Future World Battle第3部第20話


そうして考え込んでいる内にマドックはどうやら眠ってしまった様で、結局その後1時間経ってから目が覚めた。

(ううむ、眠ってしまったか……)

ベッドから起き上がって、そのベッドの横に備え付けられているデジタル時計をチェックしてから

うーんと伸びをして意識を覚醒させる。

疲れはもう大分取れたので、そろそろ動かなければニコラスと意見交換をする時間も

どんどん無くなってしまうと判断したマドックは第5分署の医務室から出て自分の部署へと向かった。

厳重なセキュリティを潜り抜け、更にその奥にあるロッカールームに向かうには先程マドックが自分で

思い返していたのと同じ様にまたもや指紋や網膜の照合セキュリティが設けられている。

それだけあのアーマーは「ギルド」と言うヴェハールシティ最強の刑事達に与えられた、

最先端のテクノロジーが搭載された装備だと言う証にもなる。


そのロッカールームに向かってみると、そこには既に同じ事を考えていたのだろうかニコラスの姿があった。

「おお、マドック。どうだ調子は?」

「俺はもう問題無い。御前の方こそもう平気なのか?」

「心配ねーよ。それよりもその顔を見ると、どうやらお前と俺の考えている事は似た様なもんらしいな」

正式にコンビを組んだのはこのギルドに入ってからとは言え、やはりこれだけ付き合いが長いとなると

考える事は似通って来る様だとマドックは改めて認識する。

「そうらしい。御前もこのアーマーが気になるんだろう?」

「ああ。あの時あの野郎がスイッチか何かを押して、それで俺達がビリビリ痺れやがった。

あんな事は今まで初めてだったからな……」


だからこのアーマーに何か細工がしてあるんじゃないか、と思ってこうして確かめに来たんだとニコラスが

言って来たので、マドックは医務室で考えていた事を取り合えずニコラスにぶちまけてみる。

「……はっはーん、なるほどなぁ。確かにここのセキュリティは色々複雑だし、めんどくさいってのも

あるから簡単に外部の奴等が入れる訳はねーんだよなぁ」

「ではアーマーに細工をするとして、ニコラスならどうする?」

マドックから突然そう質問を振られ、ニコラスはアーマーにチラリと目をやってから腕を組んで考える。

「俺だったらそうだな……俺達がこのアーマーを着ている時に何処かで襲い掛かって細工をするかな。

だけどそれは俺達に顔を見られる可能性があるし、こっそり細工をするのは不可能だろう。

さっき御前もその考えを少し俺に言ってくれたからこう考えたってのもあるんだけどな」

「やはりそう考えるのが妥当だな」


納得するマドックに対して、今度はニコラスが口を開いた。

「そう言う御前はどうなんだよ?」

「俺ならばここのシステムにハッキングをしてIDを強引に解除するかも知れんが、こうしたセキュリティシステムも

俺達が生まれた頃の90年代ならいざ知らず、2030年の今では大分進化しているから

なかなかそう上手くはハッキング出来ない筈だ。それに……」

「……それに?」

そこまで言って黙ってしまったマドックに、続きをせがむかの様な口調でニコラスが問い掛ける。

「それに、なんだがな。どうしても腑に落ちない点がある」

「そりゃーどう言う事だ?」


尚も問い掛けて来るニコラスに、マドックはあの駐車場で若い男2人と対峙した時の事を思い出してみる様に言う。

「あの男達はやたらと落ち着いていた気がする。それはあの痺れる状況になる前……つまり、俺達が

フラッシュバンを投げ込んだ時から始まっていたと思う。あの時……取り引きをしていた連中は

俺達がフラッシュバンを投げ込んだ事によって大半が無力化された。しかし、あの若い男2人と

その部下数人はすぐに反撃して来ただろう?」

マドックのセリフに対してニコラスはハッとした顔つきになる。

「……まさか……あいつ等は、俺達があの取り引き現場にやって来る事を最初から考えていた?」

「恐らくはな。それからあの最初の取り引き事件の現場だったタワービルに残されていた、あのメモ。

あのメモはデジタルで制作されたから筆跡鑑定は無意味でも、あのメモによって俺達はあの駐車場で

取り引きが行われる事を掴んだ訳だ」


「じゃあ、あいつ等の目的は取り引きもそうだけど……もしかして……」

ニコラスもマドックも、うっすらとではあるが連中の目的が何だか見えて来た気がする。

「取り引きをするのも目的の1つだろうが、本当の目的はもっと別の場所にあるんじゃないかと俺は思う」

「……そう言われてみりゃあそんな気がして来たぜ。あのメモを使ってわざわざあの場所に俺達警察を

呼び出す様に仕向けていたかも知れないって事だろう? それが正解だったとしたら目的は俺達警察に

対しての挑戦なのか、あるいはもっと別に何かあるのか……って所じゃねえのかな」

「それもこれもまだ推測の域を出ないが、もしそうだとしたらかなり穏やかでは無いな」

とにかくあの若い男2人の行方を捜すのが今は重要な事なので、そこから捜査を2人は進める事にした。


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