読み切りコラボ車小説第2作目
GF8さん、なっぱさんとのコラボです。
(人物の年齢は2007年8月時点のもの)
登場人物
「勝ー! そろそろ出発するぞ!」
「あ、ああ…」
勝は大和の言葉にペンを置き、荷物を持ってインプレッサに向かう。今日はコンビニ勤務もなく、小説も一段落したので
久しぶりに走りに行こう、となったわけだ。
やっと仕事の休みが取れた、と言う大和は、久々の休みで超ハイテンションである。
「たった1日しかない休み。満喫しなきゃ勿体ないな!」
「あ…ああ」
今日も勝にとってはいつものように、首都高サーキットへと繰り出す。今日は久々に大和と走れるので、バトルしよう、となったわけだ。
大和は今日もナンパしてきたが、また逃げられたらしい。
場所は変わって首都高サーキット環状線外回り。
ここの入り口で大和が勝にバトルのルールを説明する。
「じゃあ、先行後追いでC1外回りを1周。でもルートは八重洲の丸の内トンネルへ入る。それから1周して、先に戻ってきたほうが勝ち。どうだ?」
「構わないぜ」
「じゃあ俺が先行する。本線に合流したら全開に突入するから」
そう言って、大和は自分のマシンであるC−WEST製のフルエアロをまとったBMW M3に乗り込んだ。
(ついてこれるか?)
大和はハザードを出しつつ本線に合流。その瞬間、アクセル全開で加速し始める。
それを見た勝もインプレッサを加速させていく。
(前よりあいつのBMW、加速力がいいな……ギア比を加速重視にさせてるのか)
実際、この環状線ではそこまでスピードが上がることはない。せいぜいよくて260から270キロがいいところ。
大和のBMWはサスが柔らかく、ロールしやすい。
(どんどんペースあげていくぜ!)
アクセルを踏み込み、トンネルを抜けて高速アップダウンのある連続コーナーへ。
ドリフトしながら、霞ヶ関トンネル出口の坂を駆け上がる勝と大和だが、大和が勝を引き離してしまう。
(ドリフトが得意な俺が、ドリフトで負けるなんてよ。皮肉なもんだぜ)
それもそのはず、勝のドリフトはただのオーバーアクションなドリフト。大和のM3はアングル小さめのドリフトだ。
前へ進む重視か、横に進む重視かの違いが顕著に表れる。
高速区間ではさすがに勝はドリフトを押さえていく。勝のインプレッサは535馬力を発生し、4WDの上に車重も大和より116キロも軽い。
ワゴンであってもそのトラクションの良さを生かし、ぐいぐい追い込んでいく!
(ここら辺は勝も速いな。さすが4WDといったところか)
大和はここで抜かれてしまうが、丁寧なライン取りで勝のインプレッサに食らいついていく。ギリギリのところまで接戦を楽しみたいのだ。
(食らいついてくるか。まぁいい。この先の高速区間に入れば離れるはずだ。スピードレンジが違うんだよ、M3とはな!)
分岐は右を選択し、勝がたまにバトル相手を探して停まっている丸の内トンネルへ入っていく。
このトンネルは狭い上、入り口が下り勾配、出口が上り勾配のややこしいトンネルだ。しかも八重洲線は2車線と狭いので、
首都高がサーキットになった今でも追い抜きが難しい。
そこでもこの2台は果敢に攻めていく。
そして勝はこのトンネルでM3を引き離せる、と思っていた。だがその予想は外れた。予想に反してM3は離れない。
(離れない…? 何故だ? パワーはこっちの方が上のはず!)
そう。勝はストレートで一気にぶっちぎれると思っていたが、それはタイヤが摩耗していない時の話。
いくらパワーがあろうが、今までのハデなドリフトで消耗していたタイヤはパワーを路面に上手く伝えられない。加速も当然鈍る。
そのタイヤに悪戦苦闘している勝の後ろで、大和は追い抜きのシミュレーションをしていた。
(この先のトンネル出口の上り勾配の場所…そこで行く!)
大和のタイヤは勝のタイヤより全然摩耗が少ない。アクセル全開でパワーを路面にしっかり伝え、引き離されないよう頑張る。
そして、その問題の上り勾配がついている左コーナーに進入。ここは見通しが悪いが全開でいける。
勝はインから進入。大和はアウトから進入。しかも横並び。
大和の追い抜きはここから始まっていた。アウトいっぱいから進入し、勝よりラインを大きく取ってコーナリングスピードを稼ぐ。
ラインの関係で勝のインプレッサが若干前に出るが、コーナリングスピードを稼いだ大和のM3は
その後のストレートが伸びてインプレッサに横並びになる!
そのストレートの後に待ちかまえるのは右への直角コーナー。勝のインプレッサはタイヤが摩耗しきってしまい、ラインもアウト側。
ここでこのバトルの勝敗は決した。
ラインが若干苦しくなった大和ではあったが、横に並ばれて動揺し、アンダーを出した勝を尻目にあっさりインからパス。
その後も丁寧なライン取りとタイヤの差を生かし、大和が8秒もの差を広げてゴールした。
「パワーで勝てると思っていた俺が・・パワーに振り回されて負けるとはな」
インプレッサのボンネットに座り、皮肉めいたことを言う勝に対し、大和は勝の走りを評価する。
「お前の走り方は荒すぎる。ドリフトも良いけど、それじゃ全くマシンの性能を生かし切れていない」
「そうかもしれないな…」
銀髪の頭をガシガシと掻きむしり、勝はぽつりと呟いた。
そんな勝を見つつ、大和は時計を見て声を上げる。
「あ、そろそろ俺行かないと。また投資始めないといけないから。じゃあ今度また…バトルしようぜ」
「ああ、またな」
軽快な音を立てて走り去っていくC−WESTエアロのM3を見送りつつ、勝も小説の続きを書くためにインプレッサに乗り込んだ。
完