Destruction Performers〜キース・マーティン&ロバート・バクスター


プロローグ:インドネシアにて、開戦

2014年9月下旬。最近はシラット映画「ザ・タイガーキッド」や

「ザ・レイド」シリーズで有名になっているインドネシアの地に5人の

日本人、「Destruction Performers」のメンバーが旅行にやって来た。

翻訳家で剣道家の三浦由佳、シュートボクサーのレーシング

メカニックである宮川哲、柔道家でもあるホストの白井永治、シラットを

20年以上学んでいる藤尾精哉、そしてありとあらゆる武術を学んだ

Destruction Performersのリーダーで、由佳の格闘戦の師匠でもある

百瀬和美の5人である。


「やっぱりインドネシアは暑いわね」

「ああ本当だな。蒸し暑いと言うかさー」

「でもたまにはこう言うのも良いかもね。日本だとこれから秋だし」

「日本の残暑はまだまだ厳しいけど、それとは違った暑さだぜ」

「厚着して来なくて良かった」

永治は某ロボットアニメのコスプレではなく、赤いTシャツに白の

ジーンズと言う至って普通の服装だ。


5人がやって来たのは、5人が今住んでいる東京と姉妹都市の

関係にあるインドネシアの首都、ジャカルタである。

アメリカに行こうと思ったのだが前回のバーチャシティの一件の事もあるので

目的地を大きくアメリカから離して東南アジアのこの地へとやって来たのであった。

「さってと、ならまずは荷物を置きに行こう」

「それから観光ね!」

だがその前に気になる事が1つあったので哲が聞いてみる。

「藤尾はインドネシア詳しくないのか?」

「俺? いや……シラットのマスターからシラットのテクニックだけじゃなくて文化とか

教わったりとかはしてたけど、実際にインドネシアに来るのは初めてなんだよな」


唐突に話を振られた藤尾は若干驚きながらもそう哲に返す。

「て事は、ジャカルタどころかインドネシアは私達全員初めてか」

と言う訳で由佳の呟き通り全員インドネシアに来るのは初めてになるので、

ガイドブック等を頼りにジャカルタの観光名所を回る事になった。

だがこのジャカルタ旅行でも、この5人がとんでもない事件に巻き込まれてしまうとは

予想だにしていなかったのである……。



ステージ1:思わぬ再会

エリア1

ムルデカ広場にあるモナスやオールドシティのコタ・トゥア、バンドン市街等を

見て回る計画をホテルで立てて、早速5人はジャカルタ市内へと出発する。

同じアジア系の民族だと言っても、日本人とインドネシア人で若干雰囲気が

違うのはやはり国が違うから、と言う訳だけでは無さそうだ。

「流石東京と姉妹都市だけあるな、世界有数の大都市だ」

「そうね、中心部は東京に負けず劣らずの人気っぷりね」

「人口も日本より1億は多いからな、これは日本もうかうかしてられないぜ」


そんな事を話しながらジャカルタ市内を抜けてまずは郊外へと向かおうと

したのだが、ここで由佳の腹の虫が盛大にぐぅぅ〜と鳴った。

「……あ、あはは」

「まずはランチにしましょ。何かインドネシアのお勧め料理とかって藤尾君、知ってる?」

「そうだなぁ、俺の知ってる限りだとタイガーキッドにも出て来たサテとかかな?」

と言う訳で、そのサテと言う日本の焼き鳥に良く似ている料理を食べに行く為に

近くの食堂へと入る。

「牛肉のサテと、それからチキンとラムのサテも」


藤尾の注文で出て来たサテと、それからサービスで出されるジョッキの冷たいお茶を

飲みながらランチタイムだ。

「おお、結構美味いな」

「この味付け、哲が好きなんじゃないのか?」

「あーそう言われれば結構俺好みかも」

哲好みの結構濃い目の味付けもあってなかなか食が進む5人。だがそんな時だった!!


