A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第28話


「てめぇ等……あの孤児院の人間まで犯罪に利用していたのか!?」

「そうだが?」

それが如何したと言わんばかりに、男は当然と言った口調でロシェルの怒声交じりの問い掛けに返答する。

「そして用が済んだら口封じの為に、あの館ごと燃やして始末してそれでさようなら、か!?」

「ああ、そうしないと足がついちまうだろ? そうでもしなきゃ犯罪を続ける事なんか出来やしないって。

お前はまだ若いみたいなんだから、もっと世の中をしっかり見た方が良いぜぇ?」

「ぐ……うううう!」

怒りの余り、ロシェルは唸り声を上げてしまう。頭の中が沸騰し、はらわたが煮えくり返る位の怒りに

言葉が上手く出せずにこう言う形での怒りの表現となってしまったのである。


そんなロシェルの態度に、男は鼻で笑って返した。

「はっ! お前がどれだけ悔しがっても、もうあいつ等は用済みなんだよ。この世にはもういねーの!!

だからここでお前も死んで貰う事になるんだ!!」

「ぐあ!」

そのセリフを言い切ると同時に男が思いっ切りロシェルの顔面をごつい茶色のブーツの裏で蹴り付けた事によって、

ロシェルの身体が後ろへと不恰好に縛られた体勢のまま転がる。

しかしすぐ後ろには壁があった為、中途半端な状況でぶつかって回転が止まってしまった。

「あらあら、リーダー……世の中をしっかり見ろって忠告しておきながら、このまま殺しちゃう訳?」

「あーそう言えば今そんな事言ったな。でもまぁ良いや。今ここでこいつぶっ殺して、俺達はこのまま国外へ逃亡だ!!」

さっきの杖の女がくすくす笑いながらリーダーの男に問い掛け、男がぽりぽりと小指で頬を掻きながらあくどい笑いを浮かべる。


(くそっ……くそっ!!)

何とかしてロープを解けないかどうか頑張ってみるロシェルだが、きつく縛られてしまっている為に全然解ける気配が無い。

(駄目だ……俺、ここで終わりかよ……!!)

ロシェルが息を吐いて、抵抗を諦めようとした……その時。

「そこまでだ」

凛とした声が、部屋の中に響き渡る。

思わず声がした方をロシェルも襲撃者達も敵味方関係無く見てみれば、そこには何とあの黒髪の騎士団長が

多数の騎士団員を引き連れてバーに乗り込んで来ている光景だった。

「な、何だてめー等!?」

「公国騎士団だ。全員武器を捨てて、大人しく投降しろ!!」

しかし騎士団長のその呼びかけに襲撃者達が応じる訳も無く、リーダー格の男の「やっちまえ!」の一言で狭い

バーの中は一気にバトルフィールドと化した。


「うお……っ!!」

巻き込まれてはかなわんとばかりに、ロシェルは縛られた体勢のまま何とか部屋の隅まで移動。

この間に何とかロープを解く事が出来ないかと辺りを見渡すが、そんなロシェルの元に近寄って来る人間が1人。

「大丈夫か!!」

「あっ、貴方は……コラードさん!?」

何と騎士団長だけでは無く、命の恩人である傭兵のコラードも一緒に来てくれた。

「ど、どうしてここに!?」

ロシェルの最もな疑問に、コラードはそのロシェルを縛り付けているロープを解きながら答える。

「騎士団員の1人が、君が裏路地で暴れ回っているのを目撃したって話を丁度近くに居たあの騎士団長が聞いてね。

そして私もその近くに居たものだから、現場に駆けつけてみれば遠くの方に君が木箱に入れられて連れて行かれるのを

目撃したのだ。だからそのまま騎士団員の応援を呼んで尾行し、このアジトに突入したのだよ」

「あ、成る程……」


だったらこんな狭い場所で戦わずに、町中で助けてくれよと言ってみるロシェルだったがコラードの反応は渋い顔だった。

「バカを言うな。町中で戦って民間人に被害が出たらまずいだろう?」

「あ……」

考えてみればそれもそうかと反省しつつ、ロシェルはコラードと一緒にバトルを横目に見ながらここから脱出を試みる。

だが、助け出されたばかりのロシェルの元にさっきのリーダー格の男が斧を構えて向かって来た。

「てめえええ!! 逃がすかぁっ!!」

「くっ!」

咄嗟にファイティングポーズを取ろうとしたロシェルだが、さっきまで縛られていた身体はすぐには動いてくれない。

そんなロシェルの横で、コラードは愛用の大斧の先端でまずは男の腹を容赦無くど突く。


「ぐお!?」

怯んだ男の頭を今度はなかなかの柔らかさを持っている股関節から繰り出された踵落としで叩き落とし、最後に男の頭を

斧で後頭部から真っ二つに叩き割った。

「うお……っ!?」

ダイナミックに、そして躊躇の無いその攻撃に流石のロシェルもちょっと引いてしまう程のショックがあった。

そして頭を叩き割ったその張本人のベテラン傭兵は、すでに肉の塊と化したリーダーの男の亡骸を見下ろして一言呟いた。

「……自分の技量をわきまえ無いから、この様な結果になるのだ」

何処か寂しげな口調ながらもそれだけを男に伝え、何とかバトルに巻き込まれない様にしながらコラードはロシェルの肩を

抱いてバーの外へと歩き出す。

こうして謎の集団に拉致されてしまったロシェルの誘拐事件は、結果的にすぐに助け出されると言うスピード解決で幕を閉じた。


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