読み切りコラボ車小説第5作目(最終話)

リア友&Mリア友Sとのコラボです。


登場人物

松本 明政(まつもと あきまさ)−リア友M

吉川 信吾(よしかわ しんご)―リア友S


2015年2月14日。世間ではバレンタインデーのこの日に2人の

北海道民がアメリカに旅行にやって来た。1人はBH5レガシィに乗っている

フリーカメラマン兼某テレビ局のプロデューサーの吉川信吾。そしてもう1人は

チューニングショップを経営しているEG2のCR−Xデルソル乗りの松本明政だった。

と言ってもこの2人はまだアメリカに来た時点では出会っておらず、

街中のワインディングで信吾のレガシィがトラブルで止まってしまっている所から

ストーリーが始まった。


2人がやって来たのはアメリカのキャロラインシティと呼ばれる比較的大きな地方都市。

港湾部に面している海沿いの都市であるが、ワインディングも郊外に行けばあるし

リゾート地としても隠れた人気の街として知られている。

信吾はフリーカメラマンとしての仕事で訪れ、明政はアメリカのチューニング事情を調べに

この街へとやって来たのだったが、ワインディングで風景の写真を撮ろうと思っていた信吾の

レガシィがいきなりストップしてしまったのであった。

(あっれ〜? おっかしーな、エンジンがふけねぇぞ?)

路肩にレガシィを停めてボンネットを開けてみるが、原因が良く分からない。

(参ったな、これから取材も控えているって言うのに……)


何とかしてロードサービスを呼ぼうと思った信吾だったが、そこに1台の車が通り掛かった。

「どーしたんですかー? 故障ですかー?」

「……?」

呼びかけて来るその声は日本語だったので思わずその声の方を見た信吾の目に飛び込んで

来たのは、派手なエアロパーツを身に纏っている青のCR−Xデルソルだった。

そしてその運転席からは眼鏡をかけた男が顔を出している。

「故障だったら俺、見てみるよ?」


と言う訳で若干警戒しつつも、その男にボンネットの中を見せる信吾。

すると眼鏡の男はズバッと症状を言い当てた。

「あー、こりゃパイプ抜けだな。パワー出ないでしょ?」

「ええ……」

「確かこのワインディングのふもとに整備工場があった筈だから、そこに持って行こう」

そう言われて信吾はデルソルの後について行き、ふもとのカーショップにレガシィを預けた。

そして男にはほんのお礼としてピザとハンバーガーをおごる事に。

「助かったよ。あなたも日本人?」

「うん。俺は日本でチューニングショップやってるから。ちなみに名前は松本な」

「俺は吉川」

こんな事があり2人の日本人が出会った訳であったが、2人はこの後にとんでもない

事件に巻き込まれる事になってしまう。


そもそもの始まりは、レガシィを預けたカーショップで頼み事をされたからだ。

「え、何だって!?」

明政が大声をあげた理由は、カーショップの知り合いのモーテルに車の

パーツを届けて欲しいとの頼み事で、聞いてくれたらレガシィの修理費用を

チャラにすると言う事だった。

だが明らかに怪しい感じがするので一旦は断ろうとした、が……。

「えっ、そのタービンもくれるの?」

と言う訳で信吾が承諾してしまい、修理代タダとレガシィ用のビッグタービンキットを

条件に一時の運び屋家業をする事に。


一応荷物の中身を確認してみたが、確かにインタークーラー、ブレーキパッド、

小物類と車のパーツばかりで怪しい物は無いみたいである。

このカーショップでは人手不足が深刻であり、たまにこうしてお客さんに条件を

つける代わりにパーツの配達を頼んでいるとの事であった。

2人はデルソルとレガシィにそれぞれ分担してパーツを載せて、ワインディングを越えて

海沿いのダウンタウンにあるモーテルを目指す。

だがそのパーツには重大な秘密が隠されているのであった。


まずはあの信吾のレガシィが止まってしまったワインディングへと向かい、ヒルクライムをひた走る。

コースで言えば日本の箱根ターンパイクみたいに飛ばせるコースではなく、どちらかと言えば

同じ箱根のルート1の様に中低速コーナーが入り混じったステージである。

なるべく急ぎで、との事だったので2人は警察に注意しながらワインディングをひた走るが、

ヒルクライムなだけあって修理も終わってパワーを取り戻した信吾のレガシィの方が速い。

明政のデルソルもDC2のエンジンに載せ換えているが、NAの為ヒルクライムではターボの

レガシィワゴンに後れを取る。

(ターボつけようかな……)

前を走るレガシィに何とかついて行く明政だったが、コーナーはやはり軽いデルソルが有利だ。

(でも、コーナーで差を詰めるのが良いんだよなぁ、くーっ!!)


しかし、そんな明政の後ろから物凄い勢いで追いついて来る2台のマシンが。

そしてその内の片方が、かなりの勢いで明政のデルソルにバンパープッシュ!!

「ぬごっ!?」

変な声が出てしまい、首を押さえながらも慌ててバックミラーを見てみる。そこには自分達と同じく

青いボディの、日本でも見かける様になったクーペが1台。そしてもう1台はラリーカーとしても

有名なオレンジのヨーロッパ車が1台……。

(あ、あの車って……!?)


その2台には、明政がバンパープッシュされた時の音で信吾も気がついていた。

(な、何だあの2台は!? とにかく何だかやばそうだ……!!)

2台はアクセルを踏み込んで夕方のワインディングを駆け抜ける。

(1台はFR−Sだな……86のアメリカバージョンか。そしてもう1台は確か……シトロエンか!?)