エリア2

「……何か外が騒がしいな?」

「ああ、パトカーとか救急車がさっきから物凄い台数通ってってるぜ」

「何かあったのかしら?」

窓の外がサイレンの音で何だか騒々しいのが気になる5人だが、それでも食事を

しっかりと済ませてから店の外へ。

だがそこには信じられない光景が広がっていた。

「んっ!?」

「え?」

「何だ、これは……」


さっきまでの賑やかな町並みが、今は何と銃撃戦の舞台と化していた。

「な、何か凄くやばい感じ?」

「そうみたいね! 巻き込まれない様に逃げましょう!」

由佳の問いかけに和美は精一杯毅然とした態度で応じ、安全な場所へと逃げる事に。

「メインストリートはまずそうだ、路地へ逃げるぞ!!」

藤尾がそう言って5人はメインストリートからそれて路地へと逃げ込み、とにかく

安全な所へと入る。

しかしその路地で、思いも寄らない展開が5人を待ち受けていた!!


エリア3

ガァーッと何かの作動音らしきものが、路地の先から5人の耳に響いて来た。

「ん?」

「え、ちょ、嘘っ!?」

5人の目の前に現れた物は、路地の幅ギリギリを目一杯使って迫って来る

1台のホイールローダーであった。

「うおお、何だよそれぇ!?」

「と、とにかくやばい!!」


5人はすぐさま方向転換して逃げようと思ったが、このまま逃げて行けば再び

メインストリートへと出てしまう。それにホイールローダーが止まる気が無いと言う事は

自分達を轢いても良いと言う事らしい。

「だったら……!!」

この5人の中で割と重量級の部類に入る哲が動く。哲はホイールローダーに向かって

走り、横にある家の塀を利用して三角飛びでホイールローダーの運転席へ足から突っ込んだ。

「うおああああっ!!」

そんな雄叫びを上げながらホイールローダーの運転手を引き摺り下ろし、何でこんな事を

したのかを地面に押さえつけてマウントポジションを取りながら哲は問い詰める。

だが、そんな哲に別の声が響いて来た。

「止めろ、そいつに何を聞いても無駄だ」



ステージ2:やっぱり巻き込まれたっぽい

エリア1

「ん?」

声のした方に哲とそれ以外の4人が目を向けると、そこには以前バーチャシティで

出会った事のある2人の男が立っていた。

「あれ、あんた等ってまさか……」

「確かVSSEのキース君に、ロバート君だったかしら?」

あのビルで一悶着起こした、国際諜報機関VSSEのエージェントであるキース・マーティンと

ロバート・バクスターの2人だ。

「誰かと思えば、御前達は……」

「それよりもこの騒ぎは何なんだよ? 一体何があったんだ?」


藤尾が問いかけると、キースが簡潔に話し出す。

「今、このジャカルタでは色々と面倒な事になっていてな。衛星を使った戦闘兵器が開発され、

東南アジア全域にその照準が向けられている。早くしないと東南アジア全域が火の海だ」

「えっ……」

「って事は、この暴動もその一環なのか?」

問いかけた永治に今度はロバートが答える。

「暴動では無いぜ。その兵器開発組織の奴等が民間人を何人も撃って逃走をはかった。

このホイールローダーの奴は幹部の1人だ。協力に感謝する。だが御前さん達も早くここから

逃げろ。巻き込まれると色々厄介な事になりそうだからな!」

「ええ、勿論よ。みんな行きましょう」


