New Agent Story
登場人物紹介
1.謎の少女達
アメリカのテキサスにテロリストが現われた。テロリストたちの目的は、指定時間内に金を用意しなければテキサスの州知事を殺害するということだ。
すると、1人の男が現われてテロリストたちと死闘を繰り広げた。
その男はテロリストの誰にもチャンスを与えず、テロリストたちを一方的に攻撃した。
外観はおおよそ30代前半。金髪で顔の右側に絆創膏をつけ、目はアクアマリン色だ。
彼は15人のテロリストを倒し、テロリストのリーダーのところまでたどり着く。だがたどり着いたとたん、彼はしかめっ面を作りながら呟いた。
「どういうことだ? テロリストのリーダーが…」
この光景を見た軍人は驚いて声が出なかった。
すると、軍人の右側の耳についているイヤホンから女の声が聞こえた。
「あ! 生命反応が大尉の前にあります! それも2名です!」
「今調べる」
それは2人の女だった。その内の1人が口を開く。
「私達がやったよ? 私達には厳罰かしら? ふふ…」
赤いヘルメットを被った女が言った。
「君たちがやったのか?」
すると、白いヘルメットを被った女が言った。
「私達は自分の正義を貫く。それが目的」
次に赤いヘルメットの女が軍人に聞いた。
「あなたの名前は?」
「俺の名前はウィリアム・ラッシュ大尉だ」
すると、赤いヘルメットを被った女が煙幕弾を利用して逃げようとする。その瞬間、彼女は彼の返事に応じた。
「また会おう、ラッシュ大尉」
ラッシュ大尉が煙幕で足止めされている間に、エレベーターで逃走した。ラッシュ大尉は歯軋りをした。
(くそっ、いつか捕まえてやる!)
作戦本部に帰ったラッシュ大尉は悔しそうな表情をしていた。
彼らが誰かが分からなくても、ラッシュ大尉はテロリストを殲滅した、あの2人の女どもを許すことは出来なかった。
会議室へ行ったラッシュ大尉は上官であるガーフィールド中将に、事件のあらましを話した。
「ただの一般人がテロリストの事件解決にかかわるなんて…ありえません!」
「なら…何故その女達を追うことにしたんだ? ラッシュ大尉」
そのガーフィールドの話を聞いたラッシュ大尉は、怒りに任せて吐き捨てた。
「奴らは軍人の仕事を潰すつもりでしょう。奴らを止めなければ…!」
すると、何かを考え込んでいたマクスウェル准将が、ラッシュに向かって口を開く。
「彼女らと会ったことがある人物に、話を聞いてみるのはどうだ? 大尉も知っているだろう? VSSEのジョルジョとエヴァンを」
ラッシュの顔に驚きの表情が浮かぶ。
「何ですって?」
2人の上官はラッシュの顔を見て、ポツリポツリと話し始めた。
「半年前、イギリスでとある暗殺事件が起こった。だが、その主犯は手足が使えなくなった。
犯人は殺さないで生け捕る。それでその事件を解決に導いた。
それと同じようにイタリアのマフィアを壊滅させたこともあってな。イタリア警察治安作戦中央部隊(NOCS)にマフィアの情報も流していた。
それからだ。彼女らが有名になったのは…」
その言葉を聞き、ラッシュ大尉は固唾を呑んでガーフィールドに問いかけた。
「彼女達の名前は…」
「彼女らの内、1人は「ローズ・キム」と呼ばれている。もう1人は不明だ。その2人を合わせたコンビで「シティーハンター」と呼ばれている」
ガーフィールドは落ち着いてラッシュ大尉に言った。
「シティーハンター…」
その言葉に何か、胸騒ぎがするラッシュ。そんなラッシュをよそに、ガーフィールドはラッシュに向かって口を開く。
「ラッシュ大尉、今は君の出番じゃ無い。今週は休みをやる。最近になって犯罪も増えてきたが、休暇も必要だろう。また何かあれば呼ぶ」
「…了解しました」
会議が終わった後、会議室から出たラッシュに1人の女が近づいた。
「大尉、任務中に何かあったのですか?」
「ああ。エリザベス・コンウェイ中尉。あの2つの生命反応は「シティハンターと呼ばれる女だった」
「…私を呼ぶときは「ベス」ですよ。大尉」
ベスがやや不機嫌な顔で、ラッシュに向かって言った。
そんなベスの手に、ラッシュは何かがあるのを見つけた。
「ベス、何だそれは? 麻薬植物か?」
「違いますよ。これはヒヤシンスです。家でも簡単に栽培できて、疲れた時に匂いを嗅ぐと疲れが取れるんです。ダラスにある花屋で買ったんですよ」
ベスは簡単にラッシュ大尉に説明した。
そんなベスに対し、ラッシュが意外な事を言いだす。
「俺も花に興味があるな。軍に入ってからついつい任務に没頭しすぎて、あまり他のことに気が回らなかったからな。その花屋まで案内してくれないか?」
「わかりました」
「よし、じゃあ明後日にダラスまで行こう。休みはベスにも申請されているからな」
そう言って歩き出したラッシュの背中を見つつ、ベスは複雑な表情をした。
(大尉が花を好きになるなんて…何か変な物でも食べたのかしら…?)
