読み切りコラボ車小説第1作目

龍撥 疏羅(りはち そら) さんとリア友Sとのコラボです。


登場人物

(年齢は2007年8月1日時点のもの)

龍撥 疏羅(りはち そら) ―疏羅さん

吉川 信吾(よしかわ しんご)―リア友S



2008年9月、栃木県・日光サーキット

コンパクトなレイアウトが特徴のこのコースでは、日々熱いバトルや走行会が繰り広げられている。

崖を切り崩して造られ、コースアウトすると砂の餌食になってしまうコースだ。

ここに1人の男と1人の女がやってきた。


男の名前は吉川 信吾(よしかわ しんご)。某テレビ局のプロデューサー兼フリーカメラマンをやっており、

今日は仕事が休みの為、ホームコースの日光サーキットに東京から走りに来た。


女の名前は龍撥 疏羅(りはち そら)。アニメーターをやっており、彼女も車で走ることが好きなので日光までやってきた。

この2人を軸に物語は進行していく。



(やっと着いたな。東京からここまでは流石にきつかったぜ)

信吾は愛車のレガシィをパドックに停め、ピットウォークに向かう。走行前の下準備は済み、荷物も全て下ろした。

と、その時信吾の目に留まった女が1人。

(お? あの揺れ方は…)

栗色の髪をした若い女。その女は3ドアハッチバックの白黒ハチロクトレノから降りてきた。早速女好きな信吾は声をかける。

「やぁお嬢さん! ハチロクとはいい趣味じゃないか。よかったら一緒に走らないか?

君のハチロクの揺れ方からすると、サスノーマルみたいだし」

ハチロクの揺れ方を見て気が付いた信吾は、自分と同じノーマルサスの車には親近感を覚えるらしい。

「俺のレガシィもサスペンションはノーマルなんだ。これから行われる走行会で、あんたの走りをじっくり見させてもらおう。

ただ…ワゴンだからってなめてもらっては困るな!」


(うわ…何、この人…)

女はいきなり馴れ馴れしく話し掛けてくる男に、心の中で不快感を露わにする。

「は、はぁ…どうもありがとうございます…よくわかりましたね…お互い頑張りましょうね…」

とりあえずこの男と鉢合わせしませんように、と心から願う疏羅。

しかし、その願いは届くことはなかった。


走行会が始まって4周目。ハチロクの後ろにレガシィが迫ってきた。

(天は我を見捨てたのか!?)

とにかく追いつかれたくないし、スローダウンしたら絶対絡まれる!と思って全開モードに疏羅は突入する。

(あと2周…なんとしても逃げ切ってやるわ! 頼むわよ、4A−Gターボ!)

ホームストレートを通過し第1コーナーへ。ここでヒールアンドトゥからブレーキングドリフトに持ち込み、アクセル全開で

そのまま2,3,4、5コーナーまでふみっぱなしでつなげる。


(飛ばすねぇ。時間的に後2周がいっぱいいっぱいかな)

レガシィのアクセルを踏み込み、ハチロクトレノを追いかけ回す信吾。ホームと裏のストレートでは追いつけるが、

コーナーではハチロクの軽さから成るコーナリングスピードで若干引き離されがちだ。

その後の短いストレートからの右高速複合コーナーでは、若干レガシィが速い。ここは4WDの安定性が生かされる。

(この裏ストレートからのブレーキング勝負! ちんたら走ってるとぶち抜くぜ!)

強引にハチロクの横に並びかけ、ブレーキング勝負!

だが…やはり1500キロはあるレガシィと、900キロ強のハチロクとでは圧倒的にブレーキの効きが違う。

2台ともノーマルサスで、レガシィのサスが新しいとはいえ、やはり車重は大きな武器だ。

(しかもこっちはワゴンだからな。重いからコーナーでハチロクよりアウトにふくらみやすい…な)


(ハチロクの軽さをなめてもらっちゃ困るのよ! こっちは900キロ台なんだから!)

そのまま勝負はファイナルラップへ突入。テールトゥノーズで来たはいいが、やはり連続コーナーではハチロクが速い。

ドライバーのテクが同じくらいなので、軽くてコーナリングに長けているハチロクでも、パワーに勝るレガシィ相手に互角の勝負が出来る。

(ここさえ乗りきれば!)

高速コーナーを目の前に、気合いを入れて疏羅はコーナリング。


だがバックミラーをちらりと見ると、レガシィが違うラインを取っている!

高速コーナーでハチロクよりワイドなラインで進入し、クリッピングポイントを奥に取る。

そう、立ち上がり重視のコーナリングだ。

そのまま高速コーナーを抜け、ストレートでハチロクのテールにぴったり食いつく。

(この先の右コーナーを抜けて、最後にストレートで抜いて俺が勝つ!)


(しょうがない…一か八かだけど!)

疏羅はハチロクのハンドルをぎゅっと握り締める。そして2台は右コーナーに進入するが…ハチロクのブレーキングが明らかに遅い!


(そう来るか…突っ込み勝負は分が悪いが、受けて立つ!)

タイヤもブレーキももうギリギリ。それでも気合いだけでハチロクに食らいついていくが…明らかにこれはオーバースピードだ。

(まさか…同じ速度で、同じラインで、しかもこっちは安定してる4WDだぞ! ジョーダンだろ!?)

このままではアウト側に一直線。とっさに信吾はサイドブレーキを引き、360度スピンに持ち込む。

コースアウト回避のためにスピンを選択したが、時既に遅し。この時点で負けが決定した。


ピットで走り去っていく疏羅のハチロクを目で追いながら、自らも帰る準備をする信吾。

(載せてる機材ってすげー高いのよ。お前に勝つよりも機材の方が大事なだけさ!)

機材を理由にしてはみたが、やっぱり負けは負けなので悔しい。

(今度はブレーキとタイヤのチューンも必要だな。後エンジンパワーももう少し…。またいつか、リベンジだな)

日の暮れかかった日光サーキットで、信吾は新たな決意をするのであった。



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