A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第26話


人数に明らかに差があるこの状況で真っ向勝負にチャレンジする程ロシェル自身も脳まで筋肉に

犯されてはいないので、とにかくまずはこの謎の集団を振り切る事が今出来る最善の選択だった。

しかし、ロシェルには1つ不安があった。

(大通りの土地勘はそこそこ分かって来たけど、こう言う細い路地裏の道についてはまだ全然だ!)

やっぱり大通りで逃げるべきだったかとロシェルは今更ながら自分の行動を後悔し始めたが、もう後戻りは出来ない。

後ろからはさっきの男にプラスする形で、ロシェルの読み通り複数人の男女が追いかけて来ているのが

音と気配で分かるからだった。

そんな後ろの状況を感じるロシェルは、走りながらこんな事を思う。

(人生にリセットボタンは無いって誰かが言ってたけど、まさにその通りだぜ!!)


そんな事を考えつつ走っていると、目の前の横道から出て来た、後ろの集団の仲間と思われる女が武器の

バトルアックスを大きく振りかぶってロシェルの行く手を阻もうとしたので、当のロシェルは牽制の意味も込めて

ダッシュの勢いそのままに女の腹部から胸部目掛けての飛び膝蹴り。

「ぐえ!?」

バトルアックスが降り下ろされるよりも速くロシェルの膝が女にクリーンヒットし、そのまま女を倒して危機を突破。

ムエタイ選手の膝は、条件が整っている環境でやろうと思えばヘルメットすら叩き割る事も出来たりする程の

強力な凶器になるのだ。


女を倒して上手く着地したロシェルは走るスピードを緩めず、次の若干道幅が広くなっている交差点を

クイックターンで右折したまでは良かった。

「ちっ!」

やはり土地勘は向こうに分がある様で、数人の男女がそれぞれの手に色々な武器を構えてやって来ているのが

舌打ちしたロシェルの目に入る。 だがこの通りの道幅が広くなっているせいか、今しがた通って来た路地裏とは違って

露店を出している人間も何人か見受けられる。

そこに目をつけたロシェルは、心の中で露店の店主達に詫びを入れてから駆け出す。

(こんな非常事態だからこそ、済まねえが利用させて貰うぜ!!)


一目散に右折した先の敵の方に駆け出し、まずは自分の右斜め前方にある露店で売っている、明らかに煮たっている

何かのスープの鍋を手に取り、その鍋の中身を前方からやって来る集団にぶちまける。

「ぐうおああああ!!」

「ぎゃああああっ!?」

「うっぐおおおおお!?」

襲撃者達の悲鳴が往来に響き渡るが、ロシェルはその間に後ろを振り向いてから今しがた中身をぶちまけたその鍋を

盾代わりにして、後ろからの新たなバトルアックスの攻撃をガード。

そのガードした鍋を思いっきり投げ捨てれば、鍋に突き刺さったままのバトルアックスも一緒に吹っ飛んだ。

「ふあっ!」

掛け声1発、バトルアックスを弾き飛ばされてあたふたする銀髪の若い男の顔面を高い前蹴りで蹴り飛ばして

ノックダウンさせてから再び振り返って走り出すロシェル。


走り出したその先には荷物を運ぶ為の台車があったので、それを前からやって来た男に向けてガーッと滑らせて転倒させる。

その男を横目に見ながら更に路地を駆け抜けるロシェルだが、敵の増援はまだまだやって来そうだ。

(くっそー、きりがねえぞ!!)

まともに全員を相手にしている時間も体力も気力も無いので、何処かでしっかりとこの謎の集団を振り切って

逃げ切るしか無いと考える。

(どうすりゃ良い……!?)

今はとにかく逃げるしか無い。でも体力の限界はいずれやって来るので、その前に振り切らなければいけないだろう。

余り猶予は無さそうだな、とロシェルは考えながらもまだこのチェイスシーンは続く様である。

大通りに出れば騎士団の人間が駆けつけてくれるだろうと思い、大通りに戻る為に走り続けるロシェルだったが、

その為にはもう少しこの連中を倒さなければスムーズに移動出来なさそうだ。


(だったら……!!)

あえてここは逆の発想をしてやるよ、とロシェルは人が2人通るのがやっとな位の狭さの路地に逃げ込む。

その路地に置いてあるゴミの入ったタルや木箱、それから壁に立て掛けてある物干し竿等を倒したり投げつけたりして派手に逃げる。

当然、後ろから追い掛けて来る一味は通路が狭いのでロシェルのその妨害をまともに受けてしまう事になる。

だが、なかなか上手くは物事が進んでくれない様で。

路地の先から現れたのは、今度は手に槍や長い斧、それから魔術師が持ち歩いていそうな杖を持った男女の姿である。

(くっそ、ああいう槍とかの長い武器を持ち出されたらアウトだぜ!!)

こうした細い道に逃げ込むメリットは確かにあるのだが、デメリットもこうして存在している。

でも後ろからはまだ追っ手が来ているので当然後戻りは出来ない。となれば立ち向かうしかロシェルには選択肢が無いのだ。

(こんな所でむざむざ死んでたまるかよ! そもそも俺が何でこうして追われてるのか、しっかりと聞かせて貰わなきゃ納得出来ねーぜ!!)

その答えを掴む為、ロシェルは目の前の長い武器を構えた連中へ向かって行った。


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