2日後。ラッシュは久々にテキサス州に帰ってきた。
午前11時。軍服を脱いで普段着に着替えたラッシュは、自分の体の傷を見て心の中で呟く。
(俺が外出するのも、久しぶりだな…)
ラッシュは球根を持って外に出る。向かうはダラスの花屋だ。すると、そこの花屋で懐かしい顔を見かけた。
事前にVSSEに向けて、ガーフィールドがこの花屋で待ち合わせをするように手配していたのだ。
「久しぶりだな。VSSEのジョルジョ・ブルーノに、エヴァン・ベルナール」
その2人はラッシュを見ると、ラッシュに向けて手を振ってあいさつした。
「へぇ、大尉の軍服以外の姿を見るのって、初めてだな。ベスも久しぶり」
金髪頭の男が生意気な声で言った。VSSEのエージェント、エヴァン・ベルナールである。
「お久しぶりです、エヴァンさん」
エヴァンの言葉が終わると、今度はブラウンヘアの男が言った。
「一般人の服か…」
ブラウンヘアの男の言葉が終わると、ラッシュは二人の肩を抱えこみながら言った。
「近くにコーヒーショップがあるんだが、一緒に行かないか?」
実はラッシュは、一度もコーヒーショップに行った事はない。
という訳で、ジョルジョとエヴァンと一緒にベスの勧めもあり、ベスとは別行動でコーヒーショップへ行くことに。
コーヒーショップでラッシュは、ジョルジョとエヴァンに今回の事件に関して協力を申し出た。
「と言う訳なんだが…頼む。この通りだ」
しかし、エヴァンは不満そうな顔をした。
「俺らはこんなことのために、ここに呼び出されたのか? 大尉」
エヴァンに続いてジョルジョも苦言を呈す。
「俺も賛成は出来ない。大尉、これは無茶じゃないか?」
だがジョルジョの言葉が終わるや否や、ラッシュは更に深く頭を下げる。
「これは軍の存続にかかわる問題なんだ。シティーハンターだか何だか知らないが、これ以上あの2人を危険な目にあわせたくは無い。
…そういえば、昔ジョルジョはNOCSだったな。シティーハンターについては何か知っているんじゃないのか?」
その言葉を聞いたジョルジョは、落ち着いてラッシュの言葉に答える。
「確かに俺はNOCSにいた。だがそのことは、俺が辞めた後に同僚だった奴が、俺に情報を流してきたんだ」
「そうか…」
ラッシュは頭を上げ、ジョルジョの顔をまっすぐに見つめた。
「でも大尉、全世界のことは俺等だけではとても対応しきれ無い。警察とかに任せれば良いんじゃねえのかよ?」
エヴァンは不満そうにぼやくが、ラッシュは深刻な顔をして答える。
「警察では解決しきれない問題だ。そこでまた、2人に協力を頼みたい」
だがエヴァンの不満は収まりそうに無い。
「困ったな…俺らが女の子を相手にするなんてよ…!」
一方のジョルジョはカプチーノを飲んでいる。すると、ラッシュが持ってきたヒヤシンスの球根に目が行った。
「花…?」
「え? ああ、これか?」
「ああ。大尉が花を持っているなんて、珍しいと思ってな」
するとラッシュは慌てて、ぶんぶんと手を振った。
「勘違いするな! これはベス…コンウェイ中尉からもらったものなんだ」
コーヒーショップから出た3人は通りを歩く。ラッシュは球根をずっと持っている。
だが、ふとベスの言葉を思い出したラッシュは2人に質問をぶつける。
「そうだ。確かこの近くに、この球根を買った店があるはずだ。知っているか?」
「え? この近くなのか?」
「ああ。ベスはこの近くで買ったと言っていたが…花屋はこの近くにあるか?」
すると、ジョルジョが口を開く。
「一応、探してみるか」
だがその時、どこからか不思議な音楽が聞こえてきた。その音楽に気を取られた3人は、その音楽が聞こえる方へ歩き出した。
音楽が流れて来ているのはアクセサリーショップ。やたら客が多い。
するとその中の1人…いや、客ではなく、バイトの店員であろう人物が3人に話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「いいや、冷やかしだが」
「そうですか。今週は20%オフのセールやってますので、よかったら見て行ってくださいね」
と、エヴァンがそのアクセサリーショップの隣に花屋があるのを見つけた。
「なぁ、ここじゃないのか?」
