Erudin Battle Quest第5話
(な、何だ今の声は・・・・)
奥の方から絶叫や罵声、そして騒々しい足音が聞こえてきたので栗山はそっちに向かって走る。
と言うか、どう考えてもあの声は・・・・・・。
(ラスタン・・・だよなぁ?)
一体何を仕出かしているのだろうか、と栗山は不安になり、走るスピードを上げて騒がしい場所を目指して行った。
人間相手に剣を振るのは初めてのラスタンに容赦なく男達は襲い掛かる。
幸い通路は囲まれるほど広い幅ではない為大人数を相手にする事もないが、相手を殺すのには躊躇ってしまう。
なるべく足や腕をかするように剣を振るが、なかなか向こうもこちらの思い通りには動かない。
ベルトから外した鞘で相手のパンチや蹴りを防いでいてもずるずると後退してしまう。
結局ラスタンは追い詰められるように背後の部屋へと誘導されていた。
(・・・あっ、あれは・・)
物音と声がする方向へ走っていた栗山の視界に飛び込んできたもの。
それは数人の男に追い詰められているラスタンの姿だった。まさに多勢に無勢だ。
あの路地裏の時と同じ状況であるが、今はまだラスタンに気が行っているのか自分は気づかれていない。
なので栗山は近くに落ちていたハンマーを拾い上げ、まずそれを思いっきり男達目掛けてぶん投げる!
「うわっ・・・。」
通路と部屋の段差によろけるも、体勢を崩さないように部屋へと片足を入れる。
相手に威嚇の素振りをしながらラスタンは横目で部屋の広さを確認した。
中は思った程広くなく、様々な工具が床に落ちていたり、見た事もない機材や鉄の棒が散乱している。
敵に囲まれる心配が頭の中でうっすら消え去っていくのと同時に、敵の後方が騒がしい事に気が付く。
ハンマーは男の1人の頭に当たって、その男はどうやら気絶してしまったようだ。
そのままの勢いで栗山は男達に向かって突っ込む・・・・訳は無い。
多勢に無勢なのは変わりないので、そのまま突っ込むことはせずにまず向かって来た1人の男を先制の前蹴りで蹴り飛ばす。
そのまま別の方向から向かって来た男を肩の関節を外しながら投げ飛ばすエグいテクニックで戦闘不能にし、
間髪入れずに後ろに宙返りをしてけん制。 そのまま先程投げたハンマーを拾い上げ、続けて向かって来た男の1人の股間を
容赦無く蹴り上げ、男が苦痛で屈んだその後頭部に全力でハンマーを振り下ろした。
後ろを気にしていた男達の隙を見て、床に転がった鉄の棒を鞘と交換して手にしたラスタンはこちらへ顔を戻した
男の頭目掛けて鉄の棒を振り下ろした。 低く鈍い音と同時に男は崩れ落ち、地面へと体をくっつける。
間髪入れずに立ち向かってくる男の攻撃を剣で食い止め、左手に持っている鉄の棒を男の腹へ突く。
利き手でないのが災いし、相手の男はよろけるも鉄の棒を手で握り引っ張った。
そのまま男の方へ体が引き寄せられ、バランスを崩したラスタンの背中に男の両肘が勢い良く落ちてくる。
男達はまだすぐ目の前の部屋の中に居るらしい。 なのでその入り口を塞いで背中をこちらに向けている男の
膝の裏をハンマーでかっくんして、膝をついた男に栗山はハンマーから手を離して今度は素手で首をへし折る。
そこからハンマーを持ち直してみると、部屋の奥ですったもんだしている連中の中に見覚えのある茶髪が。
(あっ、ラスタン!!)
ラスタンの背中に男がまとわり着いているので、栗山はその男目掛けてハンマーを両手でぶん投げてヒットさせた。
背中に受けた攻撃があまりに強烈だった為、ラスタンは地面に手を付き倒れこむ。
すぐに体勢を整えなければやられてしまうのは分かっていたけれど、打ち所が悪かったせいか呼吸がうまく出来ない。
見つめていた地面の影が濃くなっていくのを見て、ラスタンは男の攻撃を覚悟した。
背中に再度感じた衝撃はさっきのものとは全く異なり、何かが自分の上に被さってきたような感触だった。
それでもその重みに耐えられなかったラスタンは被さってきた男の下敷きになり小さく唸っていた。
「おおい、大丈夫かぁ?」
ハンマーが直撃して気絶した男の下敷きになり、バタバタともがくラスタンに声をかける。
しかしどう考えてもどう見ても大丈夫では無さそうなので、男の身体を蹴り転がしてラスタンを救出。
ラスタンは何とか大丈夫だったようだが、どうやらまだまだ敵は居るらしい。
そして栗山は視線を下げて気がついた。ラスタンのロングソードに血がついていないことに・・・・・。
「・・・もうだめかと思いました。」
突かれた背中をさすりながら、ラスタンは鞘を拾ってベルトに戻した。