A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第48話


結論から言ってしまえば、リーフォセリア王国ではかなりの情報を得る事が出来た。

「隣のソルイール帝国の、そのまた隣のイーディクト帝国に魔力を持たない人間が現れた……?」

遺跡の事を聞く事もすっかり吹っ飛んでしまったレベルのその情報を、3人は

リーフォセリア王国の砂漠から少し離れた所にある町で手に入れた。

その町には転送装置が存在しており、イーディクト帝国に行っていた旅行者が

その魔力を持たない人間……性別はどうやら男らしい者の話を聞いたのだと言う。

何でも地下の闘技場で活躍していたのを多くの人間に見られていたらしく、しかもその容姿が

特徴的なのでかなり目撃者が多かったらしいのもあって情報が多く集まった。

「その男の名前までは不明だけど、全身黒尽くめの服装に腰まで届きそうな長い銀髪の持ち主。

そして見た事も無いトリッキーな動きで相手を翻弄していたと言う情報があるな」

「トリッキーな動きか……」


エイヴィリンもウォルシャンもアゴに手を当てて考え込んでいる。

トリッキーな動きと一口にそう言われても、武術におけるトリッキーな動きはその動きを見ている

人間の価値観によっても変わる。

少林寺拳法だって太極拳だって、見る者が見ればトリッキーな動きだと言えるのだから。

「んー、とにかくそのイーディクト帝国に行ってみれば何かが分かるんじゃないのか?」

「それもそうか。だったらそのイーディクト帝国にワイバーンを飛ばして貰えるか?」

「ああ、分かった」

エイヴィリンにそう頼まれたガレディは、半日かけてやっと辿り着いたこのリーフォセリア王国から

再びワイバーンを飛ばす……筈だったのだがここで問題が発生する。

「しかしワイバーンも半日ずっと飛びっ放しで疲れているし、エサもやらなきゃいけない。しかももう時間は

夕暮れから夜になろうとしているから、今日はこのリーフォセリアで夜を明かしてからで良いか?」

「そう……だな」


急ぎたい気持ちは分かるのだが、人間や獣人の都合ばかりでは無くワイバーンの都合もある。

雨が降ればワイバーンは飛びにくくなるが、それ以上に夜になればワイバーンのパイロットの目が

利かなくなってしまうので何処に飛んで行ってしまうか分からないのも怖い所だ。

幾ら狼の獣人で人間よりも視界が広いとは言え、その視界の広さにも限度と言うものがあるから尚更だ。

なので急ぎたい気持ちを抑え、情報収集をしていた町で宿を取った3人は遺跡の事もすっかり

忘れてしまいその魔力を持たない男の話で持ちきりだった。

「まさか、俺達以外に魔力を持たない人間の目撃情報が出て来るとは思わなかった」

「ああ。それも今回は過去の話じゃなくて、リアルタイムの話だからその男に出会える可能性は高いんじゃないのかな」

この情報が本当の話で、実際に自分達と同じく魔力を持たないその人間に出会えるのだとしたら……と

エイヴィリンもウォルシャンも知らず知らずの内に気持ちが高揚している事にふと気が付いた。


その一方でガレディが1番冷静だった。エイヴィリン以上に。

「……それは良いんだが、もしその男? かも知れない魔力を持たない人間に出会えたとしてその後はどうする?」

「出来ればその人間も仲間にして、一緒に遺跡巡りをしたいもんだがな」

「そうそう。性別はどうやら男みたいだから女っ気が無いのが寂しいが、魔力を持たない人間同士だから

仲間意識とか芽生えるんじゃないか?」

「……人間の考える事は良く分からん」

何処か呆れた様な表情をするガレディに対して、エイヴィリンがこんな質問をぶつけてみる。

「そう言えば、このリーフォセリアで気になった事があったんだが……獣人の数が片手で数えられる程しか

この町には居なかった気がする。王都の方に行けばもっと居るのか?」


その疑問に、ガレディはああ……と何かに納得した様な表情を見せる。

「いや、そもそも俺達獣人は人間と動物のクォーターだから元々の数が少ないのと、寒い地域が多い

北の国よりも南側のアイクアル、エレデラム、それからエスヴァリークにヴァーンイレスの方が獣人は多い。

獣人の文化が南側で盛んだって言うのもあるが、それ以前に御前達人間に俺達獣人が

迫害されて来た歴史があるからな」

「えっ?」

いきなりヘビーな話になってしまったのを察知し、エイヴィリンはもしかして地雷を踏んでしまったか? と

苦々しい気持ちを感情に出す。

「あ……何だかすまない。その……話したく無い事に触れたなら謝る。すまない」

しかし、エイヴィリンのその態度にガレディは首を横に振る。

「いいや、別に俺は気にしてないさ。それが歴史としてこの世界の歴史書に載っているのは事実だからな。

そもそも動物と人間が交尾をする事自体が変な話だから、人間でも無くそして動物でも無い俺達みたいな

存在は格好の迫害対象になっていたもんさ。だから俺達は色々な場所を追われ、迫害され、そして獣人族の

リーダーと言われるあの村長はあそこに集落を作って獣人達だけでひっそりと暮らしているんだ」


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