A Solitary Battle High Speed Stage第40話(最終話)


腹から胸にかけて大量の出血をしながらもニールはやっと見知った場所である、

トレーニングをしていたあのサンディエゴの砂浜に帰って来た。

時刻はようやく夜が明けると言う所で、太陽が昇って来た事で海がその太陽の

光を反射してキラキラと輝き始めていた。

それはまるでニールが地球に帰って来られた事を祝福しているかの様な光景だったが、

ニールにとってはまるで天国へ続いている道に立っている様な雰囲気だった。


とにかく救急車を呼ぶ為にスマートフォンを取り出して電話を試みるニールだが、

この時に思いもよらない事が連絡を阻む。

(そ、そうだ……俺あの電気が点く事分かってからバッテリー節約で電源切ってたんだっけ……!?)

出血は止まる事を知らずにまだまだ続いている。ニールの意識も薄れ、段々視界も霞んで来た。

そんなニールの脳裏に、あの武器貯蔵庫でユフリーに言われたこんな一言が蘇って来た。

(油断は禁物よ)

「あ……」


そう、最後の最後で自分は完全に油断していた。

壁画が光り出してそこへ歩いて行くのを優先してしまった為に、ユフリーの時には出来ていた死んでいるか

どうかの確認行為を怠ってしまった。それが原因でこうしてセレイザに後ろからロングソードで

突き刺されてしまい、結果的に今この様な状況になっているのだ。

「くそ……早く……しろ……」

スマートフォンが起動するまで後20秒位はかかりそうだ。幾ら画面に向かって急かしても

意味は無いのだが、ニールは自分の出血が酷い為にそうでもしたい気持ちで一杯だった。


だが、その瞬間ニールの視界がぐらりと揺れる。

「うっ……」

出血し過ぎてショックを起こしてしまった様だ。そうしてそのまま左手で腹を抑え、右手に持った

スマートフォンは起動したにも関わらず指先にも力が入らなくなってしまった為に砂浜の上に

落っことしてしまう。そうしてニール自身もガクリと膝をついて砂浜の上に崩れ落ちた。

「まだだ……俺は……まだ……死にたく、ない……」

そう呟きながら何とか落っことしてしまったスマートフォンを拾い上げようと手を懸命に伸ばすが、

視界が霞んで力が入らない。


(くそっ……俺は、あいつ等の野望を止める事に成功したのか……。あいつ等が居なくなった事で……

新兵器も無くなればそれで良いんだがな……)

戦争の為に開発されていた新兵器の存在を知ってしまった事で、自分の命を狙って来た

あの3人を殺す事に成功したニールだったが、その殺す所まで行ってしまった報いがどうやら

自分にも回って来てしまった様だった。

(どうやら、俺もここまでみたいだな……。最後に少しは人の役に立てたのか……? だったら

あ、後は頼むぜ……名前も顔も知らない向こうの未来のヒー……ロー……っ!!)

ニールは完全に砂浜に倒れてしまい、指先からもつま先からも力が抜けてスマートフォンに

結局指が届く事無くそのまま砂浜の上に横たわって動かなくなってしまった。



「本日の朝、サンディエゴのビーチで1人の男性の遺体が発見されました。所持品等から判明した

遺体の身元はサンディエゴ市内に住む俳優でありガソリンスタンド店員でもあるニール・クロフォードさんと

判明。クロフォードさんの遺体には腹部から胸にかけて大きくえぐられて切り裂かれた様な傷跡が残っており、

病院に搬送されましたが間も無く出血性ショックによる死亡が確認されました。地元警察では

クロフォードさんがガソリンスタンドの勤務を終えて帰宅する際に何らかのトラブルに巻きこまれたのでは

無いかと見て捜査を進めていますが、手掛かりに繋がる様な痕跡が何1つ無い事から、依然として

捜査は進んでいないとの事です……」



A Solitary Battle High Speed Stage完


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