Run to the Another World Fighting Stage第5話(最終話)


「ぜーはぁー…ぜーぜー…っげほ、重い…疲れた……」パタンッ

ドラゴンが絶命したのを見て気が緩んだのか、リュシアンは剣を手から離して地面に座り込んだ。

「よくやった…な、ボクはもう疲れたぞ……」

そういってリュシアンは和美を見上げる、ただ剣を引きずっただけなのに大分お疲れのようだった。

そして、当たり前のように和美に向かって両手を伸ばし、自分は動かないから運べポーズをした。

「やっぱりいつ見ても生き物の絶命の瞬間っていうのは、こう…、来ますねえ…」

フロレアは血を噴き出しながら絶命したドラゴンを見て、少し悲しげな表情を浮かべる。

「この子も敵側についていなければ、わかりあえたのかもしれませんね…」

フロレアは完全に忘れている。そもそも自分が勝手に単騎で突っ込んだが為にこんな大乱闘になったことを。

もし突撃していなかったならこのドラゴンとも戦う必要はなかったのかもしれないが、そんなことは

つゆ知らずフロレアは二人の元へ歩いていった。


「・・・・・分かったわよ、お母さんが抱っこしてあげるから」

子供をあやすかのように和美はリュシアンを持ち上げ、抱っこをしてよしよしとあやし始めた・・・・そのときだった。

「えっ・・・・!?」

突然3人の周りを眩い光が覆っていき、そのまま周りの景色が光で見えなくなっていく。

「えっ、ちょ、まさかこれって・・・・!」

「!…これは?」

和美に抱き上げられていたリュシアンは、まばゆい光に目を細めた。

よく見ると自分の手が微かに透明になっているようだ。

それを見て状況を察するとリュシアンは、和美に下ろしてもらい重い体を無理やり立たせた。


「どうやら…元の世界に帰れるみたいだな」

「ふええ!やっと帰れるんですねーー!よかったあ…」

その言葉を聞き、帰れる安心からか一気に気が抜けたフロレアは、へなへなぺたんっと地べたに座りこむ。

「もう異世界旅行はこりごりですっ!元の世界が一番いいです!」

むう、と頬を膨らませながらフロレアはそう言った。

そんなことをしている間にも、三人の身体はどんどん透けていっているようだった。

「何だかんだでピンチを切り抜けることができたわね。2人のおかげよ」

消えていく身体を見ながら、最後に和美は2人の頬にキスをする。

「2人の事、何時までも忘れないわ・・・・・」


和美の意識はそこで途切れ、気がついたときには自分はマンションの自室に戻っていたのであった。

(何とか、戻ってこられたみたいね・・・・・。さて、明日の仕事の準備をして、もう寝よう)


和美から頬にキスをされて頬を赤らめたリュシアン。

「な、な!?このド阿呆!急に驚くだろう!……でも、2人ともよくやったな…感謝してるぞ(ボソッ)…もう会うことも

ないだろう、さよならだ和美、フロレア」

そう言い終わると、リュシアンの姿は完全に消えた。

目を覚ますと、執務室でうたた寝をしていたのかソファに横になっていた。夢のようなことを体験した気がする

リュシアンは、その夢を思い出すように首を傾げた。

そして、確かめるかのように胸ポケットを探ると中にはいつも持ち歩いている種が入っていなかった。

それが分かると、リュシアンは目を見開き驚いたが、そっと微笑み窓の外を見上げたのだった。


同じように和美からキスを受けて、フロレアはえへへとはにかんだ。

「私だって忘れませんよー!二人のこと皆に話しちゃうんですからね!」

次の瞬間ドンっという音とともに、フロレアは目を覚ました。

寝起きでうつろな頭で辺りを見回してみると、そこは城の客室だった。

どうやらフレア王子を待っている間にうたた寝をし、そのままソファーから落ちてしまったようだ。

なんとなく頬に触れてみると、まだ暖かい感触が残っていた。それを確認すると、フロレアはふふっと小さく微笑んだ。




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