Future World Battle第3部第1話


日本人のグループによる自動車窃盗事件解決から1ヶ月後。

予定通り、ヴェハールシティ警察のセントラル地区……この街の政治や経済の

中心部にある第5分署に新部署が設立される事になった。

その部署は一般的な警察官では手に負えない事件を担当する事から、

「特別犯罪刑事部」……通称「ギルド(特犯部)」が設立された。

このギルドと言う名称はヨーロッパのギルドから名付けられており、ヴェハールシティの全警察で

最先端の装備を独占している特別な部署なので「独占」の意味を取ってこう名付けられたのだった。

そして、そのギルドのリーダーとしてニコラスが抜擢された。

相棒は警察学校時代からの腐れ縁であり、1ヶ月前の自動車窃盗事件を一緒に解決したマドックだ。

本当に立ち上げたばかりの新規の部署である為、装備も整ったばかりだし実績なんて当然ゼロである。

つまりこれから先の活躍次第で、このギルドが無くなってしまう可能性も十分に考えられるのだ。


専用のボディアーマー……と言うよりかはパワードスーツと言う方が正しいかも知れない装備も設計され、

今までの青と赤の服装から明らかにゴツゴツとした外見の装備へと一目で分かる様に

変更されたニコラスとマドックの2人。

最新テクノロジーの宝庫で武装されたこのボディアーマーは動きづらくはなったものの、システムとしては

着用者の能力が十分に引き出せる様になった。

具体的には筋肉や身体能力が高まる様に、ボディスーツにインプットされているプログラムが

着用者の細胞を分析。そこに人工筋肉繊維を埋め込んだ下地と、銃火器類への犯罪対策として

新設計の胸当てや膝当ても装備。銃を腰にぶら下げる為のホルスターも一般の警察官が

使っている革製の物では無く、金属製の専用設計であるのでよっぽどの事が無い限り破損する事は無い。


また幾ら刑事として鍛えているマドックでもそれ以上の手練れ、そして多人数が相手の場合で

端末を奪われると言う事があった過去を踏まえ、今回のボディアーマーに関しては

端末を内蔵するシステムに切り替えた。

指紋と眼球認証で起動し、手の平を上に向けて腰に着いているボタンを押す事でホログラムが生まれる。

そのホログラムが端末代わりになり、今までの持ち運びが出来るタブレットと違ってスペースも要らなくなったのだ。

このボディアーマーは装備を簡素化されて一般の警察官達も装備出来る様になるとの話らしいのだが、

今はまだ小型化や軽量化をするのがなかなか難しいらしく、若干ゴツくなってしまうのは仕方無いらしい、と

ニコラスとマドックは聞いている。


ヴェハールシティポリスのイメージカラーである白と黒のカラーリングで構成されたこの

ボディアーマーに身を包み、いよいよギルドの仕事がスタートした。

街の規模が大きくなるにつれて犯罪が増えるのは何処の街でも大体同じ様なものなのだが、

このヴェハールシティも例外では無い。2人がこの街に引っ越して来た時はまだまだ片田舎と

言うイメージだったのだが、今では高層ビルが至る所に立ち並び、港の開発やハイウェイ開通も

終わり、ロサンゼルスやニューヨーク、それに同じテキサスのヒューストンと言った大都市にこそ

及ばないもののそれなりの規模の街として栄えている。

引っ越して来た時から比べてみれば大きく様変わりしたこの街で、警察もまたこうしてギルドと言う

新たな部署を設立した事により進化しようとしているのだ。

今までの2人がやっていた事と言えば、現場に出て聞き込みや銀行強盗鎮圧への参加等と

言ったものが大半だったのだが、今度の部署ではそれ等にプラスして敵のアジトに潜入する

偵察任務、強行突入の先陣を切る突破口の役目等と言う様に今までよりも危険性や

専門性に特化した役割が与えられる。

だからこそこうしてボディアーマーに身を包み、ギルドの刑事がヴェハールシティの中で

最強の刑事達であると言う責任を負う事になるのだ。


その最強の刑事2人が最初に請け負った事件は……。

「それじゃ、俺達はこれで」

「ああ、どうもね」

パトロール中に見かけた、信号待ちで停車している車の運転席に銃刀類を突き付けて

金品を強奪する白昼堂々の路上強盗だった。

老人が1人でドライブする事も珍しく無いので、そこを狙った悪質な強盗が若者を中心に

行われるのは良く聞くケースだ。

記念すべき……と言うのは余り良いものでは無いが、これによってギルドが解決した初めての事件は、

この老婆が運転する車を狙った路上強盗だった。

基本的に何もやる事が無ければ、パトカー勤務の警察官と同じ様にシティ中を巡回してパトロールである。

デスクワークに関しては人員不足になる位の大きな事件で無ければ、事件の結果報告位であれば

紙の書類では無く現場から直接規定のフォーマットに事件の内容やを記入して、

暗号回線として報告書で提出するだけだ。

それ以外のデスクワークは、現場で解決出来る事件では無く地道な捜査が必要な事件の事を

纏める時にどうしてもやらなければならない事等がそれに当たる。

テクノロジーが進化したとは言えども完全にデスクワークが無くなった訳では無いのだ。


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