TC小説2作目
(時代設定は2007年6月くらいです。なのでキャラの設定もそれに合わせてます)
登場人物紹介
プロローグ:ミッションスタート
イギリスロンドン郊外のデパート。その入り口前に、特殊部隊の面々が到着した。
対テロ特殊部隊:『STF』(Special Tactical Forceの略で、ロンドン警察の誇る特殊部隊)第1小隊だ。
彼らは今回、イギリスで起きた過激派によるデパート占領事件の解決に向かうために来たのだ。
デパートの前には警官隊や何人ものTVレポーター、そしてこの騒ぎを聞きつけた野次馬達で混乱の模様を呈していた。
「よし、正面玄関から突入する」
クロード小隊長指揮の下、武装強盗集団鎮圧作戦が、幕を開けたーー。
ステージ1:逃げ遅れた男
エリア1
正面玄関から突入した小隊は、マシンガンと盾を構えて進み、こちらに向かってくる強盗集団の下っ端を撃退する。
さすがに対テロ特殊部隊と言われるだけのことはあり、苦もなく殲滅していく。
このデパートは吹き抜けの4階建てで、横に長いために敵の隠れる場所も多いのが特徴だ。
それ故、どこから不意打ちされるかわからない。そう、例えば…。
(罠かっ!)
一斉に2階からサブマシンガンやショットガンで攻撃してくる敵兵士。こういうことは日常茶飯事である。
クロード達は散開し、盾で防御してから容赦なく反撃。難なく切り抜けることに成功した。
エリア2
小隊は止まったエスカレーターを上っていき、2階部分にたどり着いた。
(ここは洋服売り場や…雑貨屋もあるな)
と、その時、どこからか言い争っているような声が聞こえてきた。
「向こうだ。慎重に進め!」
小隊は慎重にその声のする方へ歩いていく。
そこにいたのは、テロリストの男にマシンガンを向けられている1人の男だった。
水色の髪をした東洋人。年齢は30代といったところか。
小隊はそっと、側の洋服が沢山掛かっている所に隠れて様子を窺う。
「いつになったら俺は解放されるのかな?」
「黙れ!」
「やれやれ……」
長い時間拘束されているようで、男の顔には疲労の表情が浮かんでいる。
それでも微笑がうっすら見て取れるのは気のせいだろうか。
しかし次の瞬間、男はとんでも無い行動に出る。
「あ…」
男はマシンガン兵の背後に目を向けて声を発する。その仕草にマシンガン兵は思わず背後に目がいってしまう。
そこを狙って、男はマシンガン兵のマシンガンを不完全な回し蹴りで何とか吹っ飛ばすことに成功。
「な!?」
「そこだ!」
続けて男は間髪入れずにマシンガン兵の股間めがけ前蹴り。怯んだところに首を腕で固めて締め上げる。
あまりの展開に呆然としていた小隊の面々だったが、このままでは男が危険だ。
まだ敵か味方かもわからないので、素早く回りを取り囲み2人ともホールドアップさせることに。
エリア3
「そこの2人! 両手をあげてこっちを向け! ロンドン警察だ!」
「え…?」
「くそっ!」
マシンガン兵は男を突き飛ばしてマシンガンを構えたが、その前に小隊が先制攻撃を仕掛けて終了した。
さっきの男は素直に手を上げる。
「はあ……一難去ってまた一難ってのはこの事なのか……?」
はふぅ、とため息をついてそう呟いた男に、小隊メンバーが駆け寄る。
「よし、おい、武器を持ってないか確認だ」
「はっ!」
部下に男のボディチェックをさせるクロード。そして何も出てこないことを確認し、周囲に敵がいないことも確認。
「あんたに聞きたいことがある。まだ敵か味方かという保証はないからな」
「あ、ああ。わかったよ」
こうして、小隊メンバーは男から話を聞くことになった。
「あんたら…一体何者なんだ?」