「…そうかもしれないな。よし、入ってみよう」
ラッシュ先頭で3人は花屋へと入る。すると、1人の店員が挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ。花屋ローズへようこそ」
男3人は店員と対面する。そしてラッシュが聞きたいことを聞き出す。
「俺はアメリカ軍のウィリアム・ラッシュ大尉だ。部下がここでヒヤシンスの球根を買ったということで、1つ聞きたいんだが」
「球根ですか? あの…どんな方ですかね?」
「エリザベス・コンウェイという金髪の女だ。心当たりは無いか? 球根を2個買ってきたんだが」
「コンウェイさん…? …ああ、その方なら確かにここに来店されましたね。良く覚えてますよ。…あ、そうだ。私の紹介がまだでしたね。
ローズ・キムって言います。この店を経営してる韓国人です。よろしく」
続いて、VSSEの2人も自己紹介。
「ジョルジョ・ブルーノだ。よろしく」
「エヴァン・ベルナールだ。よろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします。ジョルジョさん、エヴァンさん」
すると、キムはラッシュが持ってきた球根に目を向ける。
「ヒヤシンスの球根ですね。それで…私にそのことで何かあったんじゃないですか?」
「ああ。実は栽培を始めてみようと思うんだが、1から教えてくれないか?」
「いいですよ。手取り足取り教えますよ」
キムは笑いながら言った。
花屋の中にはいろいろな種類の花が置いてある。当たり前だが。
ラッシュはキムに栽培の方法を教えてもらっている。一方VSSEの2人は店内を見回る。
すると、ジョルジョはレジのそばであるものを発見した。
「これは…拳銃か?」
それを見たキムは驚き、真剣な顔をして言った。
「このごろ犯罪が多くて…それで、自衛のために」
すると、それを見ていたラッシュがジョルジョを咎めた。
「今は関係の無いことだろう。キム、すまんな。続けてくれ」
「はい」
キムの講義が終わると、ラッシュはキムにお礼を言った。
「いろいろ教えてくれてありがとう、キム」
「どういたしまして。また来てくださいね」
その時、キムの後ろから金髪の女が現れた。
「先輩! 昼食一緒に食べませんか?」
「ああ、リー! この人達も誘って良いかしら?」
良く見ると、その金髪女はさっきのアクセサリーショップのバイトの店員だった。
「さっきの…そうか、2人は知り合いなのか」
「ええ。仲の良い友達ですよ。リー、自己紹介して」
「クリスタル・リーです。よろしく、ジョルジョさん、エヴァンさん、ラッシュさん。キム先輩とは、アメリカの市民権を取るときに知り合ったんですよ」
その一言にエヴァンは驚いた表情になった。
「へぇ、偶然って凄いな」
「ええ。それから身を守るために、銃器も購入しました」
そのリーの言葉を聞いたラッシュは、銃器売買の説明をする。
「多くの審査が必要だ。アメリカではな。身元をしっかり調査して、購入しようとする者が軽犯罪以上の罪を犯していたら、買うことが出来ないんだ。
ライフルは18歳以上、拳銃は21歳以上からだな。買うことが出来るのは」
今度はそのラッシュの言葉に続け、リーが説明を始める。
「法的に購入することができる銃器類はピストル及び長銃(ライフル、狩り用散弾銃)が可能ですが、オートマチック拳銃は販売されないんです。
銃器類は本人の家に保管することはできますが、携帯することはできない。
射撃場やその他の場所に移さなければならない時には、必ず弾と鉄砲は分離して運ばなければなりません。
でもそれはあくまで法律上の話。裏取引では安い価格でオートマチックの拳銃が手に入ります」
そのリーの知識にラッシュは感心し、拍手した。
「よく知っているな、クリスタルさん」
だが、クリスタルは手で拍手を止め、訂正を促す。「私を呼ぶときはクリス、もしくはリーでお願いします、大尉」
ジョルジョはそんな2人のやり取りを疑い深い目で見る。そして会話が終わった後、リーとキムがトイレに立っている間にラッシュに耳打ちした。
「何かを隠しているな、あの2人は」
昼食を済ませ、3人はキムとリーと別れる。
「ありがとう、今日は楽しかったです」
