Erudin Battle Quest第3話


「えー・・・・そのお尋ね者達は神出鬼没だって?」

聞いた話によれば確認できているだけでもざっと50人以上、そして畑荒らしから大規模な強盗まで場所や

時間を選ばずにやっているタチの悪い連中らしい。想像していたよりも遥かに多い人数で、ラスタンの顔が途端に青ざめていく。

最悪の場合その人数を一気に相手にしなければならない訳で、自分の技量に自信のないラスタンは自信を喪失してしまう。

「ご、ご・・・50人以上も・・・そんなに大勢の人間と戦った事ない・・・。」

魔獣ですら仲間と共に戦ってきたのに、それも今度は生身の人間達と1人で剣を交えるかもしれない。

”盾”すらいないこの状況で、ラスタンは依頼を遂行できる可能性を見出せなかった。

「不安そうな顔をしているみたいだけど、こう言う時には自信を持つ事が大切だ」

栗山はとにもかくにも、まずはそのお尋ね者達の情報を集める為に街を駆け回ることにする。

ラスタンと手分けして街を歩き回ることにしたのだ。

「それじゃあある程度情報を集めて、大体30分後にこの警備隊・・・じゃなくて警邏隊の詰め所前に集合だ。

自分の腕前に不安を感じたら勝負は負けだ。俺は自分の腕前に自信がある!」

そう言い残し、ラスタンにひらひらと手を振って栗山は歩き出していった。


栗山の後姿を呆然と見送っていたラスタンだったが、頭の中で彼の放った台詞が何回も再生されていた。

「自分の腕前に・・・不安を感じたら、勝負は負け・・・。」

萎縮していた心は次第に和らぎ、ラスタンの瞳に僅かながら輝きが戻ってくる。

顔を両手で強く叩いて気合を入れると、栗山とは逆の方向へと駆けて行った。

町の人達へ手当たり次第にお尋ね者について尋ね、少しでも情報を引き出す。

栗山は栗山で街の人間に情報を聞きまわっていたが、その途中で思いもよらない事態に巻き込まれることに。

(ん? 何だあいつは・・・・・)

酒場の裏の路地のほうから何だか騒がしい音が聞こえてきたのでついそちらのほうへと目を向ける。

そこには10歳くらいの女の子の髪を掴んで強引に連れ去ろうとしている男達の姿が。

元の世界では警察に通報したい所だが、この世界では電話も通じなければ今にも女の子が連れ去られてしまいそうなので、

何も失う物が無い栗山はその男達の方へと向かって歩き出していった。


「そうなんですか、お孫さん優しいんですね・・・。」

一方のラスタンは話を聞いていた老婦人に捕まり、長時間の立ち話を強いられていた。

折角気を引き締めて町へ繰り出した途端で拍子抜けしていたが、その孫の姿が先程から見えない話になり、ラスタンはその子供の行方を捜す事になった。

どこかで遊んでいるのかと最初は思っていたけれど、老婦人の話によればおつかいを頼んだ時はいつもすぐ帰って来ると聞き、胸騒ぎがした。

孫の女の子の特徴を出来るだけ詳しく聞き、ラスタンは老婦人の家を確認してから町の中を走り回った。

その頃栗山は何とか女の子をかくまいながら4人の男を一気に相手にする。

狭く細長い裏路地のため、1対1の状況に持ち込みやすいのだが人数差がある分こちらが圧倒的に不利だ。

それでも何とか殴りかかってくる男達の攻撃をかわし、カウンターヒットでパンチを入れたりキックしてきた足を取って足払いをかけたりする。

しかしそれも長くは続かず、背中にキックを入れられて体勢が崩れた所で今度は別の男に顔面パンチを食らう。

そして別の男にまたパンチを貰い、栗山はあっけなく倒されてしまった。


「栗山さん!」

町の中をくまなく探していたラスタンの視界に入ったのは、路地裏に倒れていた栗山だった。

急いで抱き起こそうとしたが、その先に探していた女の子の姿を発見し、少女の手を今まさに掴み連れ去ろうとしている男へ駆けながら剣を鞘から抜く。

鞘から引き抜かれたロングソードを見ると男達の様子が一変し、少女の手を離してラスタンへ背を向け逃げていく。

女の子に老婦人の元へ帰るよう促し、少女の姿が路地裏から消えたところでラスタンは栗山の傍へ駆け寄り、背中に手を置き抱き起こす。

「あー・・・すまねぇ、やられちまったぜ・・・・」

全く情けねーなー・・と言いながらも、呼吸を整えて服の汚れを払いながら栗山は立ち上がる。

そしてラスタンから聞きだした話によれば、さっきの女の子はラスタンが立ち話をしていた民間人の娘だと言うことがわかった。

と、ここで栗山が1つの案を思いつく。

「そうだ、さっきの女の子にさっきの奴等の話を聞いてみれば、何か分かるかもしれないな!」

「あの子の家なら、さっき聞いたから分かります。」

ラスタンは床に置いていたロングソードを手に取り、鞘へ戻した。

「案内します、一緒に行きましょう。」

2人で老婦人の家へと足を運ぶ最中、ラスタンは栗山の怪我を心配していた。

こんな時回復魔法が使えれば、自分もそれなりに役に立てたのにと歯をかみ締める。

「え? 怪我? いや別にこれ位何とも無い」

傭兵だった頃はこれ以上の怪我を沢山してきたと栗山は歩きながら話す。

殴られる、蹴られるは当たり前で骨折もしたし爪をはがされる拷問まがいの事もされた事もある。

それから1時間以上の集団リンチを受けた事もあれば、仲間の居場所を吐くまで急所を外して小口径の銃で撃たれると言う尋問もされた。

それでもこうして生きているのはある意味奇跡だな・・・と栗山が思い出に浸っていると、ラスタンが唖然とした

顔をしていたのであー・・・やっちゃったかと頭の中で思うしか無かった。


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