「俺はこのデパートの客。宮島 浩介(みやじま こうすけ)だ。よろしく頼む。……あれ?」
宮島が、クロードの上腕部分についているエンブレムに気が付いた。
「STF…何だ、そうか。そう言うことだったのか」
「え?」
「STFはロンドン警察の対テロ特殊部隊だ。そうだろ隊長さん?」
何故知っているのか、という疑問が真っ先に思い浮かんだが、正体を見破られているからには頷くしかなかった。
「そうだが」
「やっぱり……。STFといったら有名だ。このイギリスに旅行に来るにあたって、色々と興味があって調べたからな」
「なるほど」
この宮島浩介は旅行者で、運悪く偶然巻き込まれてしまったようだ。
ここでいつまでも固まっていると敵に発見される可能性が高いので、クロードは部下に避難させるよう命じる。
「よし、とりあえず君達2人はここにいては危険だ。我々が後は何とかする。部下をつけるから、一刻も早くここから脱出するんだ!」
「ああ、わかった!」
ステージ2:第2ラウンド
エリア1
「よし、では行くぞ! 避難は任せる!」
宮島は部下2人に連れられ、避難経路へと走っていった。
自分たちは第2ラウンド、スタートだ。
小隊は2階の敵を一掃し、3階へ駆け上がっていく。上に上がるにつれて、何だか敵の攻撃が激しくなってきた。
(上にリーダーの奴が居る可能性が高い。守りを固めていると言うことは、それだけ守りたいものがあるということだろう)
敵の数は多いが、こちらの方が少人数なため動きやすい、という利点がある。
そのため敵を攪乱(かくらん)しやすいのだ。
クロードはふぅ、と息を吐き、残る3階の敵を殲滅しに動き出した。
エリア2
(どこだ……どこにいる!?)
3階の敵を全て倒し、残るは4階だ。小隊を引き連れて4階へ駆け上がるクロード。4階ではさらに攻撃が激しくなってくる。
必至に盾で防御しては反撃を繰り返す小隊。
(数で押してくるだけではなく、攻撃のタイミングもきちんと測ってきているとは…なかなかだ!)
敵ながら感心するクロード。実際1人1人がきちんとタイミングをそろえて、絶妙な連係プレイで向かってくるのだから。
(だが俺達はロンドンの誇るSTFの部隊だ。やられるわけにはいかない。悪いが倒れてもらわなければ困るんだ)
心の中で敵に対してそう呟くと、盾をどけてマシンガンを連射するのであった。
エリア3
4階も約半分は制圧した。残りは後半分。
クロードはラストスパートをかけるため、気を引き締めた…その時だった。
「ふふ…STFか」
声のする方を小隊メンバーが見ると、長身の男がMP5を片手に立っているではないか。
おそらくこの男がリーダー格であり、ヘリか何かを呼んで逃げるつもりなのだろう。絶対に逃がすわけにはいかない。
クロードはマシンガンを構え、叫んだ。
ステージ3:救出!
エリア1
「動くな! そこで止まれ!」
よく見ると、もう一方の手には長い剣を持っている。
「お前がこの事件の首謀者か!?」
「ああ、俺がリーダーだ。ここまでやられちゃあな…。お前ら全員、生かして返すわけにはいかねえ!」
「目的は何だ?金か?」
「いいや、そんな物に興味はない。俺の目的はこのデパートへの復讐だ。俺は元々このデパートの副社長をやっていたんだよ。
だがな、商談を失敗したくらいでいとも簡単にクビになっちまったんだ!」
(失敗したくらいって…。それでかい取引だったら当たり前だろ!)
何言ってるんだコイツ、とクロードは心底思う。
しかし男の演説は続く。
「それだけじゃない。ここの社長はケチで傲慢だ。それ故に、国内の各支店でも俺と同じような恨みを持っている奴が沢山いるんだよ!
