Be Legend〜ジョルジョ・ブルーノ&エヴァン・ベルナール
プロローグ:マレーシアにやって来た5人組
東南アジアのマレーシア。ITテクノロジーが年々進化している
この国の首都で、東南アジア有数の世界都市であるクアラルンプールに
2014年の10月下旬にやって来たのがこの5人であった。
「ひゃー、やっぱりマレーシアは暑いな!!」
「熱帯気候だっけ?」
「典型的な熱帯雨林気候だな。4月と11月前後には雨が多いぜ」
「って事は丁度今の時期だな?」
「ああそうだ、それじゃ早速あそこへ行こう!!」
日本は東京からやって来た、かつて首都高と言うステージで名を馳せた
5人の走り屋である椎名連、ハクロ・ディール、穂村浩夜、橘陽介、
そしてリーダーの坂本淳でチーム「Be Legend」だ。
このBe Legendの5人は久しぶりに海外旅行をしようと言う事で、今回
マレーシアへとやって来たのであった。
車好きが集まったチームなので、淳の提案でまずはクアラルンプール
国際空港の近くに存在しているセパン・インターナショナル・サーキットへ
向かう事にした。
ステージ1:セパンサーキットにて
エリア1
セパン・インターナショナル・サーキットはF1世界選手権マレーシアグランプリや
ロードレース世界選手権マレーシアグランプリが開催され、更にはスーパーGTも
2013年まで行われていた事で有名であり、東南アジアのハイスピードサーキットと
して世界的に有名であるのだ。
そんな場所に車好きの5人がやって来たので、その5人のテンションはどんどん高まって行く。
「おおー、ここがセパンだな!」
「首都高よりも道幅が広い……って当たり前だけど」
「あー、車持って来れば良かったぜ。走ってみたい!」
5人は自分達の車を持って来なかった事を若干後悔していたが、その中で冷静な性格の
ディールが何かセパンサーキットの違和感に気がつく。
「……変だ」
「え?」
「今日はフリー走行の日だってスケジュールには書いてあったけど、営業時間内なのに
誰も走っていないんだ」
「休憩時間とかじゃないのか?」
連の問いかけに、ディールは首を横に振ってある場所を指差した。
「だとしたら、ピットに1台も車が見当たらないのはおかしいだろう。それ所か駐車場にもだ。
サーキットなら車の1台や2台は必ず居ても良いと思うんだがな。それも地方のミニサーキット
なら兎も角、こんな国際的に有名なサーキットなのに」
そう言われてみれば確かにこの国際サーキットがこんなに静かで人気が無いのは変だ、と言う
疑問が段々と他の4人の頭にも浮かんで来た……その時だった!!
エリア2
「んっ? んんっ!?」
「お、おいおい……」
バラバラと何処からともなく大量の武装した物々しい雰囲気の集団が、セパンサーキット内に
ワラワラと集まり始めた。
それをサーキットの駐車場の近くのフェンス越しに見ていた5人は驚きを隠せない。
「何だ? 何かのイベントか? アトラクションの一環か?」
それにしては何か物々しいぜ。緊張感が凄い……」
もしかしたら……と嫌な予感が5人を取り巻いて行くが、どうやらこの5人の予感は
的中してしまった様である。
銃声が響いて来たかと思うとその武装集団がどんどん倒されて行く。
演技では無さそうだ。現に倒れてピクリとも動かない武装メンバーもチラホラ見受けられる。
「ちょ、これってまずいんじゃねぇのか!?」
「あ、ああ……とりあえず現地警察に連絡を……!!」
とにかくフェンスの傍に居ては自分達も巻き込まれかねないし目立ってしまうので、一旦
この場から離れつつ警察に電話をする事にした。
エリア3
とにかく5人は走ってセパンサーキットから離れ、息を整えてから警察へと電話をかけようとした。
しかし公衆電話が見当たらない……。
「な、何で公衆電話が無いんだよ!?」
「知るかそんな事!! ケータイは?」
「日本でしか使えない……俺のは古いから」
「あーじゃあ俺のを使う!!」
淳にそう言って浩夜が自分のケータイを取り出そうとしたのだが、そんな彼の耳が何か
奇妙な音をキャッチした。
「ん? 何だこの音?」
「お、おいあれ!!」
陽介が指差す方を見てみると、そこには1機のヘリコプターが空を飛んでいた。
……のだが、そのヘリコプターは何と5人の方に向かって突然進路変更して突っ込んで来た!!
