A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第51話


「エイヴィリンに、ウォルシャンに……それから御前がリオスだな」

路地裏の酒場の薄汚れた丸テーブルで、改めて3人から自己紹介をして貰ったガレディは、

自分の事と獣人と言う種族について言える範囲の事を話した。

そしてお互いにそれぞれ手に入れた情報の事……ホルガーの事やソルイールとエスヴァリークに

現れたとされている魔力を持たない人物の話、あのパズルの欠片の話もシェアしておく。

「獣人族……地球では考えられんな」

リオスは獣人族を見るのは初めてらしく、驚きと恐怖が入り混じった声色で呟いた。

それに対してガレディはこう返す。

「それを言ったら御前達の様に魔力を持たない人間なんて言うのも、

このエンヴィルーク・アンフェレイアでは考えられないんだがな」

お互いに考えられない事の連続ではあるものの、それよりもまずはこの先どうするかと

言う事を考えなければいけないのは明らかだった。


「……俺達の他にも、魔力を持たない人間が居るって言う可能性が出て来たな」

「ああ。実際に以前ソルイールとエスヴァリークに魔力を持たないって言う人間が現れたらしいし、

もしかしたらこのイーディクト帝国以外にも居る可能性があるよな」

「その線もあるか……」

エイヴィリンもウォルシャンもリオスもそれぞれ考え込むものの、幾らここで考えても結論は出そうに無かった。

なら他の連中に聞いてみよう、と提案したガレディが3人の地球人の見ている目の前で

酒場のマスターに声を掛ける。

「最近、何かソルイールとかカシュラーゼで変わった出来事って無かったか?」


すると、マスターの口からショッキングな話が飛び出て来た!!

「変わった事……ああ、そう言えばきになる話を聞いたな。ソルイールの方なんだけど、ここ数日

帝国騎士団の連中が妙な動きをしているって」

「妙な動き?」

「ああ。得体の知れない人間を1人捕らえたらしいんだがその男に逃げられてしまったみたいでな。

騎士団が追い掛けているとか……そっち方面から転送装置で旅をして来た奴から

聞いた話だから、私もそこまで詳しくは知らないぞ」

「いや……それだけの情報があれば十分だ。感謝する」


丸テーブルに戻ったガレディが、マスターから手に入れたその情報をそのまま伝えると

地球人3人の表情も変わる。

「行くか?」

「……でも、ソルイールって俺達みたいに魔力を持たない人間達が恨まれてるんだろ?

だったらそれってリスク高いんじゃねえのかな」

エイヴィリンの提案を渋るウォルシャンだが、リオスが冷静な口調で呟く。

「俺は賛成だ」

「え?」

「俺達の存在が知られない様に行動するなら良いと思うがな。それにもしあそこに居るマスターが

言っている事が本当で、その人物もまた俺達と同じく地球からやって来た人間だったなら、

さっき言っていた「俺達以外にも地球からやって来た人間が居るんじゃないか?」と言う

疑問の解消に繋がるだろう?」


そのリオスの話を聞いて、エイヴィリンもウォルシャンも納得した表情になる。

「それもそうだな。何か有益な情報も得られるかも知れない」

「でも、そいつに会えなかったらすぐに脱出だ。ここは俺達の世界じゃないから何時

何が起こっても不思議じゃない」

「それと、その人物が俺達と同じ異世界の人間じゃなかった場合にも撤退しよう」

エイヴィリンが賛成したのを切っ掛けにウォルシャンがリスクについてもう1度自分の考えを述べ、

ウォルシャンに賛同したリオスがそう締め括ってソルイール帝国入りを決めた。

それじゃあ早速ソルイールに向かおう……と思った3人だったが、ガレディが

「それは駄目だ」とNGを出す。


そのNGの理由はリオス以外の2人には予想がついた。

「……もしかして、ワイバーンを休ませなきゃいけないのか?」

「ああそうだ。流石に1日中飛びっ放しのワイバーンをこのまままたソルイール帝国まで行かせれば、

途中で力尽きて墜落する危険性がある。ソルイール帝国まではおよそ半日は掛かるだろうからな」

と言う訳でワイバーンが墜落して搭乗者が全員死亡、等と言う結末を迎えたくない4人は

グラディシラの宿屋で部屋を取った。

金はさっきの酒場でも今回の宿屋でも、ガレディが集落から食事と一緒に持って来ていた

金の中から出してくれたのである。


「集落から少し金を持たせてくれていて助かったな」

「団体部屋を取れて助かったぜ」

秋祭りの最中だと言うが、それでも近隣の町や村から来ている祭りの参加者や客も多いらしく

宿屋は意外と予約が入っていなかったのも幸いした。

魔力を持たない人間3人に獣人が1人と言う奇妙な組み合わせのパーティだが、それでも

何となくロールプレイングゲームの様な雰囲気である。

でもこの現実はゲームじゃない。

紛れも無く自分達が目で見て、耳で聞いて、身体で感じている現実世界での出来事なのだ。

もしかしたら長い長い夢を見ているのかも知れないが、数々のこれまでの経験が夢では無いと

言う事を実感させてくれていた。

だけど現実世界でも地球とは違う世界なので、早く自分達の世界に戻るべく次の日の朝になったら

すぐ行動しようと思い、地球人3人はその1日をグラディシラの宿屋で過ごすのだった。


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