路が見えて来て、またしても丁度良く列車が近づいて来ている。

「……突っ込むのか?」

「それしか無いでしょ、振り切るには!」

冷静沈着な恵らしくも無い判断だな、と和人は思ったがこの際仕方が無い。

列車の目の前をすり抜ける為にある秘策を使うのだ。


そう、それはと言うと起動スイッチがハンドルの裏についている……。

(スクランブルブースト!!)

でっかいシングルタービンがついているので今のままでも317PSは出ているが、

スクランブルブーストでブーストアップする事で一時的に400PSになる。

さっきのドリフトやブロックで無駄にタイヤを使ってしまったので、パワーを上げるしか無いのだ。

「和人さん、掴まっててね!」

ブーストアップのスイッチを押し、今まで以上にS14を加速させながらアクセル全開!!


「な、何を……!?」

バーチャコップの2人も思わず呆然としてしまう。

そんな呆然とする2人の目の前で、S14は見事列車の前をすり抜けて行った。

当然列車が通り過ぎなければ踏み切りを渡る事が出来ないのだが、列車が

通り過ぎた後にはアリストもS14もどちらの姿も見えなくなってしまっていた。

「くそっ、取り逃がしたか!」

「悔しいな……」


悪態をつくレイジとがっかりするスマーティにオペレーターのジャネットから通信が入る。

『今の2台の動きはこちらで補足しています。行き先を指示するから追いかけて行けば見つかるわ』

「あ、ああ、分かった!」

そうしてカマロを再びスタートさせるバーチャコップの2人だったが、そのアリストとS14の行き先として

表示されたのは……。

「え……?」

「ここは……まさか!?」



ダウンタウンの病院へと辿り着いた5人はすぐに集中治療室へと女を急患で運んで貰ったのだが、

その時にストレッチャーに乗せられた女から1つの頼み事をされた。

女は自分の首から下げていたネックレスを外し、それを恵に託してこう言ったのだ。

「これをお湯に浸して警察に渡してくれって……?」

突然の事だったので気が動転しつつも、とりあえずお湯を貰おうとしていた。しかし病院の

スタッフ達は色々患者が多くて忙しそうだったので自分達でお湯を調達すべく一旦病院の外へ。


すると、当然と言うべきか自分達のアリストとS14の前にバーチャコップの2人が待ち構えていた。

「御前達とは因縁があるのかもしれないな。これだけ大きな騒ぎをまた起こして、ただでは済まさないぞ」

レイジが腰のガーディアンKに手をかけながら言い放つ。

だがそれをハールがネックレスを見せながらストップをかけた。

「待って。まず先に僕等の話をまず聞いてくれないか?」

「話だと?」

スマーティが訝しげに尋ね、ハールが口を開いた。


その後、話を聞いたバーチャコップの2人は5人と共に第2分署へと戻ってネックレスをお湯に浸す。

するとネックレスのチェーン部分が見る見る変形し、アルファベット状になったではないか!

「こ、これって!」

「間違い無い、これは大きな手がかりだ!!」

そのアルファベットは、今回の一連の事件を大きく動かす物であったらしい。

2日後にその女の治療が終わってから聞いた話だったのだが、あのネックレスのアルファベットは

港で遭遇した銃撃戦を繰り広げていた謎の人物達、そして自分達に突っかかって来た色々な車の

乗員達が所属している組織が大量に武器を隠している場所の暗号だったのだ。


あの女は元々武器の密輸組織の一員だったらしいのだが、組織に嫌気がさして逃げ出した。

しかし組織に見つかってしまい、港に追い詰められた所で組織の人間が警官隊と銃撃戦を始め、

間一髪死ぬ事だけは避けられてはいた。

だが口封じの為に殺そうとされ、あれだけの銃弾を食らっても逃げ続けた挙句にアリストとS14の間に

身を隠していたのである。

そんな時に5人に運良く発見されたのだが、女の姿が見えなくなっていた事、それからアリストとS14が

街の方に走り去るのをまだ逮捕されていなかった組織の人間が見つけて、5人もろとも女を

完全に抹殺しようとしてあの謎の車達が突っかかって来ていたと言う訳であった。

結果的には恵や流斗、それからパトカー達に全員潰されてしまった訳だったが。


そしてその暗号が示した場所は、何とあの展示会が行われていたコンベンションセンターだった。

コンベンションセンターの地下に巨大な武器貯蔵庫が造られており、そこから密輸された武器を

大量に押収する事が出来たのである。

結果的に5人の行動が事件の完全解決へと繋がった訳であった。

この話を全て聞き終わった時、5人は何とも言えない複雑な表情になっていたのは言うまでも無い。

自分達があれだけ騒ぎを起こした結果がこうして事件の解決に成ったので、喜んで良いのか

どうかが凄い微妙だったからである。


バーチャコップを始めとする警察でもその点が考えられたが、結果的に5人の件は今回は

不問と言う事になった。なので当初の帰国日程を完全にオーバーしてしまったが逮捕される等

何事も無くて良かったと5人は胸を撫で下ろす。

当然、フォーミュラDのバーチャシティラウンドには出られなくなったのは言うまでも無かった訳であるが

もうそんな事は5人にとってはどうでも良くなっていた事でもあった。

今回の事件の解決は自分達のおかげである、と胸を張って日本に帰れる事になったのだから。


Master'sの巻き込まれ事件編 

挿入歌:Breakin' Out/Ace


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