Kingdom last heir第20話(最終話)


地下へと下りて行ったグラカスとエリフィルは、大体20段程階段を

下りた後に現れた鉄製の小さなドアの前に立った。

「……中に誰か居るぞ」

「準備は良いか?」

「ああ、行ってみよう」

2人は顔を見合わせて頷くと、ゆっくりとドアを開けて中へと入り込む。

だがそのドアの奥で、2人は信じられない物を目にする事に!!


「……!!」

「へ、陛下!?」

ワインの貯蔵庫として使われている場所なのだろうこの地下室の奥には、

1つの椅子が置いてあり、そこにぐったりとして意識があるのかどうかすら

分からないレフナスが座っている。

「これはこれは、王国騎士団長達のお出ましか」

「すまないが今は取り込み中でね。ご退散願いたい」

そのレフナスを痛めつけているのは明らかに、レフナスの近くに立っている

2人の男……茶髪に茶色い目をして茶色い上着を羽織っている茶色が

トレードカラーの若い男と、同じく若い男でオレンジの髪の毛にオレンジの目、

オレンジの上着とあの情報屋の男と同じく全身オレンジが非常にイメージしやすい

男だと言うのがグラカスにもエリフィルにも分かった。


「絶対にやだね。俺達が何故ここまで来たか分かんだろぉ!?」

「貴様等は厳罰では済まない様だな」

その状況で全てを悟った2人の騎士団長はすでに臨戦態勢に入る。

「だったらどうする? 僕等と戦うのか?」

「よっぽど身の程知らずな様だ。それでも良いなら俺達も相手しよう」

2人の男は余裕綽々の様子でそれぞれ、茶髪の男が片手剣と盾を持ってグラカスに、

オレンジ頭の男が両手剣を構えてエリフィルに向かって来た。


茶髪の男のロングソードを受け止め、流し、逆にエリフィルは攻撃もする。

「くっ!」

足に向かって繰り出された茶髪の男の薙ぎ払いをエリフィルは少し後ろに下がりつつ

横に受け流し、そのまま流れる様に右足でミドルキックを入れてやる。

「うぐお……」

それによって後ろに若干よろける茶髪の男だったが、エリフィルは一気に茶髪の

男の懐へ飛び込んで肘をのどに入れる。

「ごっ……?」

そしてのどに1発入れられたとは言え、茶髪の男も何とか持ち堪えて振り返り

再び片手剣を薙ぎ払うが、咄嗟にエリフィルも身体を後ろに反らせてその薙ぎ払いを

弾く形でガードし、再び茶髪の男の懐に飛び込む状態に持って行きつつ

右の肘を茶髪の男のみぞおちに思いっ切り打ち付ける。

「ぐお!?」


ドスッと言う音と共に茶髪の男のみぞおちにエリフィルの肘が突き刺さり、それにより

くの字に身体が折れ曲がった所に止めとして、エリフィルのロングソードが茶髪の男の

身体に向かって薙ぎ払われた。

「がっ……」

茶髪の男はそのまま腹から地面にうつ伏せに倒れこんで絶命してしまい、

エリフィルがこのバトルを制したのである。


一方のグラカスはオレンジ頭の男となかなか良い勝負を繰り広げる。

ロングソードに比べればオレンジ頭の男の使う両手剣はパワーがあるのでそのパワーを

なるべく活かせない様にする作戦を取る。

パワーがある分大きくて重いので「超」接近戦には余り向いていない。

そこで両手剣の攻撃を上手く弾いたグラカスは一気に男の懐へ飛び込み、その男の

腹目掛けて2発左の鉄拳を繰り出す。

「ぐお、うぐぉ!」

それによってオレンジ頭の男が怯んだ所に、下段右回し蹴りでグラカスはオレンジ頭の

男の足を払い飛ばした。

「ぬおっ!!」

地面にうつ伏せに叩きつけられたオレンジ頭の男は、追撃をかけようと繰り出された

グラカスの左足を転がって回避して立ち上がろうとしたが、グラカスの右足がその

オレンジ頭の男のアゴを立ち上がりかけた所で思いっ切り蹴り上げる。

「ぶぐぉ!」


蹴り上げられた事で身体も縦に半回転し、そんな半回転する

オレンジ頭の男の背中が自分の方に見えた所でグラカスはその背中に

右足で前蹴りを思いっ切り叩き込んでぶっ飛ばす。

「ぬおあ!?」

ぶっ飛ばされて地面に再びうつ伏せに倒れ込んだオレンジ頭の男は

それでも何とか起き上がろうとしたが、グラカスは追撃で空中で身体を前に

回転させながら足をオレンジ頭の男に叩きつけようとする。


「うっく!」

何とか気力を振り絞ってそれを転がって回避し、低い体勢から両手剣を突き出す

オレンジ頭の男だったが、それよりも速く同じく低い体勢のままグラカスは避けつつ

逆にオレンジ頭の男を目掛けてロングソードを突き出す。

「ぐぷっ……!」

変な声がオレンジ頭の男から漏れて絶命し、動かなくなったオレンジ頭の男を見下ろして

グラカスはすぐに踵を返してレフナスの元へと向かった。



その後、レフナスが生きている事が確認されたが手の指が3本へし折られていたのと

身体のあちこちにキズが出来ていた事ですぐに王宮医師によって手当てが行われ、

それから2ヶ月は執務にも多大な影響が出ていた。

その間にレフナスから聞き出した話によると、あの誘拐した連中はレフナスがこの

シュア王国で見つかった伝説のドラゴンにまつわる遺跡の封印を解く事が出来ると

思ってレフナスを誘拐した事、結局はあの情報屋も酒場の連中も全員グルだった事、

レフナスがその出来もしない封印を解くと言う要求を拒否したら指を折られた事を

聞き出す事が出来た。


また、追加情報として酒場で逮捕した赤毛の男のアーヴィサートが自白した所によれば、

あの倉庫の爆発にグラカスとエリフィルが巻き込まれなかった理由についてはまず、事前に情報屋の

エーノヴィッツからその騎士団員が倉庫に向かうと連絡を受けていたあの眼鏡の男のジュレラムと

赤毛の弓使いザヴァリーが、上手く爆弾が起動するかどうかと言う事を確認しに来ていたのであった。

その過程で運悪く先にやって来てしまったメリラ達が倉庫の中に入って行くのを見てグラカスとエリフィルだと

勘違いし、セフリスの予想通り時限式の爆弾を作ったまでは良かったが割と早めに爆発までの時間を

セットしていたせいもあって、あの爆発にメリラ、バリスディ、アーロスが巻き込まれてしまったらしい。


「伝説のドラゴンか……全く、そんな伝説なんてとっくの昔に滅んだ奴だろ?」

「そうだな。勘違いもはなはだしいものだ。伝説にすがった人間の末路か」

実際に昔は伝説として、人間の言葉を理解する事が出来るドラゴンが7匹居たと言う

物が残っているのだが、今ではその住処とされている遺跡が発見されているだけでドラゴンの

封印等については全くと言って良い程研究が進んでいなかったのであった。

そんな人間達の欲望に巻き込まれたレフナスを自分達は今度は絶対、何があっても守るのだと

決意した王国騎士団長の2人は、あの爆発に巻き込まれながらも全員無事だった

部下や仲間達と一緒にまずは王国中の警備体制の徹底的な見直しをスタートさせるのであった。



Kingdom last heir 


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