Future World Battle第2部第12話


「これで良し……っと」

「この街じゃもう引き上げないとダメだな。こっちの動きを捕捉されている以上、何時警察の連中が

やって来てもおかしくねえ」

「俺達は顔も見られてる訳だからな。さっさと荷物纏めて船に向かいましょう」

「こんな事ならさっさとあの刑事を殺しておくべきだったわね」

郊外の廃墟で4人の男女が話し合っている。

その4人は同じ国からやって来て、このヴェハールシティで色々な車を盗み出しては他の国の

クライアントに対して売り捌くビジネスを行っていた。

今まで色々な国や街を荒らし回って来ている国際指名手配されているグループ。

……の筈なのだが証拠不十分だったりなかなか尻尾が掴めなかったりして、グループメンバーの

詳しいプロフィールすらも良く分かっていない。


その裏には、警察さえも封じ込めてしまえる程の強力な圧力をかけられる組織の存在があった。

しかしその組織の人間が、この新興都市にやって来て油断してしまったのが今回のミスの発端だった。

最先端のテクノロジーを存分に使用している都市と言う事で、十分に観光を楽しむのと同時に何処で

どんな車を盗み出すかの目星もつける。

勿論それとは別に計画実行の1週間前から色々と準備をして、それから警察のデータベースにもアクセスをして

警察関係の方の情報も手に入れるべく動いていたのだが、いかんせん全ての警察官のプロフィールを

覚えていられる筈も無い。

それにこのヴェハールシティはそれこそヴェハールシティポリスの地元なので、アウェイな環境で行動するに

あたって想定外の事態は付き物だった。


このヴェハールシティで徒歩で移動するのには時間が掛かり過ぎる。

かと言って不用意に地下鉄やバスに乗り込んでしまえば、街の至る所に設置されている監視カメラに

何時自分達の顔が映り込んでしまうかも分からない。

だからその組織が所有している、車も運搬出来る大きさの船で自分達の移動用の為にわざわざ

自分の車を運んで来ると言う荒業を取っている。

この方がばれるのでは無いか? と思われがちだが、アメリカ国内でレンタカーを借りてしまえばそれだけで

足がついてしまうし、こちらの移動用の為だけに車を置いておくのもリスクが高い。

それから飛行機で車を空輸するのは金が掛かり過ぎるし、例え出来たとしても空港では色々とチェックが

厳しい上に空港のゲートを必ず通らなければいけないのでそれで潜入がばれる恐れもある。


なので出した結論としては船しか無かった。

組織は垂直離着陸機(VTOL機)も所有してはいるものの、それはあくまで最後の手段として待機させているに過ぎない。

船ならば港にこっそりと接岸する事も出来るし、独自に開発したレーダー妨害システムでレーダーに

探知されない様にするのも万全の対策としてある。

現在はVTOL機で何とか空輸出来ないかを試しているものの、そちらのシステム対策はまだまだ時間が

掛かりそうだとの事で今回もこうして船でヴェハールシティにまでやって来た。

そうしてこの1か月間でじっくりと下調べをし、目星を付けた車もあらかた盗み終わったので引き上げようとした矢先に

あの刑事に目を付けられてしまった。

更にその刑事を口封じの為に殺そうとした矢先に、応援の警察達が到着してしまったので殺す事も出来ずに

さっさと逃げるしか無かった。

こんな事は初めて……と言う訳では無いのだが、ここまでのレベルの大失態は初めてである。


この4人組が持って来た車はそれぞれ自前の車4台。

その内2台を実際の犯行に使用し、残りの2台は警察に追跡された時の為に逃げ切る為のカモフラージュ用の車だった。

そして2人1組で行動しているこの4人組の他に、たまにしか一緒に着いて来ないものの組織の中ではかなり

信用されている部類の人間が今回はメカニック達と一緒について来ている。

「早く港に向かいましょう」

4人組の内の眼鏡の男が他の3人に提案するが、茶髪の女がそれを渋る。

「そうしたいんだけど……メカの人に車持って来て貰うには結構距離あるわよ、ここまで」

そんな茶髪の女を冷ややかな目で見ている金髪の女が、感情が感じられない口調で茶髪の女に指示を出す。

「でも仕方無いわよ。早く連絡して」

「う……うん、分かった」


それを見ていた体格の良い男がボソッと呟く。

「尾行されたのは真理のせいだろうが……」

「……何?」

真理と呼ばれた金髪の女が、その呟きを聞き逃さずに低い声で体格の良い男に詰め寄って行く。

「言いたい事があるならはっきり言えば良いじゃないのよ、躍人さん」

ちょっとだけ感情が見える様な、しかし顔は無表情のままで真理が躍人と呼ばれた男に体格差なんて

関係無いとばかりに腕を組んで躍人を見つめる。

詰め寄られた方の躍人は、ブチッと何かが頭の中で切れる音がした。

「あぁ!? お前のロードスターが尾行されたせいでこうなったんだろ? 何で尾行されたかは知らねえけど、とにかくお前のミスで

こんな事になってんだろうが。なのに偉そうに連絡しろとか言ってんじゃねえよ。連絡はお前がしろってんだ!!」

「ミス……? 私、何かミスしたかしら? さくらちゃん」


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