A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第55話


「何よそれ……私達と一緒に、この国を再建しようって約束したじゃない!! カシュラーゼから

この国を取り戻そうって、約束したでしょ!?」

「そんなもん、もう無意味なんだよ!!」

必死にそう叫ぶアーシアにコルネールは大声で叫び返す。

「良いかアーシア、幾らお前が俺達カシュラーゼにヴァーンイレスの情報を流そうが、俺はお前の上を行く

情報を色々と流してたんだよ。だからこの国はもうそろそろ終わる。俺達カシュラーゼの手によって、

完全にカシュラーゼの領土になるんだよ!!」

「俺達、カシュラーゼ……か」

コルネールのセリフの中で違和感を覚えたその部分を口に出すアイヴォスに、コルネールは自分の部下に

アイヴォスの日本刀を奪い取らせながら笑って宣言する。

「ああ。今の俺はもうヴァーンイレス王国のコルネールじゃねえ。魔法王国カシュラーゼの騎士団員コルネールだ!!」


高らかにそう言い切ったコルネールに、アイヴォスは疑問に思っていた事をぶつけてみる。

「それでは聞くが……色々と嗅ぎ回っていた事をアーシアから私は聞かされたのでな。そんな私はこれからどうなる?」

95パーセント位答えの分かり切った質問だが、一応アイヴォスはコルネールに回答を求める。

「どうなるって……イメージ出来るだろ? お前をこれからカシュラーゼに売り飛ばすんだよ」

「えっ、そっち?」

てっきりこの場で殺されてしまうのかと思ったアイヴォスは、まさかの回答に目を丸くした。

「この場で私は殺されないのか?」

「俺としては殺しても良いんだが……結構高い値段でカシュラーゼの連中が買い取ってくれるって話だったからよぉ。

やっぱ魔力が無い人間って言うのは向こうにとっては見た事ねー存在だから、高値で買い取って実験してーんだとよ」


そのコルネールのセリフからすると、どうやら自分はカシュラーゼに売られて実験台にされる予定らしいとアイヴォスは悟った。

「人間は売り物じゃ無いのだが」

「普通ならな。だけど今の俺にとっちゃーお前は高値で売れる商品だ。それこそ魔石を横流ししたり、

麻薬を横流ししたりして飯の種にするよりもずっとな」

悪びれもせずに言うコルネールに対して、アイヴォスは溜め息をついた。

「はぁ……私の事については分かった。しかしアーシアはどうなる? まさかアーシアまで裏切った訳ではあるまい?」

せめてアーシアだけは助けて欲しいと思っているアイヴォスだが、その願いはどうやら聞き入れられない様である。

「おーい、縛ったか?」

「はい、この通り」


コルネールがアーシアの居る方を見て質問すると、そこにはすでにロープでグルグル巻きにされて

縛られてしまっているアーシアの姿があった。

床に転がされた状態はまさしく芋虫だ。

「ちょっとぉ、これ解きなさいよぉ!?」

「嫌だね。お前はカシュラーゼの男連中の性奴隷として売り飛ばしてやるんだからよ」

「ええっ!?」

元彼からのその決定事項に、アーシアは絶望とも驚愕とも取れない様な声を上げた。

それを見ていたアイヴォスは、低い声でコルネールに問い掛ける。

「そこまでして金が欲しいか?」

「金が欲しい……まぁ、それもある。だけど俺がもっと欲しいものは自由だ!!」

「自由だと?」

「ああそうだ。もう俺は疲れたんだよ。勝てる見込みの無い戦争に対して必死になって抵抗するのはな。

もうじきこのヴァーンイレスもカシュラーゼ軍によって全て制圧されちまうんでね。そうなると結局俺はヴァーンイレス軍に

居たままじゃカシュラーゼの捕虜になっちまって、惨めな暮らしを送る事になっちまうからよ」


「それで麻薬の横流しも私に運び屋をさせる形でやり遂げたし、魔石の発掘もカシュラーゼ軍の仕業に

見せ掛ける事で自分に疑いの目が向かない様にした、と?」

「ああ。麻薬の横流しも魔石の横流しも上手く行ってたのに、メス犬がこうやって俺の悪事を暴く為に

色々やってくれたせいでこのままじゃ俺は終わりだぜ」

チッと舌打ちしたコルネールだったが、そのアイヴォスとコルネールの会話を聞いていたアーシアはさっきの

コルネールのセリフの中でサラッとコルネールが言っていた事を思い出した。

「ちょ、ちょっと待ってよコルネール。横流ししていたのは麻薬と魔石だけじゃ無くて、このヴァーンイレスの情報も流していたの?」

「ああ、そうだが」

「だから私が幾ら情報を流しても、持ち堪えるどころかジワジワと占領されて行ったのね!?」

「今頃気が付くなんておせーんだよ、クソアマがよぉ……ひゃはははっ!!」

この辺りはアイヴォスは介入していないので分からないが、今の地球の戦争は情報戦の割合も大きくなっているので

この状況だと言うのに何だか懐かしさを感じてしまった。

「情報も流しまくって、俺は大分金を持てる様になったからな。そしてアーシアもこの魔力を持たない人間も

売り飛ばせば、俺の未来は明るいって約束された様なもんだぜっ!!」

そのセリフを言い終えると同時に、この倉庫の中の緊迫した状況にいきなり変化が訪れた!!


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