エリア2

チームリーダーの和美が5人を先導して、路地を駆け抜けて行く。後の始末は勿論

VSSEの2人に任せた。

「何だってんだよ全く、バーチャシティで散々な目に遭ったのに今度は東南アジアで

こうなるのか! そーとー俺等は不幸な星の下に生まれたのか?」

「本当ね! もう海外旅行が嫌になりそう……」

哲は憤り、由佳はうんざりした口調でがっくりと項垂れながらも走る。

「そんな事言ったって、今の状況はもう覆しようが無い。だったらこの状況をいかに

素早く切り抜けるかだ!」

永治が冷静に、しかし力強くそんな2人に向かって口を開いた。


そうして路地を抜け、メインストリートから少し離れた通りへと出る。

「こっちは大丈夫みたいね……」

路地の陰から通りの様子を窺い、走り出した5人はそのまま再び路地裏へと飛び込んで

建物と建物の間に出来ている狭い道へと身を潜めた。

「ここなら安心みたいだ」

ふーっと息を吐いて藤尾が安堵の表情を浮かべる。

「さて、これからどうしようか?」

「この騒ぎが収まるのを待って、ホテルへと戻りましょう。観光だなんて悠長な事を

言っている暇じゃなくなったみたいだし、何よりも自分の身が1番大事! 5人揃って

絶対日本へ無傷で帰るわよ!!」

永治の問いかけに、和美が小声ながらもガッツポーズを右の拳で作って宣言した。


エリア3

騒ぎが遠くから聞こえてきていたが、それも段々収まって来た様なので

5人はさっさと迅速にホテルまで戻る事を最優先にして行動する。

路地裏はさっきの様にホイールローダーが迫って来るなんて事態がまたあり得ないとも

限らないので、出来る限り自分達の覚えている道順でホテルへと道を走り抜ける。

「うわ、ここらはひどいな」

銃撃戦でクラッシュしたのだろうか、何台もの車がストリートの一角で炎上したり持ち主が

居ないまま放置されたりしていた。

「丁度良いわ、1台拝借してホテルの近くまで行きましょう!」

「それしかねぇな、後味は悪いけど……」


しかしそんな5人の前に、今度は別の乗り物が邪魔をする為に立ちはだかって来た!!

「……ん?」

何か異様な気配に気がついた永治が後ろを振り向くと、そこには黄色い物体が自分達を狙って

突進して来る姿が目に入った。

「うおうおっ!?」

咄嗟にその黄色い物体を避ける5人。それはパワーショベルのアームだった。

「こ、今度はショベルカーかよ!?」

驚いている暇は無い。ショベルカーを操る人物はどうやら自分達を狙っている様で

車を何台もバケットで潰しつつ自分達も叩き潰そうとして来る。しかも今度は三角飛びが

出来そうな壁が周りに存在していない。


「ならば……!!」

永治と藤尾が傍に落ちていた拳大の石を手に取り、振り下ろされて来るパワーショベルのアームを

自分達の方から運転席側へと進んで回避しつつ、永治がまずは運転席目掛けて投石。

そして永治が四つん這いになったかと思えば、その四つん這いの永治の背中を利用してその後ろから

藤尾がジャンプして石を握った手のひらをそのまま運転席に自分の身体ごと突っ込ませる。

そうして運転席から哲の時と同じ様に運転手を引き摺り下ろして、永治が一思いにその運転手の

首を全力でへし折って何とか窮地を脱出する事に成功したのであった。



ステージ3:結果オーライ!!

