Future World Battle第19話


「それでスナイパーからの攻撃が止んだって事か。協力には感謝するが、余り無茶をするなよ。

君はあの組織の事を知っている大事な頭脳を持っているんだ。俺達だって事件を解決したい

気持ちは一緒だから、その頭脳も、君と言う存在も大事にしたい」

「あら、それって口説いてるの?」

何処か茶化す様に言うティアナだったが、ニコラスの目は本気だった。

「そうかもしれないな。しかし、そんな話は今この場ではしない。とにもかくにも質問は俺からは

これで終わりだ。君から俺達ヴェハールシティ警察について聞いておきたい事とかはあるか?」

その質問にティアナは「なら1つだけ……」と手を挙げた。


「お、何だ?」

「この警察署の近くに安く泊まれるホテルは無いかしら? 出来ればセキュリティもそれなりに

しっかりしている所が良いんだけどね。捜査費用はパリ警察から出ているとは言え、余り費用を

使い過ぎるなって釘を刺されてるから。前に泊まっていたあのホテルだと、私は騒ぎを

起こしちゃったから居辛くなっただろうし」

だが、そんな彼女の質問にニコラスは意外な形の答えを返した。

「いや……あのホテルには俺達警察がもう話をつけた。だから大手を振って戻る事は出来るぞ」

「え、本当に?」

「本当だ。あのホテルで起こした騒ぎは今回の手助けとこれからの協力で全て相殺だ。

だから君はあのホテルに戻っても良い。勿論荷物も部屋もあのままだからな」


と言う訳で長時間に渡った取調べと言う名前の質問タイムもこれにて終了し、

ティアナは自分が泊まっていたホテルまでニコラスのマスタングパトカーで送って貰う事になった。

「結構この車はパワーがありそうね」

「アメリカ車だからな。この国の人間は遅かったらエンジンをでかくしてパワーを上げれば

良いって言う考え方だから、小型車が多いヨーロッパの車事情とは違うだろう」

「そうね。それにヨーロッパはアメリカと違って狭い道や入り組んだ道も多いから、こうした車が軽快に

走るのは大変そう。でも裏を返せば、こう言った車はいかにもアメリカらしいと言えばアメリカらしいわよね」

「そうだな。ちなみに日本と言う国では、燃費が悪くてうんざりされるって事を聞いた事があるな」


そんなたわいも無い会話をしながらホテルに辿り着いたマスタングのパトカーは、

9番アベニューのメトロキャッスルホテルに辿り着いた。近くには13番アベニューや

11番アベニューがあるのでそれなりに高層ビルが立ち並んでいるのがここからでも分かる。

「送ってくれてありがとう。また何か情報が掴めたら連絡するか、そのまま警察署に行くわね」

「ああ。でも俺は分署に居ない事も結構あるから、出来れば電話で連絡をくれた方が

効率良く連絡が出来ると思う」

「ん、分かった。それじゃ私もなるべくそうするわ。それじゃまたね」

バイ、と彼女が言ってそのままホテルの入り口へと消えて行くのを見届けたニコラスも、

自分の所属する分署へと戻る為に再びマスタングのハンドルを握り締めた。


そうしてそのまま分署へと戻り、数日間はこれまでの事件の洗い直しをしたり

ヨーロッパの各警察からその組織の事に関するデータを送って貰ったりと言う事で

ニコラスの仕事も一杯一杯であった。

それでも何とかニコラスは仕事を片付けて行くと同時に、段々とこのヴェハールシティを

騒がせているその組織の規模や今までの犯罪履歴も分かって来た。

(確かにヨーロッパ全土で活動していると言うのは間違いでは無いみたいだな。西は

ポルトガルから東はロシアのサンクトペテルブルクまで。これだけの大規模な活動を

していれば、ヨーロッパ中から目の敵にされてもおかしくは無いみたいだな)

全くとんでもない奴等がこのヴェハールシティに来てしまったものだとニコラスはうんざりしながらも、

引き続き組織の情報を集める為に自分のデスクのデータに向かうのであった。


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