給料はメチャメチャ低いし、そのくせ夜遅くまで強制的に働かされるし!」
「でも、だからってこのデパートを乗っ取るような真似をするのか!」
「占拠した理由はそれだけじゃない。実は、このデパートの4階にはイギリス政府が敵の目を欺くためにわざわざ隠した機密軍事ファイルが眠っているんだよ。
それを奪うのが、本当の目的だ! それを犯罪集団に売り飛ばせば……、俺はもう、あんな惨めな思いはせずに済むんだ」
そういって、男は不敵に笑みを浮かべた。
しかし、クロードもまだ負けてはいない。
「貴様の気持ちはよくわかる。だけど、俺だったらこんなバカな真似はしない。このデパートよりも大きなデパートを建てて、その社長を見返してやるがな!」
「勝手にほざいてろ! こっちにはまだ切り札もあるしな!」
「切り札だと?」
男の言葉に疑問を持ったクロードだったが、その言葉は最悪の事実となって目の前に現れた。
「……!」
「うぐ……」
何と宮島が…捕らわれている!? ということは、あの部下達はやられてしまったのだろう。
「さあ、戦いを始めようぜぇ!?」
「くっ…その目を覚まさせてやる!」
エリア2
リーダーは部下たちを呼び寄せ、応戦させる。その隙に逃げ切るつもりなのだろう。
(こんな雑魚にかまっている暇はない。一刻も早くあいつに追いつかなければ!)
しかし焦れば焦るほど狙いがぶれる。
(ダメだ落ち着け…今やるべきことは、この雑魚を一掃することだ!)
気を取り直して、まずは全員一掃してからではないとあの男を追えないと考え直す。
一拍おいてクロードたちもさらに散開し、1人、また1人と倒して男に接近していく。
「おい、待て!」
(ウソだろ…! いくらなんでも来るのが早すぎる!!)
しかし相手はクロード1人のみ。どうやら他の部下はまだ応戦中らしい。後ろが吹き抜けになっている通路で、事実上のタイマンバトルが始まった。
エリア3
「その人を放せ!」
「はっはっ! 1人で来てそう言うとはな! こういうのは放さないのがお約束なんだ。さらばだ!」
「くっ!」
1歩、また1歩とリーダーはクロードから離れていく。
だが次の瞬間、予想外の事が起きた。
「…あんたが言ったことは1つだけ間違ってるが…」
「何だと?」
「何?」
宮島の言葉に、思わずリーダーもクロードも声を上げた。
「俺もいる!」
その声と同時に、宮島渾身のエルボーを男の顎目掛けて繰り出した…が、いとも簡単に止められた。
「なめた真似…!」
しかし、それがクロードにとっては絶好のチャンスになった。素早くリーダーに近づいて飛び蹴りを繰り出し、剣を弾き飛ばす。
間髪入れずにボディブロー1発、膝蹴り2発を入れ、足払いをかけてリーダーを床に倒した。
「こっちだ!」
「うわっ!」
悲鳴を上げて宮島はクロードの方に向かってきた。リーダーはその隙に剣を拾って構えたが…!
「…しつこいぞ!」
クロード渾身のミドルキック炸裂。クリーンヒットしてリーダーはバランスを崩す。
「くうっ!」
そして、何と宮島が渾身の体当たりをリーダーにかました!
「うぐっ!」
リーダーは吹っ飛び、後ろの吹き抜けの穴に真っ逆さまに落ちていった。
「う…わあああーーっ!!!」
彼の体は1階にある銅像の上に直撃し、銅像は砕け、彼は事切れた。
「はぁ…はぁ…」
「や…やったか!」
これで、また1つの事件が解決した。この後、小隊メンバーが正面入り口のドアを開け、このデパートを開放した。
そして宮島も、テレビ局や新聞社からインタビューも受けた。
その後はロンドン警察で簡単な事情聴取もして、小隊メンバーのトラックで空港まで送ってもらった宮島。
「ありがとう、クロード」
「…いいって。当然のことだ」
「…もう出発の時間だ。じゃあ…俺はこれで」
「じゃあな! また会おう!」
宮島は搭乗口へ消えていった。
小隊メンバーは、宮島の乗った飛行機を空港の外から見えなくなるまで眺めていた。
完