Soldiers Battle第10話
ハイテンションで気に触る喋り方をするジェバーだが、推理自体は当たりだ。
「くそっ……!」
思わず苦虫を噛み潰したような顔になるラルソンだが、ジアルはあくまでクールな
顔をして将軍に問いかける。
「だけどその会議の中に飛び込んで迄殺す事はせずに、ここで俺達を一気に
殺そうとするのは、王城の中で俺達だけを殺すよりも俺達と繋がりのある
兵士部隊の隊員を、この作戦の中で一気に殺した方が手っ取り早いと
思ったからですよね?」
その推理に、再びカルヴァルは肯定の返事を返した。
「まぁ、間違ってはいないな。本当はそこで殺しても良かったんだが」
が、曖昧だとも聞き取れるこの返事にラルソンが問い詰めて行く。
「何だかその返事にはまだ別の意味がある様に聞き取れますね、将軍」
「ほう、察しが良いな」
ラルソンの追い込みに感心しつつ、薄ら笑いを浮かべながら返答するカルヴァル。
「御前達が集まって何かの会議をしていると言う情報は、密偵を通して
俺やジェバーの元にも入って来ていた。まさかその中に皇帝のリュシュターや
宰相のモールティも入っていると言う事までは想定外だったがな」
そこまで言うと、今度はジェバーがさっきと同じテンションでそのカルヴァルの話に
自分の話を嬉しそうに続けた。
「ですけど〜! それを私達は逆に利用してしまおうと考えた訳ですよ!
皇帝がメンバーに加わっているとなれば、それを利用して揺さぶりを
かける事も出来る訳ですからねぇ?」
その言葉に、ラルソンとジアルの2人ははっとした表情になる。
「まさか、あんた等……」
「そ〜う! 察しが良いぞ〜! 今頃は貴方達の大事な大事な皇帝陛下が
荒縄で縛られて、御供の宰相は薬で眠らせられてるんじゃないですかねぇ〜?」
その楽しそうな、だが残酷な内容の発言にラルソンとジアルは愕然とした表情を浮かべた。
「貴様等……。これだけの事をして、ただで済むとでも思っているのか?」
次の瞬間もはや敬語も何も関係無しに、明らかにジアルの表情には怒りの色が浮かんだ。
が、そんな表情を見てもジェバーはお構い無しと言った感じである。
「思ってますねぇ〜!! だって、この国はもうすぐ私達の物になるんですから!」
べーっと舌を出して嘲笑うその表情に、ラルソンとジアルの怒りも爆発寸前だ。
そして止めに、カルヴァルが意味深な事を2人に言う。
「そう言えば……もう1つの部隊はどうしているんだろうな? もしかすると
今頃、全員奴等にやられてしまったかもしれないな」
その言葉に怒りの表情から、再びはっとした表情に切り替わるラルソンとジアル。
「まさか……」
「お、おい御前等!! すぐに下に行って部隊の様子を見て来るんだ!!」
部下の生き残った兵士達にそう指示し、彼等が駆け下りて行った所を
見た所で、再びラルソンとジアルは2人の首謀者に向き直る。
「フン、今更気が付いたとしてももう時間切れかもしれないがな」
カルヴァルは余裕の表情を浮かべつつ、いよいよ自分の武器に手をかけた。
彼は剣、弓、斧を使いこなすオールラウンドタイプの戦士であり、
まさに将軍の名前に恥じ無い実力の持ち主である。
そしてジェバーも。
「では、私達もそろそろお暇(いとま)させてもらうとしましょうかね」
ジェバーは王宮魔術師であり、攻撃魔術も回復魔術も使える
実力のある男だと言う噂が飛び交っている。
その昔、この2人はコンビを組んで北の方にある国を滅ぼしたと言われる位の
武勇伝もある為に、実力はこうして目の前にしてもとんでもなく高いのがわかる。
だが、その前に何かを思い出したような表情を浮かべてカルヴァルは
2人にこんな意味ありげな事を話し始めた。
「さっきの話の続きなんだけどな……」
「何だ」
「ここで俺達が直接手を下さなくとも、御前達はここで死ぬ事になる。
俺達は、更に御前達を不利にさせる事が出来る秘策を持っているからな」