A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第40話


獣人についての説明も終了し、ワイバーンはグイッと方向転換をして進路をルリスウェンの遺跡へと向かう。

しかしルリスウェン上空に入って10分位経った頃、ガレディが苦々しく舌打ちををして

空を見上げているのをエイヴィリンとウォルシャンは見てしまった。

2人ともガレディの考えている事がさっきの話から推測出来た。

「雨が降りそうなのか?」

エイヴィリンがそう問い掛けるとガレディは首を縦に振る。

「ああ。雨雲が先に見えるからこの分だと俺達に直撃だな。万が一雷雨の中にでも

突っ込んだらシャレにならないから、少しだけ高度を落とすぞ」

ワイバーンをコントロールしてグーッと緩やかに高度を下げながら直進するガレディだったが、

そのコントロールを横で見ていたウォルシャンが何かに気が付いた。


「あ……」

「どうした?」

「雨だ」

空を見上げながらそう言うウォルシャンに、エイヴィリンも自分の胸の前で手の平を天に向かってかざしてみる。

すると、手にポツリと確かに水滴が当たった。

「あ、本当だ……降って来た」

エイヴィリン降って来た雨を感じてそう呟くと、横からまたガレディの舌打ちが聞こえた。

「降って来やがった……」

「だったらもうこの辺りで下に降りるか?」

「いや、まだ本降りじゃないから行ける所までなるべく行ってしまう。そしてそこから先は歩いて

遺跡に向かうか雨が止むまで待つかを決める。町や村だったらそこで雨宿りだ。

だが周りに何も無さそうな平原とかであれば降下してそのまま歩いて遺跡に向かうぞ」


高度を落とすのと同じく、時間経過と共に緩やかではあるものの次第に強くなって行く雨足は

確実に3人とワイバーンの身体を濡らして行く.

そしてとうとう本降りになって来た頃、3人はルリスウェン公国内の廃村へと降り立って雨宿りをしていた。

「廃村があって助かったぜ」

ウォルシャンが窓の外の豪雨を見て息を吐く。

隙間風は入って来る、何処からか雨漏りもしている様な廃村の中の建物の1つだったが、

それでも外で雨に打たれっ放しよりは遥かにマシだった。

ワイバーンの方も丁度廃村の中の馬舎を見つけ、少し狭いがそこに入って休んで貰っている。

本当は陸移動でこのまま遺跡に向かう予定だったのだが、この本降りの雨じゃ歩くにも

歩けない状況なのは一目瞭然なので今は休めるだけ休んでおく事にした。


「あーあ、何時まで降るのかな……これ」

「さぁな。だけど雲が空を覆い隠しているからしばらくは止まないんじゃないのか?」

窓から外を見ながら恨めしそうな口調でぼやくウォルシャンに、エイヴィリンが冷静な口調で分析する。

それを斜め後ろで椅子に座って、集落を出発する時に「この集落が用意出来る世界1周分の食料だ」

と言って村長から渡された大袋に入っている食料の一部を、その袋に手を突っ込んでガサゴソと

出しているガレディが聞いていた。

「当分は止まんと思うがな」

「何故分かる?」

「ワイバーンの上でも言った通り、雨や曇りの日が多いのがこのルリスウェン公国だからだ。

だからそんな国で降る雨って言うとなかなか止まないイメージしか無いがな」

「……って事は、今日中に止まない可能性もあるって事か?」

「そうかもな。しかし雨雲は移動しているから、ルリスウェン公国内全ての場所で降っている訳じゃ無い。

何時かは止む。間違い無くな」


そう言いながらテーブルの上に食料を出し終えたガレディは、2人に座る様に促した。

ホコリやカビにまみれた椅子だが、無いよりマシであるとばかりにエイヴィリンもウォルシャンも

手近なそれをそれぞれ1つずつ引き出して座る。

「日持ちする様な物しか入ってないから、味は期待するなよ」

「元々期待なんかして無いさ。軍に居た時もこう言う携帯食料は良くあったしな」

ウォルシャンは過去を懐かしむかの様な口調でそう呟きながらテーブルの上にある食料に

手をつけ始めたのだが、「軍」と言う単語に耳ざとく反応したガレディが質問する。

「軍? お前、軍に居た事があるのか?」

「ああ、それももう2年前の話だけどな」


そのウォルシャンの告白に、心無しかガレディの目つきと雰囲気が変わった様な気がしたのを見逃さなかったエイヴィリン。

「何かあんた、ウォルシャンに興味があるみたいだな」

「この男自体には興味は無いが、軍に居たと言うのは気になる。俺も獣人の中ではそれなりに戦う存在だからな」

「そうなのか?」

ワイバーンのパイロットとして集落の中では1番だと言うだけで無く、戦いでもそれなりに良い線を行っているらしい。

「軍に居たと言う事は、お前もそれなりに戦う事が出来るんだろう?」

「ああ、一応前線に出る為の部隊に居たからな。俺とこいつが知り合ったのもその任務関係での話になるし」

それを聞き、ガレディの口元にニヤリとした笑みが浮かんだ。

「最初はいきなりああ言う事をして来て失礼な奴かと思っていたが、異世界の戦い方と言うものを

体得しているなら失礼な奴だろうが少しは拝ませて貰いたいものだな」


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