リレー小説第3部第20話(最終話)
「やめろ。やりすぎだ」
ぽん、と流斗の肩を叩き、そう声をかけたのはあの女王だった。
「その男、もう虫の息ではないか。それ以上は無用だ。奴はこちらで引き取ろう」
女王はずい、と流斗を腕でおしのけると、男の目の前に立つ。
と、突然地響きが鳴り響く。すると、いきなり女王の体めがけて大きな岩棘が地面から生えてきた。
男はその血まみれの顔に不敵な笑みを浮かべる。どうやらあの突き刺さったステッキは遠隔で魔法を使えるようだった。
まずい、と誰もがそう思い女王の安否を確認しようと駆け寄る。
が、なんでそんな心配をしたのか意味がわからない、と、のちに全員が語った。
即座に岩棘にピキ、と亀裂が入り、横にバックリと割れた。
割れた断面の先から見えるのは、赤い槍と赤い鎧、そして赤いリボン。
「身の程知らずもいいところだな、貴様。これごときで私がやられるわけないだろう」
女王は横に振り払った槍をくるんと綺麗に回して、構える。
「気が変わった。死ね」
そう言うと女王は一寸の迷いもなく男に槍を突き出した。 胸を一突きされ、男はそのまま息絶えた。
「・・・終わった・・・んやろ?」
周りの状況を見てそう考えた流斗ははぁーっと息を吐く。
・・けど、この後自分はどうなってしまうのだろう。どうやったら元の地球に帰れるのだろう?
問題が解決したら帰れる、とこの女王は言っていたがその気配は今の所無い。
「・・俺、これからどないしたらええんや・・・」
しょんぼりとする流斗に、周りのメンバー達がそれぞれ声をかける。
「だ、大丈夫ですよう!帰れますよう!私の時だってそうでした!」と、フロレア。
「何か道具が必要なのかもしれないね。前の剣士?の彼はそうだった。諦めるのはまだ早いさ」と、フレア。
「いっそのことここに住むのも悪くなかろう」と、女王。
前半二人はともかく、女王は真面目に励ます気すらあるのかないのかなんなんだと流斗が
ため息をついていると、「おーい!」と森の奥から走ってくる人影が二つ。
「フレア!フロレア!…ってなんだ、もうカタついちまったのかよ!ぐぐぐ、俺の活躍場所が」
そう駆け寄ってきたのはレオとルイスだった。ルイスの手元にはなにやら光るものが握り締められている。
「ルイス、それはなんだ?」
「ああ姉さん、これ、さっきそこで拾ったんだけど…!?」
ルイスが姉である女王にその光るものを見せようとした瞬間、物体が強く発光し始めた。
それと同時に、流斗の体も発光する。どうやら流斗と同調しているようだった。
「えっ・・え・・?」
自分の身体が光り始めた事を感じ、慌てて足元に落ちている自分の青龍刀を拾い上げて布にくるみながら流斗は口を開く。
「な、何だかよー分からんけど・・・どうやら、俺の役目はここまでみたいやな・・・」
色々あったけど、何だかんだで良い体験出来たで・・と言いながら流斗の身体が光の粒になって消えて行く。
そして流斗はこの世界から完全に消失した。
「・・・あれ・・?」
気がつけば、自分は自宅マンションの玄関に立っていた。
でも、帰って来た時とは明らかに違う事がある。それは自分の身体が相当汚れている事。それから明らかに
青龍刀に使った形跡があること。
「・・向こうの世界の事は、後は向こうの人間に任せるべきやな・・」
後は頼むで、と呟きながら流斗は汗臭くなった自分の身体を清めるべくシャワールームに向かうのであった。
「やはり帰る時はみんな消えてしまうんだね」
そう、流斗がいなくなった場所を見つめ、フレアは呟いた。
では戻るか、と女王が言い、各々がそれに従い振り返ると、そこには幽がいた。どうやら今追いついてきたようだった。
「あれ、あのおっさん帰っちゃったの」
幽は気だるげに頭をぽりぽりと掻く。
「あーあ、せっかくいい金ヅルならぬたこ焼きヅル見つけたと思ったのによ…」
結局最後までたこ焼きかい!とは突っ込まずにいられなかった一同だった。
おわり