「こっちも楽しかった。また遊びに来るから、よろしくな」
「はい、いつでも待ってます。ではまた!」
ラッシュの久々の休暇は、とても満足の行くものとなった。
VSSEの本部に居るキース・マーティンに、ジョルジョは今日の金髪女の事で電話を入れた。
「…で、ジョルジョ、それは俺に言うことなのか?」
「ああ。あんたならわかるはずだ。銃器の説明があれほど上手い奴はたぶん軍人だろうな」
「その女の名前は?」
「クリスタル・リーとか言ったかな…」
その名前を聞いたキースの動きが止まる。
「…もしもし? キース?」
「…あ、ああ、すまない。その女なら覚えがあるな。3年前、彼女はSASに所属していたんだ」
「本当か?」
「ああ。それもかなり頭の良い奴でな。19歳でオックスフォード大学を卒業したとか言ってたな。それで特別扱いでSASに来たんだとよ」
「なぜそれを?」
キースはジョルジョの問いかけに、ポツリポツリと話し出す。
「4年前、イギリス国内で発生したとある事件で一緒に行動することがあってな。それで顔見知りになったんだ」
「じゃあ…何故SASを辞めたんだ? 彼女は」
「母親が辞めさせたらしいぜ。それで彼女は失意のあまり自殺を図った。でも間一髪で助かったらしくて、奴はまだ生きてる」
翌日、麻薬の密売事件が起こり、VSSEとラッシュが解決に赴いていた。
「大尉! 主犯はこの先にいるはずだぜ!」
ラッシュはその言葉に気を引き締める。すると、突然どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「また会ったな、ラッシュ大尉。今度はお友達も一緒か?」
辺りを見回していたラッシュの目に飛び込んできたのは、前にテロリスト達を倒したあの2人組「シティーハンター」だった!
「またお前らか!」
「そうだ。これは私達の問題だ! あんたらの出番は無い!」
その言葉に、ジョルジョが冷静な口調で言い返す。
「それは違う。君達のしている事は、ただの人殺しだ」
しかし、その言葉に対して2人は笑って返した。
「違うな。私達は主犯をただ気絶させただけだ」
エヴァンがギリッと歯軋りをし、2人に向かって叫んだ。
「くそっ…捕まえてやるぜ! 女だからって甘く見ていたが、容赦なんて必要ねぇな!」
「そう…なら、逆に後悔させてあげなくちゃね!」
VSSEの2人はラッシュに耳打ちをする。
「大尉、この2人は俺らが引き受ける」
「ああ。あそこまであんな言い方されたんじゃあ、黙ってらんねーよ!」
VSSEとシティーハンターの2人の戦いは互角。だが、痺れを切らしたのか赤いヘルメットの女が叫ぶ。
「埒が明かないわ!」
煙幕弾を地面に叩きつけ、シティーハンターの2人は逃走を図る。
「じゃあね!」
「させるかよっ!」
だが、逃がすまいとしたエヴァンに対し白いヘルメットの女が蹴りを入れる。その時、何かがはらりとヘルメットの横から落ちてきた。
「ま、待て…!」
だがシティーハンターの2人はあっけなく逃走してしまう。
しかし、ラッシュがその落ちた物を見て目を見開いた。
「…髪の毛…?」
「金髪だな…エヴァンのじゃないのか?」
ジョルジョが問うが、エヴァンは「俺はこんなに長くない」と言って否定する。
それを聞いたラッシュは一転、口元を歪ませて呟いた。
「そうか…これなら、シティーハンターが誰なのかわかるぞ!」
3日後。ラッシュはVSSEの2人と共に、軍の会議室で話をしていた。
「シティハンターの正体がわかった?」
「ああ。ベスがその写真をこっちに持ってきてくれるそうだ」
その時、コンコンとノックの音が静かな会議室内に響いた。
「エリザベス・コンウェイ中尉です、よろしいですか?」
「来たな、ベス。入ってくれ」
「失礼します」
ベスはプロジェクターを使って、髪の毛のDNAから暴き出したあの2人の正体を映し出した。
「これは…!」
「あ、あの2人!?」
「…やはりか…」
2日後、花屋ローズではキムとリーが何やら話し合っていた。
「もう潮時ね。後は最後の任務だけよ」
「そうですね…先輩」
キムが出発の準備に取り掛かろうとしたときだった。入り口に3人の男の影があった。
それはVSSEの2人とラッシュ。