「うおあ!?」
「何だよぉ!?」
突然突っ込んで来たヘリコプターを5人はかわしたが、ヘリコプターから今度はマシンガンによる
銃撃がやって来る!!
「え、お、おわぁ!!」
「うおおっあ!?」
自分達は素手だしヘリコプターに飛び乗る事も出来ない高さなので、今は逃げ回るしか無い。
しかしこのまま何も出来ずに逃げ惑って、終いには力尽きて殺されるだけなのか……と
5人が思っていた矢先に、救いの手は差し伸べられた。
また何処からとも無く空気を切り裂く様な音が聞こえてきたかと思うと、ヘリコプターに何かの弾丸が
撃ち込まれて行く。撃ち込まれた弾丸はたった2発だったが、その弾丸が打ち込まれた瞬間に
ヘリコプターが爆発炎上して力無く地面へと墜落して行くのだった。
ステージ2:クアラルンプールの市街戦
エリア1
「……へ?」
「な、何があったんだよ……」
呆然とするBe Legendの5人に懐かしい声が掛かった。
「ふぅ、間一髪だったな!」
「大丈夫か、あんた等……って、あんた等は……!?」
声をかけて来たのは、あのドラゴンの事件の時以来となる国際諜報機関VSSEのエージェントである
ジョルジョ・ブルーノとエヴァン・ベルナールではないか!!
「あれ、あんた等は確かVSSEって所の?」
「ジョルジョにエヴァンだったか?」
「そうだ。だけど何であんた等はこんな所に居るんだよ?」
エヴァンがグレネードランチャーを肩に担ぎながら5人に問いかける。良く見ればジョルジョも
同じ物を持っている。ヘリコプターはこれで墜落させたのであろうと検討が5人はついた。
「俺等はマレーシアに旅行に来たんだよ。でもまだ初日で来たばっかりなのにこの有様だ。
何なんだよ、一体何があったんだ? このセパンサーキットで」
そう連が問いかけると、ジョルジョが気まずそうに口を開いた。
「このサーキットで、大掛かりな武器の取り引きが有ると言う話を聞いたんだが
どうにも様子がおかしい。何だか取り引きの規模が小さすぎるんだ。
兎も角そう言う訳だからこの辺りは危ない。あんた等も早くここから逃げろ」
「あ、ああ……分かった」
ジョルジョに指示されてその場からとっとと逃げる事にした5人。近くの乗り合いバスの
停留所まで走って、そこでバスに乗ってクアラルンプール市内を目指す。
「何だかVSSEとは縁があるなぁ」
「嫌な縁だけどな」
陽介のぼやきにディールがそう返答し、一先ずは危機が去った。
エリア2
クアラルンプールの市街に辿り着いた5人は長旅の疲れとさっきの襲撃事件もあって
足早にホテルへとチェックインを済ませる。
「色々回りたい所だけど、どうする?」
「ああー、そうなんだけどまたさっきみたいな事、起きないのか?」
「恐らく大丈夫だとは思う。VSSEは一筋縄じゃ潰れそうに無い相手だろうし」
不安そうに問い掛けて来た浩夜に、連がなるべく落ち着いて不安を和らげる。
「だったら色々回ってみよう。ブキッ・ビンタン地区に行きたいし、KLCC公園も。
それからKLタワーやその近くのペトロナスツインタワーも行こうぜ」
淳の提案によって、5人はクアラルンプールの観光を楽しむ事にした。
せっかくはるばるマレーシアまでやって来て、ヘリコプターの襲撃にあったままで
帰る訳には絶対にいかない。
そんな思いで、5人は外出準備を整えてクアラルンプールの観光に出発するのであった。
エリア3
「うっひゃー、やっぱり首都だけあって結構賑わってるな」
「東南アジアでも有数の都市だからな。ジャカルタやバンコクにも負けてないぜ」
マレーシアの首都として、そして若者が集う町として知られているのがブキッ・ビンタン地区だ。
クアラルンプール随一の繁華街であり、ホテル、巨大ショッピングセンター、レストランが立ち並ぶ。
5人が泊まるホテルもここにあり、ベルジャヤ・タイムズ・スクエアに今はやって来たのだ。
ここでもテーマパーク、ホテル、ショッピングセンターが存在している賑わいの街だ。
この場所を一通り見たら、今度はペトロナスツインタワーを観光に向かう予定……だったのだが
1本別の街路へと入ったその時だった!!
