Soldiers Battle第3話
まずは王宮内に怪しい人物がいないかを、次の山脈調査の前にある
極秘会議において報告する為にローレンとジャックスの補佐にまわる
ジアル、ラルソン、ヴィンテス、パルス。
それぞれが分担して、仕事をする振りをしながら王宮騎士団の動向を探るのである。
するとその中で、ヴィンテスとパルスが見回りの時にカルヴァルの姿を発見したので
2人はこっそり追いかけてみる事にした。
「ん? あれってカルヴァル将軍じゃないのか?」
「本当だ。カルヴァル将軍が城下に出て来る事なんて滅多に無いからな。追いかけるか?」
「勿論だ!」
パルスの返答にヴィンテスが頷きを返し、ばれない様に追跡を開始する。
城下の人込みを避けカルヴァルは路地へと入って行く。それを追って
行ったヴィンテスとパルスは、この後に見慣れぬ光景を目撃する事になる。
「誰だ、あいつ……」
「さぁ? 見た事の無い奴だな。でももう1人の奴って確か副将軍の……」
路地の奥でカルヴァルが誰かと話している姿が見て取れる。
距離がある為に会話の内容までは把握できないが、2人髪の色はカルヴァルの
身体の影からちらちらと確認できる。
黄緑色の髪の毛に、青い上着、黒いズボンの……恐らく男がカルヴァルと向かい合っている。
一方のもう1人はヴィンテスとパルスも見た事がある緑色の髪の男だった。
ひとまず、これ以上ここに居たら自分達の存在がカルヴァルに
気が付かれてしまうのではないかと考えたヴィンテスは、パルスを伴って裏路地から一旦出る。
そして裏路地からまたカルヴァルが出て来るのを待ち、出て来たら2人で先程と同じ様に尾行開始。
「さっきの相手、気になるな」
「俺もだ。裏路地でわざわざ話す様な事と言えば、やましい事の可能性が大だ。
決め付けるのは良くないけど、何だかそんな気がしてしょうがない」
「ああ……。堂々と話す事であれば、人目に付く王宮だろうが城下だろうが話せるだろうからな」
更にもう1人の緑色の髪の毛の男、あれは……。
「あれって王宮騎士団の副団長のローエン様だよな?」
「もしかして、カルヴァル将軍の計画に賛同していると言う事か?」
謎は深まるばかりだったが今ここで結論はまだ出せない。
その後、カルヴァルを尾行して行った2人だったが彼はそのまま王宮へと戻ってしまった。
どうやら尾行はこれで終了の様だ。
「ここまでか。これから先は近衛騎士団でも無い限り、王宮騎士団の領域には
簡単に入れないからな」
「ああ。後はローレン様やジャックス様に任せるとしよう」
そうして、2人も自分の持ち場へと戻って行くのであった。
ラルソンとジアルの2人は、もう1人の要注意人物である王宮魔術師の
ジェバーを追っている。追っているとは言っても、こちらもヴィンテスとパルスと
同じ様に尾行をしているだけなのだが。兵士部隊には王城の見回りもあり、
その時にジェバーを見かけてこっそりと尾行していると言う訳である。
「どこまで行くんだ、あいつは?」
「さぁな……」
ジアルのそっけない返事を受けつつ、尾行をして行くラルソン。
ジェバーは王城の敷地の外れにある、今はもう使われていない
古い倉庫に向かっていた。
そして、その入口に入った所で2人は尾行をストップさせる。
何故かと言えば、入口の扉の横にある窓から中の様子が見えるからだ。
「おいラルソン……あいつは……」
「ああ。1人は俺達の知らない奴、もう1人は見た事のある奴だな」
黒髪に赤い上着を着込んだ男と、青い上着に白い髪の毛の男と3人で
何かを話しているのが窓から見える。会話の内容迄は遠くて聞き取れないが、
こう言う人目に付かない所で話す内容と言う事は少なくとも他人には
聞かれたくない会話である可能性が大である。
そして、会話が終わったので2人は倉庫の陰に隠れて3人が通り過ぎるのをじっと待つ。
「良し、2手に分かれよう」
「ああ。俺はジェバーと白い髪の奴を追う。ラルソンはあの黒髪の奴を」
2手に分かれて再度尾行を開始……したまでは良かった物の、ジェバーの方はその後に
王城にある王宮魔術師の兵舎に戻ってしまうし白い髪の奴も途中で兵舎に行ってしまう。
ラルソンは黒髪の男を城下迄追いかけたが、人込みに紛れて見失ってしまった。
その後、王城へと戻ったラルソンはジアルと合流して結果を伝える。
「すまない、見失った」
「そうか……。だが、城下へ姿を消したと言う事はまだ何かありそうな気がする。
この事は早めに報告書に纏めて会議で陛下や宰相に伝えよう」
「そうだな。後1人……確かあれは王宮騎士団副長のローエン様の副官で、
暗殺とか仕掛けの設置を得意とするルイス様だった筈だ」
そうして、その数日後の極秘会議にて尾行の結果が発表される事になった。