A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第53話
「……は?」
思わず間抜けな声を上げる、茶色のカウボーイハットを被っている若者。
炎が燃え広がる光景をバックに、まるでハリウッド映画のワンシーンの如く歩いて来たのは
エイヴィリンとウォルシャンのバウンティハンター仲間であるグレリス・カーヴァラスだった。
「お、御前等……何でこんな所に居るんだ?」
「……とりあえず、変わってないみたいで安心はした」
「え、あれ? 何だこの空気?」
何と言って表現したら良いのか分からない空気に凄く気まずくなるグレリスだが、とにかくバックで
ゴウゴウと燃え盛っている炎に巻き込まれないのがまず大切なので、事情説明は後にして
さっさとワイバーンに乗って貰い脱出する事にした。
ワイバーンの背中に5人も乗っているだけあって、さっきよりも目に見えてワイバーンの
スピードが遅いのが分かる。それに背中のスペースももう一杯一杯なので、これ以上
人員が乗り込める余裕は無いのが明らかだ。
とどめにワイバーンは半日飛び続けて来た上に、それぞれ休憩を入れているとは言え
この所の長距離フライトの連続で疲労が溜まっているのだとガレディが他の4人に伝えて来た。
それだったら何処かで一旦降りた方が良いだろうと判断して、ソルイール帝国を脱出する前に
一旦休憩を入れる事にした。
そこで改めて、グレリスとエイヴィリンとウォルシャンの関係について当人達からリオスとガレディに説明が入る。
「……3人は知り合いなのか?」
リオスがシンプルにそう尋ねてみると、バウンティハンター達は3人揃って肯定の返事をする。
「そうだ。俺達はアメリカで活動しているバウンティハンターだ」
「俺達3人はほとんど一緒に行動しているよ。勿論それぞれバラバラに仕事をする時もあるけどな」
「俺とエイヴィリンがアメリカ生まれのアメリカ育ちで、このウォルシャンだけがイギリスから来た奴だ。
……そう言えば、そう言うあんたの話をまだ聞いて無かったな」
最後にグレリスがそう言うと、リオスはハッとした顔つきになって自分の自己紹介をする。
「そう言えばそうだったか。俺はリオス・エルトレイン。ヴィサドール帝国陸軍所属の軍人。
階級は……戦時昇進だが未だに戻っていない、名ばかりの少佐だ」
「そうか……」
何やら複雑な事情があるのだと思い、グレリスはそれ以上何も聞かない事にしておく。
その後はグレリスに3人が経験した今までの話、それからガレディの様な獣人の話、最後に
グレリスの方から今まで経験して来た壮絶な裏切りとバトルの話を残りの4人が聞く事になった。
「と言う事はその女が裏切ったのか?」
ウォルシャンの質問にグレリスは頷く。
「ああ。俺を騙して人体実験に使う予定だったらしい」
「その人体実験に前の騎士団長とソルイールの英雄が絡んでいて、しかも英雄の彼女が裏切った
女の姉だとはな。どちらにせよ、この国からさっさと脱出しなければいけないのは変わり無さそうだが」
リオスが最後に話をそう纏めて、ソルイール帝国からの脱出を決める。
でもソルイールを脱出した後で、自分達は一体何処に向かえば良いのだろうか?
その事をこの世界の住人であるガレディにエイヴィリンが聞いてみると、悩んだ末にこう切り出して来た。
「だったら一旦エスヴァリークに行かないか? あそこは南側の国でも1、2を争う大国だからな。
そこなら魔力を持っていない人間の話もこのソルイールと同じくある訳だし、魔力を持っていない
御前達人間が俺と一緒でもこの国をウロウロするのは危険だろうしな」
「それしか無いか……」
なら仕方無い、と納得したエイヴィリンを始めとし、地球人達はワイバーンを少し休ませた後に
エスヴァリーク帝国へと向かう事になった。
ワイバーンが連続飛行が出来ないのが欠点だが、途中で力尽きて墜落されるよりはマシである。
しかし、そんな話をしていた時にふとガレディの耳が妙な音をキャッチした。
「……ん?」
何かに気が付いた様子で空を見上げるガレディに、自然と地球人4人もそのガレディの視線の方を
一緒に見上げる。
闇に覆われた空には特に何も見えない。
だけど何か音がするのは間違い無いみたいである。
「……何かが来る」
「何かって?」
「まだ分からない……だが、凄い量の魔力の持ち主だ」
魔力を持たない地球人達には何の事なのかさっぱりだが、ガレディは驚きと不安と恐怖がミックスされた
気持ちでその音の主を待ち構えている。
そしてその気持ちは現実のものとなった。
夜空の暗闇の中から、1つの点が現れたかと思うとドンドンその影が5人に向かって大きくなって来る。
「あれは……ドラゴンだ!!」
目の良いガレディが地球人達に向かってそう伝え、ワイバーンの方も危険を察知したのか咆哮を上げだした。
空に向かってその方向が吸い込まれて行くが、点がシルエットになってそして目に見える形になる
ドラゴンにはまるで何の効果も無い様である。
「つ、突っ込んで来るぞ!?」
「うぉぉぉおっ!?」
咄嗟にその場に居た地球人全員が横っ飛びからの緊急回避をし、ドラゴンはそこを通り過ぎて空中で
航空ショーの様に1度大きく回転し、翼をはためかせながら地上に降り立った。
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