「うおっと!?」
いきなり目の前から、何とあのセパンサーキットで見かけたのと同じ武装集団が再び5人の
目の前に現れた!!
「な、何だよぉぉぉ!?」
「くっそ、またこれかよ!? 一体何だってんだ!!」
またVSSE絡みの奴等かと思いつつも、この辺りは危険だと思いすぐさま引き返した5人は
ペトロナスツインタワーに行く為に駅へと避難する事に。
しかしその途中で厄介な敵に遭遇。ハンドガンを乱射しつつ、時には手榴弾をバンバン
遠くの方から投げ付けて来る危険度の高い敵だ。
それも停まっている車の間から投げ付けて来たり撃ったりして来るので厄介過ぎる。
「くそ、これじゃあ迂闊に手が出せない!!」
「俺等は放物弾を受けにここまで来たんじゃねぇんだよ!!」
だが、そんな淳の一言に陽介が反応した。
(放物弾……あ、そうだ!!)
何を思ったか陽介は浩夜に耳打ちをして、手榴弾を投げて来る敵の方へと2人で走る。
「お、おい何処に……!!」
そんなディールの声も無視して、走り出した2人が取った行動はこうだった。
まずは手榴弾が投げられるのをある程度予測して、浩夜が地面に滑り込みながら
四つん這いになる。そしてその後ろからフリーランニングの要領で陽介が浩夜の背中を使って
ジャンプし、手榴弾を何と空中でキャッチ。
そうしてそのまま敵の方へと投げ返せば、当然敵の元へと向かって来た手榴弾が爆発した。
ステージ3:ペトロナスツインタワーへ
エリア1
「全く、無茶をするもんだぜ」
「でもあれしか思いつかなかった。ハンドガンで的にされてたら終わりだったけど」
「あー、心臓に悪いぜ……」
ペトロナスツインタワーへと向かう地下鉄の中で、一息ついた5人はそんな会話を交わしながら
地下鉄に揺られていた。
今地上ではまだ戦闘が続いているんだろうか、と思いつつも自分達には全く持って関係が
無いので兎に角巻き込まれない様に遠くまで逃げるだけである。
なので当初の目的を変更し、先にペトロナスツインタワーへと向かう事にしたのである。
20世紀の超高層ビルとしては最も高い、高さ452メートルの88階建てだ。
タワーの下はショッピング等の複合施設でスリア・クアラ・ルンプール・シティ・センターとなっており、
そこには伊勢丹や紀伊國屋も入っている。ツインタワーとしては世界一の高さなのだ。
そんなツインタワービルへと観光にやって来た5人だったのだが、まずは上へと上がらずに
スリア・クアラ・ルンプール・シティ・センターで買い物だ。
「あー、結構色々なショップがあるぜ」
「日本でも良く見かけるショップもあるけど、やっぱり国が変わると雰囲気も違うもんだな」
そんな雰囲気を楽しみつつ幾つか買い物をして、そして上へ5人は上って行く。
今の時間帯はどうやら人が少ない様だが、それでも観光客は多い方らしい。
「やっと観光らしくなって来たぜ」
「ああ、これこそ旅行、これこそ海外って感じだな」
「本来ならこれが最初からそうだった筈なんだがな」
会話を交わしつつ、一行は42階にある両方のタワーを繋ぐスカイブリッジへ。
本当は朝早くに整理券を貰わなければ入れないのだが、今日はどうやら利用客が
少なかったらしく入る事が出来た。
エリア2
スカイブリッジでは、15分位の時間が与えられてその制限時間の中で写真を撮ったり
する事ができる。
