A Solitary Battle High Speed Stage第17話


この細い山道で、ニールはその細い道だと言う事を最大限に利用して大人数のグループと戦う。

何故なら狭い場所でしかも相手は大人数、そして足場も悪い上に片側が断崖絶壁と来るのなら、

リーチの差はあれども相手は満足に武器を振り回す事が出来ない。下手に武器を振り回せば

相手の仲間に武器が当たって同士討ちになってしまう可能性があるし、足場が悪いのであれば

武器を振り回すのにも不安が残る。

その点身軽なニールであれば、狭い道であるが故に2人ギリギリで並ぶ程のスペースしか無い様な

この場所こそカラリパヤットのしなやかで素早く動ける身体が最大限に活かせる絶好のポイントだ。

何せ、この狭い場所であれば複数人に囲まれる心配が今の所ゼロなので1人ずつ相手をする事が

出来るし、武器を満足に振り回せないのであれば相手だって素手と素手の勝負にならざるを

得ないのでその点ではニールの方が20年のキャリアもあって有利……かに思えた。


だが、次の瞬間ニールはとんでもないものを目にする事になってしまう。それは13人位のメンバーを

次々と崖下に突き落として行き、14人目のメンバーが出て来た時だった。

そのメンバー……杖を持っている女が目の前に杖をかざしながら口を動かしたかと思うと、

いきなり氷のつぶてが出現してニールに向かって飛んで来た。

(なっ!?)

とっさに馬のポーズ……は足元が悪すぎて無理だったので最大限に身体を屈ませてその氷を回避。

それをチャンスと見て女が向かって来るが、その屈ませた体勢から相手の急所マルマを狙うイノシシの

肘打ちで容赦無く左の肘を女のみぞおちに入れ、女が怯んだ所で思いっ切りニワトリポーズのキックを

繰り出して女のアゴを蹴り抜いた。

「ぐひゅっ!?」

変な声を上げた女は後ろに倒れ込み、後ろのメンバーを何人か巻き添えにしながらもその後ろの

メンバーに支えられてストップ。そんなグループにニールは下り坂の傾斜も使って勢いをつけたドロップキックを

女の胸目掛けて全力で叩き込み、上手く道の真ん中に落ちる様に空中で両手を広げて受け身を取りつつ

起き上がる。一方でドロップキックをされたメンバー達は何人かがまた崖下に落ちて行き、崖下に落ちて

行かなかったメンバーも岩壁に叩き付けられたり急所を狙われて気絶したりと悲惨な状況になっていた。


そうしてニールは狭い山道で出会った盗賊グループ全てを撃退する事に成功したのだったが、

崖下に蹴り落としたさっきの女が放って来た物には予想外の驚きを隠す事が出来なかった。

でも、世界的に有名なファンタジー映画を始めとしてそうした映画や小説等で見た事がある。

しかしあんな物、今の地球に存在している訳が無い。となればここは……。

(……いや、それは無い……だろう)

バカバカしい、とニールは首を振ってそんな考えを頭から消す事に専念するが、実際にあの不可解な氷の攻撃を

自分が今しがた経験したのもまた事実。となればその考えをいくら頭の中から消したくても消せそうには無かった。


そして、もう1つの可能性を思いついたニールはいまだ気絶している盗賊グループのメンバーの懐を探ってみる。

そこからは予想通り麻の袋に詰め込まれた金が出て来た。だけどその袋の中身を確認したニールの目に、

またもや予想外の展開が見えてしまう。

(……ドルでも無ければ……いまだかつて俺が見た事の無い金……地球上の隅から隅まで回って見た事

無いから分からないが、少なくとも俺の記憶にはこんな模様の札やら硬貨は存在していなかったぞ……!?)

嫌な予感がどんどん現実味を帯びて来たそんなニールの耳に、またもや足音が聞こえて来たのに気がついたのは

その金を見てニールが呆然としていた時であった。


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