Run to the Another World Battle Stage第2話


「でもいきなり自己紹介って言っても、何から話せば良いんですかね?」

目の前の赤髪の女にそう聞かれて、ハリドは先に自分から自己紹介する事にした。

「そうだな……それじゃあ俺と同じ事を話せば良いと思いますよ。ああ、勿論答えたく無い事があれば

答えなくても問題無いかな」

「分かりました」

女がその提案に了承したのを見て、では……とハリドは自己紹介を始める。

「俺はハリド。地球って言う世界の、ヨーロッパって言う地域にあるドイツって言う国で公務員をやっています」

その公務員と言う単語に、赤髪の女がキョトンとした顔になる。

「……コーム、イン?」

「ああ、えーと……騎士団の一員みたいなもんですよ。騎士団なら分かるかな」

「それは大丈夫ですね」

「ならOK。えーと、年齢は43歳。君よりは確実に年上だな。色々と武術をやっているよ。

ちなみに独身ね。よろしくお願いします」

何だかギクシャクしたものになってしまったが、一応これでハリドの自己紹介は終了した。


なので、次は女の自己紹介の番である。

「ローザと申します。以後お見知りおきを。23歳です。アザリーヴ王国と言う国からやって来ました。

その国にある風の街ユリーズと言う場所で働いています。よろしくお願いいたします」

「よろしく。そう言えばさっきも言ってましたね。隊長の役職を努めているって」

確認するハリドに、ローザと名乗った女は軽く頷いた。

「そうですね。そのユリーズはぼくが隊長を務めている剣部隊がある街で、他にも弓部隊とか騎馬部隊とかで

合計5つの部隊があります」

「俺より20も年下のその若さで隊長か。さぞかし出来る人だと見受けられますね」


そう言いながら何処か遠い目をしたハリドに、ローザはこんな事を問いかけた。

「ハリドさんって貴族の方なんですか?」

「俺? いいや全然。俺は生まれついての平民ですよ。逆に聞きたいんですけど、何でそんな風に思ったんですか?」

自分の何処が貴族に見えるんだろう? と心の底から疑問に思ったハリドは彼女に問う。

「金髪ですから。こっちの世界では金髪の人は貴族階級なんですよ」

「へぇ〜、そうなんですか? それはまた変わってますね」

仲間内の強さのランク付けテストで、自分を含めた35人中で13位の自分が貴族階級に思われた事に

ハリドは戸惑いを隠しきれないままそうリアクションを取った。


そんな決まりがあるなんて、やっぱり自分の世界とは違うんだなーと感じたハリドは次の話題を繰り出す。

「……あー、そう言えば何が原因でこの場所にやって来たんですか? それもお互いに知っておいた方が良いかも知れませんね」

「そうですね」

それじゃあ俺から、とさっきの自己紹介の時と同じくハリドから話し始める。

旅行で観光をしにあのクラウディア砦に行った事、そこで奇妙な光を見た事、その光に近づいたらいきなり

光に包まれてこの場所に出てしまった事をローザに話した。

「これが俺の全てだ。えーと、ローザさんは?」

「こちらも先程申し上げた通り、同じ様に光に巻き込まれました。ユリーズに帰る途中で廃墟になった古い砦があって、

そこに雨宿りで立ち寄ったら貴方と同じ様に光に導かれる様に……でした」

「お互いに砦に行ったら変な光に包まれて……って事か。砦同士って言うのも何かの関係があるのかな?」

お互いに首を捻ってみるが、このままここで考えても埒が開かなさそうだ。


しかしその時、ハリドの肩越しにローザが「あっ」と声を上げる。

「……どうした?」

「あれ、あそこの光……!」

「え!?」

ローザが指差す方にハリドが振り向くと、その先には何とハリドが包まれたのと同じ様な光がふわふわと宙に浮いている。

「もしかして、ローザもあの光に?」

「恐らくはそうだと思いますけど、断定は出来ないですね」

その光は路地の奥に見える。ハリドが入って来た路地とも、ローザが入って来た路地ともまた違う路地の奥だ。

まるで自分の存在をアピールするかの様に点滅しているその光は、2人を呼んでいる様にも思える。

「……行ってみるか?」

「ええ、行ってみましょうか」

お互いに目配せをして頷き合ったハリドとローザは、警戒心を緩めない様にしながらその光が点滅している路地の奥へと入って行く。

一体この光の場所に何が待ち受けているのだろうか?


だが2人が光の元まで歩いて来てみると、その光はスーッとロウソクの火が消えるかの様に無くなってしまった。

「えっ、あ、あれ?」

「消えた……」

一体今の光は何だったのだろうか? と思う2人だったが、ふと前の方を見てみるとまた同じ様に青白い光が点滅しているポイントがある様だ。

それを見て、ハリドが1つの仮説を打ち立てる。

「これってもしかすると、俺達をあの光が導いている様に思えないかな」

「そうですね……となれば、今はあの光の元を辿って行くしか無さそうですね」

そのハリドの考えていた事は、どうやらローザも一緒だった様だ。

一体、誰が何の目的でこんな事をしているのだろうか?

それが分からなければ、お互いが元居た場所に帰る事も出来なさそうだ。


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