だがこのラッキーな出来事は、実はラッキーでも何でも無かったらしい。
違和感に気がついた連がそれを口に出した。
「……あれ、ここって観光名所の1つの筈なのに何で俺達以外誰も居ないんだ?」
「何だか凄く嫌な予感がするぜ……」
「お、おいよせよそんな」
だが浩夜の嫌な予感をディールが止めたとたん、それはどうやら的中してしまったらしい。
いきなり自分達がやって来たタワーとは別のタワーの方から派手な爆発音がしたかと思うと、
黒煙と熱風が5人の身体を包み込んだ。
「ぶわっ!?」
「何……げほ、げほほっ!!」
その煙の中から今度はまたしても、市街地やセパンサーキットで見かけた武装集団が
やって来たのであった。
「くっそおおおおお!!」
「うおおおおお、もう許さねぇええええええええええ!!」
何かに切れたディールと連が発砲される前にスライディングとタックルでそれぞれハンドガンと
ショットガンを奪い取り、それからマシンガンを落とした敵も居たのでそれを淳に投げる。
そのまま映画の見よう見まねで敵をどんどん撃って倒して行き、弾が無くなれば敵の武器を
奪い取って再び発砲する。
それに残りの浩夜と陽介も加わって、一気にここはスカイブリッジの死闘と化した。
隠れる場所が無いので撃たれる前に打つ、そして1箇所に留まらずになるべくしゃがんだり
低い体勢で撃つ事を心がけ、5人は何とか何とかと言う形で武装集団を倒して行った。
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何発か銃弾のかすり傷を貰ってしまったものの、それでも致命的なダメージは受ける事無く
黒煙の中から現れた武装集団を全て5人がかりで壊滅する事に成功した。
「はぁ、良かった……」
一息つく連だったが、それに対して淳が足音を耳でキャッチする。
「待て、まだ何人か居るぞ!!」
どうやらそれは複数人らしく、その淳の言葉で5人は一斉に銃口を煙の中に向かって
向けつつ身構える。
だが、そこから現れたのは武装集団では無かった。
「……おっ?」
「あ、あんた等……何故!?」
煙の中から現れたのは、セパンサーキットで出会ったVSSEのジョルジョとエヴァンではないか。
「これはだな……ちょっと色々。それにしても君達も何でここに?」
そうディールが尋ねると、ジョルジョとエヴァンはお互いに顔を見合わせてブリッジの状況を確認する。
「何だか色々お互いにありそうだが、一応事件はこれで解決だ。タワーの外へ出ながら話そう」
「ああ、分かった」
ジョルジョにそう言われて、5人はVSSEの2人と一緒にタワーの外へと歩き出す。
VSSEの2人が言うには、このペトロナスツインタワーに入っている複数のオフィスの幾つかが
今回の主犯の根城として利用されていた様で、そこに突入したまでは良かったが
残党が事件の情報を持ってこのブリッジを渡って逃げようとしていたらしい。
しかしそこでBe Legendの5人と銃撃戦になり、全員逃がす事無く事件を解決と言う事に
繋がったと言う事であった。
「と言う事は結果オーライで、俺等が事件を解決しちゃったって事か?」
「そう言う事になるな。偶然とは言え助かった。改めて礼を言おう」
ジョルジョとエヴァンはBe Legendの5人と握手を交わして健闘を称えあい、こうして
マレーシアのクアラルンプールでの事件は幕を閉じたのであった。
完