そして、ラッシュは2人に対して驚きの言葉を口にした。
「ローズ・キム、クリスタル・リー。お前達を逮捕する」
その言葉にキムとリーは目を見開いたが、すぐに平静を装って聞き返す。
「何のことですか? さっぱり心当たりが無いんですが」
しかし、それに対してVSSEの2人が2枚の書類を見せる。
「悪いな。あんたらの髪の毛からDNAを採取させてもらった」
「もう言い逃れは出来ないぜ?」
キムとリーは言葉を詰まらせる。そして、ラッシュがとどめの一言を発した。
「もう終わりだ。シティーハンター」
しかし、キムとリーは笑いながらラッシュの言葉に返す。
「それなら仕方ないわ。いいよ。捕まってあげる。…捕まえられるのならね!」
キムはその瞬間、煙幕段を叩きつけて男3人の視界を奪う。そして余裕しゃくしゃくといった感じで呟いた。
「こんなのも予測できないのかしら…?」
キムとリーはバイクで逃走を図る。
「逃がすか…!」
「先輩、これからどうするんですか!?」
「セルシアと言う所に逃げるわよ。港にクルーザーを用意してあるからね!」
だが、そんな彼女達の後ろから1台のジープが追ってくる。そして併走する彼女達のバイクに追いついてきた。
「逃がさんぞ! シティーハンター!」
スピーカーからはラッシュの声が聞こえてくる。
「何で…しつこいわね!」
キムは舌打ちしながら呟いた。次にスピーカーから聞こえてきたのはジョルジョの声。
「降伏しろ。今降伏すればこのことは見なかったことにしてやる」
「誰が降伏なんかするもんですか…。リー! この橋を渡れば港よ!そこまで持ちこたえて!」
「はい!」
しかし、何といきなり橋が壊れ、バイクがバランスを崩す。そしてリーが…!
「リー!」
「きゃああああ!」
何とか間一髪でバイクを停止させ、キムはリーを引き上げる。しかしリーはその手を振りほどこうとする。
「な、何してるの!?」
「先輩、逃げてください!」
「何言ってるのよ!」
しかし、このままでは2人とも落ちてしまう…と思われた次の瞬間だった!
「全く、最後まで世話の焼ける奴等だ」
ラッシュが2人を一気に引き上げ、無事救出することに成功した。その横でジョルジョが壊れた橋を見て呟く。
「これはあんたらがしたことじゃ…なさそうだな」
だが、キムはラッシュ大尉を見て呟いた。
「この戦いは私達の負けよ。大尉、私を逮捕するんでしょ?」
しかし、ラッシュはそんなキムと、呆然としているリーに対して1発ずつ平手をかました。
「…これで勘弁してやる」
するとどこからかヘリのローター音が聞こえてきた。それは米軍のヘリだった。
「ヘリ…?」
そのヘリからは中年の男が出てきた。その男の顔を見た瞬間、VSSEの2人は目を見開く。
「上官…!」
初めてラッシュと遂行した、あのテラーバイトの任務の時に、最初に指令を送って来てくれていた上司であった。
「どうしてここへいらっしゃったんですか? まさか、キムと何か…?」
「…ああ。実は隠していたことがあるんだが…キムとリーは、1年前にVSSEの入隊テストに合格した、新人のエージェントだ。まだ今は見習いだが」
「何だって!?」
その言葉にエヴァンが声を上げた。
当の彼女達はというと、男3人に対し、今までの非礼と秘密にしていたことを謝った。
「すいませんでした。秘密にしていたのは…極秘の任務だったからなんです」
「そうだったのか…」
「かーっ! なんだよ! 俺らバカみたいじゃん!」
子供のようにどさーっと地面に寝そべるエヴァン。そんなエヴァンを苦笑いしながら見つつ、上司はキムとリーに向かって1枚の紙を手渡した。
「これは…?」
「君達のコードネームだ」
それを聞いたキムは、嬉しそうな表情で聞き返す。
「と、ということは…!」
「ああ、今日から正式に、君達2人はVSSEのエージェントだ」
「や、やったー!」
「あんたらも俺とエヴァンの仲間入りか。これからよろしくな」
「はい! それとジョルジョさん…今まですいませんでした」
リーが少し悲しそうな表情になったが、ジョルジョはくしゃくしゃと彼女の頭を撫でる。
「…気にするな。もう終わった事だ。…よし、なら上官。帰るとしましょう」
「…そうだな」
ここに、新たなエージェントが2人、誕生したのであった。
FIN