青いクーペは日本でトヨタの86として売られているサイオン・FR−S。しかもかなりチューンされている様だ。

もう1台はフランスのシトロエンが誇るホットハッチとして知られている、ラリーでの活躍も光るC4であった。

(何なんだ一体!? と、とにかく逃げよう!)

謎のFR−SとC4に追われる事になってしまった北海道民の2人であったが、完全にパワーでは

負けている様で明政のデルソルがバンパープッシュを食らいまくる。

(あーくそっ、これじゃ板金7万円コースじゃすまないぜ!!)

バックミラーと前を交互に見ながら明政はバンパープッシュを回避したり、当てられてもアクセルを

踏み込んでFFならではの安定性を生かしてワインディングを上る。


そしてようやくヒルクライム区間も終わって今度はダウンヒルだが、今度は信吾が苦戦する事に。

どっちから走っても始め上りで途中から下りになるこのワインディングでは、下りになればワゴンボディで

重いレガシィにとっては当然ブレーキも利かないしコーナーもズルズルだ。

しかも撮影機材を運ぶ関係でサスペンションだけはチューニング出来ないので、足回りはスカスカな上に

コーナリングではロールアンダーも出てしまう。

ブレーキをS401のブレンボにする事で何とかブレーキだけは奥まで突っ込めるが、その後のコーナリングが怖い。

東京に住んでいる信吾は普段日光サーキットを走っているのだが、スピード領域は日光サーキットの比では無い。

(こええ……ダウンヒルってこんな怖かったっけ!?)


何でこんな依頼を引き受けてしまったんだろうと今更後悔してももう遅い。それに加えて全く知らないコースで

後ろから追いかけられて2人の精神も磨り減っていく。

だけど走り屋の端くれとして信吾も明政もアクセルを踏み込む。

(こうなったら……)

明政はパッシングをして、自分が先に行く事を信吾に伝えて道を開けて貰う。意図を察知した信吾は

先に明政のデルソルを進ませ、自分は狭いワインディングの道幅を逆手にとって、レガシィのサイドブレーキを

引いてテールスライドを誘発させる。

(ドリフトなら……)

4WDなので派手なドリフトは期待出来ないが、それでも後ろの2台をブロックするのには十分だ。


ダウンヒルではNAのレスポンスと車重の軽さも相まって、明政のデルソルが速い。

……が、そのデルソルに追いすがって来たのは何とC4。レガシィのブロックをすり抜けて来たのだ。

(げえっ、離れる所か張り付いてやがる!? そんな馬鹿な、俺の走りについて来られるのか!?)

あのFR−SもそうなのだがC4も相当なテクニックの持ち主の様だ。そしてC4自体もかなり

チューニングされているらしく、バックミラーで見る限りでもキビキビとした動きを見せている。

インに突っ込んだりアウトからプレッシャーをかけまくったりして明政のデルソルを追い掛け回すC4。

その後ろでは信吾のレガシィがFR−Sの猛烈なプレッシャーに耐えながらのダウンヒルバトルだ。


だが、そんな2つのダウンヒルバトルはいきなり終了となる。

タイトなヘアピンコーナーを立ち上がった瞬間、70メートル位先に突然1台のダークシルバーの

レクサスIS Fが道路を塞ぐ形で飛び出して来た。

「うお!?」

「うわ!?」

突然飛び出して来たそのIS Fに対して、2台はサイドブレーキも使ったフルブレーキングで何とか

手前でストップする事に成功。

何なんだよ全く、と思いながら文句を言わずには居られない2人だったので、荒々しく車から降りようと

思ったのだが先手を打たれた。

「おいっ、トランクの中身は分かってんだろ!?」

「うぐっ!?」


FR−Sの運転席から降りて来た金髪の男が、黒いグローブをはめた左手でレガシィから降りた

信吾の胸倉をグイッと力強く掴む。

「まぁまぁ、ソール……落ち着けって」

「これが落ち着ける訳ねぇだろ、ゴードン!」

ソールと呼ばれた金髪の男と、ソールを押さえつけるゴードンと呼ばれた男の押し問答を襟を

直しながら呆然と見ている信吾の視界に、今度は明政が2人の女に詰め寄られているのが見えた。

「おいおい、俺が何したってのよ!?」

「とぼけないでよ! とにかく一緒に警察に行くわよ!! ね、ディアナ」

「あなたのその車に積んでいるパーツの事よ。とりあえず、私がこの車を運転するからあなたは

ホープの後ろに乗って」

「ちょちょ、ちょっと待って! 何の話だ!?」


おたおたする明政の後ろから、IS Fから降りて来た中年の男と金髪の女が声をかけてきた。

「そのパーツは全部盗品だ。御前達も警察に連れて行く」

「はっ!? 盗品!?」

「助かったぜハートマン、クララ。さぁ、観念するんだな!」

ソールの言葉から、中年の黒髪の男がハートマン、金髪の女がクララと言う名前らしい。

それにしても盗品と言うのは一体どう言う事なのだろうか?

「お、俺等は本当に何も知らないんだ!!」

「だからこっちには何も関係ないだろ、見逃してくれよ!」


だがそんな2人にホープとディアナから無慈悲な台詞がかかった。

「何を寝ぼけた事を言っているの? 2人ともちゃんと罪を償ってもらうわよ」

「覚悟するのね?」

結果的にそのパーツはあのショップがお客を運び屋として利用し、盗品として横流しされていたものだった。

勿論そのことを知らなかった2人は証拠不十分で釈放されたのだったが、ソール達6人からきついお叱りを

受ける事になってしまった。

まさにこれが骨折り損のくたびれもうけ、上手い話には裏があると言う事であった。




HPGサイドへ戻る