A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第64話


それにドラゴンのブレスもありがたいのだが、余りそのブレスを吐き出し過ぎると今度は森や集落が

炎に包まれてしまい着陸が不可能になってしまうのは目に見えていた。

だから何処かで区切りを付けなければならないのだが、相手の獣人連中も大勢居るので

なかなか着陸を許してくれない。

『チッ、こうなりゃ……』

だったらもう強行突破をするしか無い。

炎を吐き出しながらドラゴンは上空を旋回し、その炎によって獣人達の人影が割れた所で

一気にその割れ目に向かって突っ込んで行く。

「つ、突っ込んで来るぞ!!」

「逃げろぉ、危ねえっ!!」

巨体のドラゴンのが一直線に降下して来るのが獣人達の目にも入り、あんな大きなボディに

潰されてたまるかと我先に獣人達は逃げ出す。


その突っ込んで来たドラゴンを避けて、獣人達の間に明らかなスペースが出来た所へドスン、と

大きな音と衝撃を生み出しながらドラゴンが着地した。

同じ様にワイバーンもその周りに次々と着陸し、武器を持つ事が出来るこの世界の人間4人が

先陣を切って獣人達に戦いを挑んで行く。

『俺がワイバーン達に戦う様に指示を出す。御前達はこの獣人達を指揮している奴が

居る筈だからそいつを見つけろ!!』

「分かった!」

ドラゴンの指示にエイヴィリンが了解の返事をして、彼と同じ様に飛び降りた地球人達も

それぞれ獣人達を殲滅しに掛かる。

あのタワーでの破壊行為でリボルバーの銃弾が切れてしまったグレリスは仕方無いので素手で戦うが、

日本刀を持っているアイヴォスは今現在の地球人の中で唯一の使える状態の武器持ちだ。

向かって来る獣人達の血しぶきを浴びながら、存分にその日本刀を振るって敵達と渡り合う。


そうして15人と言う少人数ながらも、ドラゴンとワイバーンと言う人外の協力もあって

獣人達のガードを突破して集落に近づく一行。

その中でレナードとウォルシャン、そしてエイヴィリンが集落に1番近づいていたのだが、

そこで彼等3人は見覚えのある顔を見つける。

「お、おいあの2人は……」

「あ、あの男は!!」

「あいつ等……どうやら結託していたらしい!」


ガレディと……それから3人にとって見覚えのある黒髪に青の上下の服、そして黒いブーツを履いた

若い男が集落の入り口に一緒に居る姿を見つけた。

遠目で見ている限りでは獣人達に指示を飛ばしているらしく、リーダーとして2人は動いている様だった。

あのドラゴンの言っていた事で間違いは無いらしいが、何故この2人が揃いも揃ってここに居るのだろうか?

ガレディは自分の集落にあの欠片を持ち帰って来たのだから分かる。

しかし、黒髪の男がこの獣人の集落に居るのは一切3人にとっては思い当たる節が無かった。

それでも獣人達に指示を飛ばしているのは良く分かるので、自分達の敵であると判断した3人は

その2人の前に向かって来る他の獣人達を倒しつつ向かった。


そんな3人の姿に気が付いた2人も、獣人達に指示を出すのをストップして3人を迎え撃つ体制に入る。

「……あのドラゴンと一緒にここまで来る事は予想していたが、これだけの

人数を集めた筈なのに……良くここまで辿り着けたな?」

賞賛と落胆がミックスされたその問い掛けに対して、戦略面では3人の中で1番長けているレナードが口を開く。

「これだけの人数と言うが、結局は寄せ集めの部隊と言うものだろう? 動きも悪いし迫力も無いし、

武器の扱いも不慣れな様子なのは戦い始めて少し経てば分かった。明らかに戦闘訓練を

受けている獣人達には見えないからな」


レナードのそんな分析に対して、今度は話題を変えて黒髪の男が手に持った「それ」を3人の前に掲げる。

「御前達はこの欠片を追い掛けて来た様だな」

リーフォセリア王国で妙な取引をレナードに持ち掛けたのはこの男。

エイヴィリンとウォルシャンを部下に相手させたのもこの男。

そんな2人が一緒に居る、と言う事は……と今度はウォルシャンがガレディに対して口を開いた。

「そうか……御前が通話していたのはこの男だな? それに遺跡で出会ったのも御前で、

俺に襲い掛かって来たのも御前だった。御前等2人は地球人達を使って遺跡の封印を解き、そして各国で

欠片やアイテムを回収してここに戻って来た。俺達の動向を逐一報告してな。人間の御前が実働部隊で

獣人の御前が見張り兼連絡係なんだろう?」


ウォルシャンの推理に対して、ガレディと若い男は顔を見合わせた後に薄気味悪い笑顔で

パチパチと拍手をして、「それが正解だ」の意思表示をするのだった。

「ああ、その通りさ。遺跡の魔力のロックは最初は手こずったけど、掛けてるロックはみんな同じ奴だったから

ちょっと頭を捻れば俺でも何とかなったよ。こんなのを何年も解除出来なかったこの世界の

魔術師達も程度が知れるね、全く」

「……御前は何なんだ? どう言う奴なんだ?」

エイヴィリンが素直に思った疑問を黒髪の男にぶつけると、その男は自信満々に口を開く。

「俺はラスラット。この世界の魔術を研究している貴族出身の人間さ。この世界で生まれ育った人間だが、

御前達みたいに違う世界の出身じゃなくても遺跡のロックは解けるって事がこれで証明されたな」


そう言われても地球人達にとっては関係無い。

むしろ欠片を集めていたので他の欠片を集める手間が省けた事を感謝はするべきだろうが……

だからと言って殺される様な事までした覚えは無い。

「そうだとしても、俺達の地球への帰り道を御前等に潰される訳には行かないんだよ」

「ああ。私達はそれだけを目的にそれぞれ修羅場を乗り越えて来たからな」

「だから俺達はその欠片を取り戻させて貰う」

ウォルシャン、レナード、エイヴィリンのセリフを聞いて、ラスラットとガレディは顔を見合わせる。

「ふぅん……だったら俺達も御前等をここで食い止めないとな」

「全力でこっちも相手してやるぜ。さぁ……来いよ!!」


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