ASolitaryBattleAnotherWorldFightStories2ndstage第15話
だが、コラードはロシェルの2つ目の行き先を告げる意図が掴めなかった。
「図書館は分かったが、武器屋に行くって言うのは? 君は武器も使うのか?」
「ええ、軍隊ではある程度武器の訓練もしますから」
「ああ、成る程な」
だったら依頼の後で武器屋に一緒に行くとしようか、とコラードが承諾したのでロシェルは
いよいよこの世界においての初任務に向かう。
初任務と言っても別に軍人としての任務に向かう訳では無いのだが、それでもロシェルに緊張感が
襲い掛かって来ているのは事実だった。
(やっぱり環境が変われば、それだけで人間って緊張するんだなー……)
実際の所、ロシェルの所属しているガラダイン王国は海に面したヨーロッパの国と言うだけあり、海軍では
現代の海賊を討伐に向かう事もある。
最近までは他国との紛争があったせいもあってか海賊達も手が出せない様だが、その紛争が終わってしまった為に
大人しくしていた海賊達がいずれまた活動を始めるのは目に見えている。
それにコラードに最初ロシェルが自己紹介をした時に自分で話していた様に、紛争でガラダイン王国も多数の死者を
出してしまったので中尉の立場にあったロシェルは戦時昇進と言う形で24歳で少佐の地位を任せられる事になってしまった。
それから5年経ってやっと紛争が終わったのだが、上官達の戦死により人手不足のままな事に変わりは無かった。
通常ならばこうした戦時昇進と言うものは、戦争や紛争が終わると自動的に元の階級に戻るのが一般的である。
なのでロシェルも元の中尉の階級に戻る筈が、結局5年経った今の状況でも少佐の地位にいるのであった。
勿論、ロシェル自身の実力で少佐の地位を獲得した訳では無いので彼自身も身分相応の中尉の地位に戻りたいと
思っているのだが聞き入れて貰えず、階級が上がった事に比例する責任の大きさにプレッシャーを毎日感じているのだ。
それでも、軍人としては上の命令に逆らう事が出来ないのも事実なのでロシェルにはどうする事も出来ずに日々少佐の
仕事と地位に見合った勉強に精を出すしか無いのだ。
しかし、今の自分は軍人としての自分では無く1人の人間として生活出来るかも知れないと言う事にちょっとした安心感を
覚えている事に気づいていた。
(まずはこの世界で何とか頑張って生きる術を見つけなきゃあな)
地球に帰る為の情報収集をこの先でしていかなければならないが、その前に死んでしまう様な事態だけは
絶対に避けなければならない。
この世界においては自分が1人の人間として見られる可能性が高いだろう、とロシェルは考えるが、それでもやはり自分が
住み慣れていたガラダイン王国に帰りたいと思うのは人間の本能なのだろうか? とも考えた。
(今はとにかく食いぶちと住むとこだよな。何時までもここで世話になるって訳にもいかねぇだろうしよぉ)
それから出来れば武器も要るだろう。その為にこの依頼の後に武器屋に連れて行って貰う約束をコラードに取り付けたのだから。
「それじゃあ道を覚えがてら、この荷物の配達に俺は行きますけど……コラードさんは?」
「ああ、私はこの近くの森で薬草の原料になる草を採集して来る様に言われてるから、その作業だな」
「分かりました。それと……武器屋の件ですけど待ち合わせ場所とか時間とかはどうします?」
そのロシェルからの質問に、コラードは自分のアゴに右手を当てて考える。
「そうだな、道を覚えがてら……と言うならば大体1時間位の時間を取るとしよう。1時間後に噴水広場で待ち合わせだ。
場所は噴水が目立つからすぐに分かる筈だが、もし分からなかったら都の人間に聞くと良い」
ただし、異世界からやって来たと言う事がばれたらまずいだろうから余り目立つ行動は避けるんだぞ? と最後にコラードが
ロシェルに釘を刺し、ロシェルも肯定の返事をする。
「はい、それでは1時間後に噴水広場で!」
「ああ、気をつけてな」
こうして、コラードに見送られる形でいよいよこの異世界エンヴィルーク・アンフェレイアでのロシェルの初ミッションが
幕を開ける事になるのであった。
ミッションと言ってもそんなに大げさなものでも無い事はロシェル自身が最も分かっている事ではあるのだが、何せここは
名前の通りの「異世界」。地球とはまるで違う事が色々あっても何も不思議では無いのだ。
(違う世界だけど、同じ人間同士ではあるから流石に人間としての常識とかは地球と変わんねー気がする。
……けど、この世界の常識は俺の非常識って事もあるからな……気を引き締めねーと!!)
今回のミッションは荷物の配達に行くだけだから……と言って、その途中で余計な物事に首を突っ込んでしまう……等の行為が1番厄介だ。
自分自身が元々熱くなりやすい性格の為に、同じガラダイン王国の軍人で個人的に付き合いが長い陸軍の大佐からは
その事で咎められる事が多かったなー……とロシェルは思い返しながら、とにかくすぐにカッとならない様に気を付けて行動しようと決意した。
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