Run to the Another World Battle Stage第7話
「うわあああ!! 何だこいつ等!!」
「くっ! こんなトラップがあったなんて!!」
ハリドとローザは若干のパニック状態になりながらも、ハリドは何時も通りの体術で応戦出来る事に
すぐに気がついたしローザも双剣術と魔法を駆使して的確に1体ずつ潰して行く。
しかし、倒しても倒してもモンスター達は湧き出て来る。
やはりここはあのローブの男……魔術師をどうにかしなければいけない様だ。
このままでは力尽きて殺されてしまうと考えた2人は、モンスターを潰しながらも何とか魔術師の男に接近する。
だが、先程の魔術師のセリフは大口では無い様だった。
「甘いんだよ」
先に魔術師の元に辿り着いたローザが炎の魔法を発射するものの、魔術師は魔法の壁を作って
しっかりガード。 ならばと双剣で斬りかかるものの、これも何と魔法の壁でガードされてしまう。
(嘘っ!? 効かない!?)
魔術師は自分をぐるっと囲む様にしてドーム状のバリアを張ってしまっている様で、ローザの魔法も
双剣術もその魔術師に届きそうに無かった。
「 [ テルス・レル]!! 」
その魔法のバリアを無効にしてしまえば問題も解決して魔術師に攻撃が届く……筈だったのだが、
今度は何とその魔法すら効果が無い!!
「そ、そんな!!」
「どうした、そんなもんかい?」
ローザの魔法をあざ笑うかの様に、魔術師の男は余裕しゃくしゃくと言う感じでバリアの向こうで腕組みをして
にやりと嫌らしい笑みを浮かべた。
「大丈夫か、ローザ!!」
モンスターを退けて、遅れてやって来たハリドはローザが苦戦している状況をその目で見て理解する。
「駄目だよ、あの男には剣術も魔法も効かない……!!」
「ええっ!? そんなバカな!」
信じられないと言った声と表情でハリドは魔術師を見据えるが、その魔術師の余裕のポーズを見る限り
どうやら本当らしいと察した。
「くっそぉ……ああっ、また来た!!」
ハリドの声にローザが後ろを振り返れば、先程の魔法陣からまたもやモンスター達が沸き出て来ていた。
「このやろおおおおお!!」
こうなったらもうやけくそ状態でやってやるぜ、とばかりにハリドは雄叫びを上げながらダッシュで魔術師に接近。
そこからプロレス技でおなじみ、全力ダッシュからのドロップキックを繰り出す。
「だから言ってるだろう、僕には攻撃が届かなごぼあっ!?」
魔法はおろか、物理攻撃も届かないと完全に確信していた自分のその上半身にハリドの全力ドロップキックが
しっかり届いたと確認出来たのは、上半身全体に広がる痛みと共に、コケが広がる天井を向いて仰向けに
倒れこんだ時だった。
「ぐふっ、な、何故……っ」
「え、あ、あれ?」
実を言うとハリドが1番ビックリしていた。
だって届かないと思っていた筈の攻撃が、まさか届いてしまったのだから。
そしてその瞬間、ハリドはローザとの出来事とこの建物の1階での出来事を思い返す。
(そう言えば1階で俺、あの集団の魔法が効かなかったんだっけ? そしてローザの魔法も……)
どうやら武器が使えないと言うデメリットがある反面、魔法の効果は自分には無いと言うメリットもあるらしい。
それを今もう1度理解したハリドは、よろよろと立ち上がる魔術師に対して自分もニヤリとした嫌な笑みを浮かべて、
ローザにはバリアの外のモンスターを任せる事にした。
「さぁて……タイマン勝負と行こうかぁ?」
第三者から見ればどちらが悪役なのか分からないハリドのその声色と表情に、魔術師はゴクリと唾を飲み込んだ。
さっきのロボットの時はハリドがサポートロボットを引き付けたが、今度は逆にローザがこの魔術師の手下のモンスター達と戦ってくれている。
(ローザがあのデカブツを倒してくれたんだから、ここで俺も負ける訳にはいかないぜ。助けられっ放しと言うのは何だか寝覚めが悪いしな!)
モンスターを生み出す元凶のこの魔術師は放っておくと厄介なので、これは短期決着で一気に勝負を決めるべきだとハリドは判断。
しかし、魔術がハリドに効かないと分かった魔術師は杖の握りについているボタンを押して、杖を分離させてロングソードにしてしまった。
いわゆる仕込み杖らしいが、ハリドはそれを見ても冷静だった。
自分はこう言う戦いの時になると、妙に頭がクリアになるらしいと言う事に最近気がついたハリドは、ロングソードになった杖を
突き出して来る魔術師の動きをしっかり目で確認するだけの余裕があった。
次の瞬間、身体を横にずらしてそのロングソードの突きを回避しつつ、魔術師の背中側に回り込んだハリドの両腕が
魔術師の首に絡められる。 そして腕に力を込めて、魔術師の首を全力でゴキッと音をさせてへし折って絶命させた。
魔術師が絶命したと同時に足元に広がっていた魔法陣が消え去り、モンスターもまるで溶ける様に地面に沈み込んで
全て消え去ってしまった。
(やったぜ……ローザも無事みたいだし良かった)
自分の剣を鞘に収めて安堵の表情を浮かべるローザの姿も確認出来、ハリドは一息つく為に地面に座り込むのだった。
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