エリア1

パワーショベルの襲撃から逃れる事が出来た5人は、ようやく自分達が泊まっているホテルに

戻って来る事が出来たのであったが疲労も困憊であった。

「もう疲れたぜ……あー、もう今日は外には出ねーぞ俺は」

ベッドに横たわって哲が疲れきった表情を浮かべながらぼやく。

「何でジャカルタまで来てまた銃撃戦なのよって感じね」

リーダーの和美も肉体的にも精神的に疲弊している。それは残りの3人も同じであった。

とにかく今日は休みたいと言う思いで、5人はまだ夕暮れ時ではあるが睡眠を摂る為にベッドに

それぞれ潜り込んだ。


だけどそんなベッドでの就寝は束の間の休息にしか過ぎなかったらしい。

5人が爆睡していると言うのに、廊下からまるで花火が撃ち上がる様な音が何発も

何発も聞こえて来たので5人も目を覚ましてしまった。

「だぁぁぁ、うっせー!!」

「何なのよ、誰よ!?」

「ちょ、おい……落ち着け!!」

5人の中で1番冷静沈着な性格の永治が哲と由佳を引き止め、その間に和美と藤尾が

部屋のドアからゆっくりと外の様子を窺う。


「……どうだ、和美?」

「この音とそれから大量の足音……間違いなくこのホテルの中もまずいみたいね」

2人の悪い予感通り、このホテルの中でもまた銃撃戦が行われているらしい。

「考えられる答えは1つだ。恐らくさっきのVSSE絡みの奴等じゃないかと俺は思う」

「私もそれしか思えないわね……ここも危険だけど、このまま部屋に居ましょう。

下手に動くと危険だし、流れ弾に当たったら厄介だしね」

和美の指示でこのまま部屋で銃撃戦が収まるまでひたすら待機する事になった5人だが、

そうは問屋が下ろさないのであった。


エリア2

部屋に篭っていると、いきなり自分達の部屋がバァン、と凄まじい音を立てて開かれ……と

言うよりも蹴り破られた。

「うおわ!?」

「な、何だよ!?」

「くっ!!」

いち早く異常事態に対応したのは由佳であり、ドアを蹴破って部屋に飛び込んで来た女を

ドロップキックで蹴り倒してマウントポジションを取ってボコボコに殴りつける。


そうして女が気絶した所で、今度は哲と和美で外の様子を窺う。

「この部屋も危ないみたいだ。逃げた方が良いと思う」

「そうね、今は銃撃も無いみたいだし人も居ない様だから今の内に脱出よ!」

下手に動きたくなかったのだが、部屋に飛び込んで来た女もどうやら開発グループの1人らしい。

手当たり次第にこのホテルを荒らし回っている様で、5人の身も危ない様だった。

「よーし、オールクリアだ。行くぞ!」

永治の判断で女が持っていたMP5サブマシンガンを和美が奪い取り、廊下へと駆け出す。

そして曲がり角を1つ曲がる度に先の様子を窺いつつ、5人は進んで行くのだった。


エリア3

そうして廊下を進んで行くと、片手にハンドガンを持っているのに何故か上半身裸で

ひたすら逃げ回っている1人の男を発見する。

「何だあいつ?」

「何か怪しい……」

そう直感で考えた和美はその男の後ろを追いかける。すると5人が通り過ぎた曲がり角から

VSSEのキースとロバートがやや5人に遅れる形で飛び出して来て5人の後ろについた。

「お、御前等!?」

ロバートが5人の後姿に気づいて驚きの声を上げるが、それにかまわず藤尾が走りつつ問いかける。

「このホテルも危ないのか!?」

「ああ、前に居るあいつが一連の事件の黒幕だ!!」


そのロバートの叫びに反応したのは和美で、マシンガンを構えて男に発砲するかと思いきや

何と走りながらも男目掛けてマシンガンを投げつけた。

「行っけぇ!!」

投げられたMP5マシンガンは逃げて行く上半身裸の男の右膝の裏に命中し、それによって

バランスを崩した男は無様に派手に転んだ。

その転んだ所で哲、永治、そして藤尾の男3人がかりで飛び掛かって押さえつけてしまえば

事件は一気に解決へと向かうのであった。



「助かったぜ。おかげでリーダーの身柄も確保出来た」

「これからどうするんだ?」

礼を言うキースと、5人のこれからの予定を聞き出そうとするロバート。

それに対してリーダーの和美はこう答えるのであった。

「3泊する予定だったけど、明日には私達は日本へ帰ろうと思う。疲れたし」

「そうだな、それが良い」

苦笑いをして5人はそれぞれキースとロバートと握手を交わし、事件が収まった

ホテルの自分達の部屋へと戻って行くのであった。



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